第4話 俺はロリコンじゃねぇ!(切実)

 月乃が外の壁に貼ってあったポスターを破り終えて部室に入ると俺はカバンからパソコンと充電コードを出してセッティングし、起動。


 もちろんパソコンにはイヤホンを接続。しかもノイズキャンセル付きの高いやつ。


 せっかくの可愛いボイスなのに雑音が入ったりするとすごいストレスなんだよね。


 進行中は動画みたいに巻き戻し機能がないから。


 あってもストレスなのは変わらないが。


「ねーねー、九条。なんで私のことを放っておいてゲームをしようとしてるの?」

「言ったよな?依頼者がいない場合俺はギャルゲーをやると」

「むぅ!じゃあ九条の隣で見てる!」


 ええ!?コイツマジかよ!?


 ……まぁ、この機を活かしてギャルゲー沼に引き摺り込むのもアリか。


「よし、いいぞ。ほれ、イヤホン」

「え!?いいの!?」

「ギャルゲーはな、可愛いボイスがないとダメなんだ。ボイスを楽しむのもギャルゲーの醍醐味だ」

「わかった!」


 月乃が左耳にイヤホンを装着したのを確認してゲームスタート。


 可愛いボイスが脳に快感を与え、そして可愛い女の子が視覚で癒しを届けてくれる。


 うん、これだよこれ!


「ねぇ、九条」

「ん?どうした?」

「……九条はロリコンなの?」


 俺の心に500のダメージ!体力ゲージが緑色から赤色になった!


「ロリコンではない!妹属性が好きなだけだ!わかるか?兄に好かれようと、認められようと健気に頑張っているんだぞ!?しかも血の繋がった妹が!萌えないのか!?俺は萌えるね!」

「……現実みよっか?」

現実リアルなんて見ないね!現在リアルではあり得ないからゲームで補填するんだ!なんせ、ゲームの世界は法律をも超越するからな」


 決まった、そう思ったのだが。


「……」


 月乃は俺のことを無言で可哀想な目で見ているだけだった。


 え?なんで!?


「……完全にロリコンじゃんしかもヤバめの」

「ロリコンではない!何度も言ってるだろ」

「はぁ……」


 もう手遅れです、的な反応やめろ。


 俺はまだ大丈夫だ。


「ほら、これ見てよ」


 月乃は俺にスマホを見せる。


 そこに書いてあったのは——。


 Q:実の兄に告白されたらどうする?

 A:殺す

 Q:実の兄を好きになったことがあるか?

 A:ない


 世の中は無常だな。


「だからゲームに逃げるんだよ。ゲームだと理想的なブラコン妹に会えるからな」

「九条、真面目な話なんどけどさ……やめた方がいいと思う」

「二次元だから無問題」


 俺の言葉に月乃は大きなため息を吐いた。

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