第4話 頭を抱える魔女

「う~ん。何だ、この決勝戦は・・・」

 並行世界に転移後、の京王閣競輪場近くのコンビニで、スポーツ紙を購入したアリサ。彼女は早速、今日行われる競輪祭GⅠの記事を読んだ。そこで競輪の神様の言葉の意味を理解した。


「こんなGⅠの決勝戦は、あんまり見ないパターンね・・・」

 競輪の神様のという言葉が指していた意味が、決勝戦の並びを見て理解できる。

 競輪祭の決勝戦。九名の選手が優出されたのだが、長いラインがないのだ。同じ地区、県同士で組む選手はいるが、それぞれ2車のラインで、三組。残りの三人の選手はラインを作らない単騎での戦いを選択した。いわゆる、だ。


 京王閣競輪場は午前中から開門していた。アリサは開門と共に競輪場へ入る。競輪祭自体はナイター開催なので、レース開始は十五時過ぎから。それまで、京王閣競輪場では他の競輪場のS級シリーズの場外発売をしていた。

 しかし、競輪祭決勝戦の難解さに、他のレースに構っている余裕がないアリサ。競輪の神様からもらったスマホで、優出した選手のデータや、近況の成績を確認し、決勝戦の予想に集中していた。


 競輪の神様との勝負は、前回と同じルール。決勝戦で二車単を当てるか、優勝者を当てるか。そのどちらかを達成できればいい。

 一見、簡単そうにも思えるが、今日の決勝戦ではそうはいきそうもない。予想において、例えば、一人ずば抜けて強い選手や調子の良い選手がいれば、予想はしやすい。だが、今回そのような選手がいない。皆、強い選手で、尚且つ力が拮抗している。しかも、ラインが形成されていても2車と短く、三名いる単騎の選手にも注意しなくてはならない。

 今回に限っては、二車単を当てるというルールでよかったと思うアリサ。今日の決勝で三連単を当てるのは難しい。


 今は昼過ぎ。決勝戦は今夜の20時40分にスタート。競輪の神様は、20時37分にまた会いに来ると言っていた。

 20時37分。決勝戦の電話投票締め切り時刻だ。まだ時間はあるが、それまでに答えを導き出さないといけない。いつもはのんびりビールを飲んでいるのだが、今日に限ってはそれをしていないアリサだった。

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