第3話 私の中の私
次女がお腹に宿る前の話。
私は職場結婚だったため、夫の職場での知り合いは多い。
特に小さな町工場で社員がほぼ男性だったこともよく知っている。
夫がよく連れてきていた後輩が、私は密かにタイプだった。
結婚もしていて、長女も生まれ、幸せの真っただ中にいるのに、なぜか夫の後輩に惹かれていく。
理性を保とうとするけれど、私の中の「女」の部分が出てしまう。
いや、まだ「女」なのだ。
そして、私は料理が得意であり、ホームパーティーが好きだったため、何かあれば、その夫の後輩やそのほかの夫の同僚なども家に招き夜を明かした。
ある日のホームパーティーでのこと。
夫の後輩の亮くん。
私のタイプの子だ。
亮君がキッチンに一緒に立って、片付けたり、飲み物を冷やすことなどを手伝ってくれていた。
どちらかというと広い一軒家で、キッチンもそれなりのスペースがあった。
リビングから死角になっているところもある。
亮君はそこに冷やす前のビールを取りに行った時、なぜかついてきて、
「さやかさん」
私の名前を呼んで振り返った時にはしらふの私が顔を赤らめるほどに近い距離に亮君が立っている。
まるでそうしなければならないかのように、キスをした。
リビングからつながる庭で楽しくお酒を飲み、同僚と笑顔で話す夫にはバレることはなかった。
私は受け入れてしまった。
「母」なのに「妻」なのに
「女」を溢れさせてしまった。
理性は途方もないほどに飛んでいき、キスを楽しんでしまった。
「ママーーーー」
長女のさいなが覚えたての言葉で私を呼ぶ声がする。
現実にもどってきた。
それはとても一瞬の出来事だったけれど。
後に一瞬で終わらせることのできないできごとになっていく・・・。
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