朝の空気と白い雲

 午前6時42分、犬飼は空の写真を送ってよこした。


犬飼拓海――月綺麗じゃね?

古井論理――それな

犬飼拓海――めっちゃ綺麗で草

古井論理――たしかに

    ――きれいすぎるほどきれいだ

    ――人一人救った気になっているからだろうか、きれいと言うよりもとても美しい


 私は気づけば朝の空気が漂う庭に出ていた。空を眺めれば、見事なまでの曇り空である。


犬飼拓海――わかる

    ――あと外の空気が気持ちいい

古井論理――わかる

    ――清々しい

犬飼拓海――(写真撮る時に窓開けた)

古井論理――私は外に出た

犬飼拓海――ちょっと冷たいのがちょうどいい

古井論理――すごくわかる

犬飼拓海――ちょっと顔とか洗ってくるから待ってて


 犬飼が戻ってくるまでの間、私は曇り空にカメラのレンズを向けた。数回シャッターをタップし、よく撮れた一枚を犬飼に送る。


犬飼拓海――曇り空で草

古井論理――この空さえ美しく見えるのである

    ――詩がかける

犬飼拓海――もう少ししたら晴れると思うよ

古井論理――その頃には夜は明け、陽がしっかりと差しているだろうね

犬飼拓海――いまおーえうみゅーとにしてるけど

    ――おーるみゅーと

古井論理――うん

犬飼拓海――寝てないからね!(謎の意地っ張り)

古井論理――草

犬飼拓海――朝マックしようかな……

    ――気分いいし、昨日頑張った僕への勲章と兼ねて


 やはりあの朝マックの話は冗談ではなかったんだな、そう思った私は迷わずあのとき送りたかった文章を送る。


古井論理――いいなぁ

    ――朝マックしたいなぁ((

    ――謎の詩ができた


そうして、私は詩の原型を送ったのである。


夜明けの曇は美しい


友に言われて夜明けに気づき

醒めやらぬ空を眺めれば

見事なまでの曇り空


人一人救った気になって

勝手に報われているから

曇り空すら美しいのだ


犬飼拓海――私情ゴリゴリ文章から唐突な美しい詩はやめてくれwww

古井論理――草

    ――再送


夜明けの曇は美しい


友に言われて夜明けに気づき

醒めやらぬ空を眺めれば

見事なまでの曇り空


人一人救った気になって

勝手に報われているから

曇り空すら美しいのだ


私はそっと息を吸う

救いの助けとなったという

その喜びは空気も変える


ああ あの日々でこぼれ落ちた

救えたはずの盟友とものため

私は二人を救えただろうか


許せと泣いた燃殻わたしの目

あのような目はもういらぬ

さあ見せてくれ 輝ける灯を


十六夜の月の名残に私は願う

どうか二人に平穏を

友よ 友の愛する人よ

どうか健やかな毎日を


救えず終わったかつての盟友とも

今は感謝に埋もれる

失礼なまでの押しつけが

功を奏した朝曇り


犬飼拓海――かっけぇ

古井論理――あと

    ――やっぱ何もない

犬飼拓海――草


 私はとある決断をした。財布の中のお金を確認し、マックのメニューを検索する。


古井論理――飯食ってくる

    ――朝マックである

犬飼拓海――おっ

    ――わいも今から行くで

古井論理――ただ私は最寄りのマックが30分圏なのである


 犬飼はマイクを再びオンにし、「草」とだけ言って再びマイクをミュートにする。明けた十六夜が、私たちの前には曇り空と晴れ空として別個に広がっていた。

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