第3話 決戦の日

 気が付くと、アリサと競輪の神様の二人は、京王閣競輪場の正面入り口にいた。周囲の様子を見れば、今が夕方ではなく、朝早い時間だとわかる。


「今、何時?」

 アリサは競輪の神様に尋ねる。

「11月23日(祝)の午前7時半じゃ」

「ということは・・・」

 日時からアリサは自分がどんな状況にあるのかを推測した。


「ここはまたも異世界。いや、平行世界でいいのかしら?並行世界の11月23日。恐らく今日は競輪祭GⅠの決勝戦の日でしょう?」

「正解じゃ。それが分かっていれば、もう勝負の内容は詳しく説明しなくてもいいじゃろう」

「ええ・・・」

 うんざりしながら答えるアリサ。


「今度は競輪祭の決勝戦で二車単を当てればいいのね?」

「ああ、または優勝者を当てることがクリアの条件じゃ」

「ちなみに、質問してもいい?」

 アリサは競輪の神様に問いかける。

「この並行世界は、並行世界でいい?」

「そうじゃ。前回と同じ並行世界へお主を連れてきた」

それならば、少し助かったと思うアリサ。前回やってきた並行世界で活躍する競輪選手のデータは少しだけながら覚えている。それを少しでも活用できるなら、それを使わない手はない。


「いいわ。こうなったら勝負するしかないってことね」

「そうこなくてはな」

アリサの言葉を聞いて嬉しそうな競輪の神様。すると、彼はおもむろに茶封筒とスマホを差し出した。

「確認事項だ。この封筒内に五万円。スマホの競輪投票サイトに三万円入金してある。前回よりも金額は奮発したぞい。ルールは前回と同様、君には、今日の決勝戦で二車単を当ててもらおう。まあ、当てられなくても、最低限、優勝者を当てれば許してやろう」

「それが元の世界へ戻る条件?」

「そうじゃ」

現金とスマホを受け取りアリサは、神様に言う。

「今回も負けないわよ!」

「そのガッツは悪くない。だが、この世界の競輪祭決勝は難しいぞ。それは覚悟した方がいい」

そういう神様には軽薄な雰囲気が無かった。神様の、その反応が少しだけ気になったアリサだった。

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