004.休みの人・男性
彼は音楽を聴きながらスマートフォンをいじっている。
留学生か、または休日の
軽そうな黒のダウン。袖口からのぞく色あせたトレーナー。その腕が抱えるのは、かつて鮮やかで今は退色した黄緑色のリュックサック。脇にはお供の子ども向けマスコットが、年期の入った風格をにじませてぶら下がる。
ラフ、というより、張り詰めたものは全くない、気の抜けた服装である。故郷から持ち込んだのだろうもろもろを身につけ、彼はすっかりこの地で生きている。
電車の車両はボックス席があるタイプ。その車両で、ドアそばの二人掛けの席に座っている点でも、彼はなかなかわかっている。そう、この地の主な住人と比べると、彼はとても足が長いのだ! 互いに向かい合うボックス席ではたいそう窮屈になる。
のたり、のたり、各駅に停まる電車の社内は微睡んでいる。うつら、うつら、彼が二人掛けの側面にもたれ、眠り始めるのも間もなくだろう。
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冬も終わる朝の電車
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