第5話 アリサの答え

 時刻は20時37分になった。京王閣競輪場内には、まだ多数の客が残っている。三分後に始まる、の今年最後のGⅠ・競輪祭決勝戦を見届けるため、多くの競輪ファンが冷える祝日の夜を迎えていた。


 約束通り、競輪の神様は20時37分に現れた。彼は不敵な笑みを浮かべてアリサを見ている。きっと予想に苦戦したことを想像でもしているのだろう。確かに、今回の予想は難しかった。かなり頭を悩ませていたのは事実だ。20時37分を迎えるまでのことを思い出しているアリサ。

 だが、迷っていては勝負にならない。それは客も、競輪選手も同じだ。それはアリサが迷う中で見出した答えでもある。


「では、今回の予想を」

 競輪の神様はアリサへ問いかける。

 アリサは購入した二車単の車券を神様へ見せる。

「これが私の答えよ。本命は①②④⑦の二車単のBOX。穴狙いで④⑤⑦⑧の二車単のBOX」

「では、これも確認しよう。ズバリ、優勝するのは誰だ?」

 神様の問いかけに一瞬、をおいて、アリサは答えた。

「優勝は④番」

「よろしい。では、答えの確認としようか」


 競輪の神様とアリサは、京王閣競輪場の場内テレビ画面を見る。画面の向こう、九州の小倉競輪場内のバンクには決勝メンバーが登場し始めていた。

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