第3話
気まずい雰囲気の中、彼女の本心もわからぬまま、僕は大きなプロジェクトを任され、仕事に没頭するようになった。
彼女と会話することも、ましてやキスすることもないまま、時間は過ぎていく。
そして、気がついたらあの出来事から三ヶ月が経とうとしていた。
その日、プロジェクトがやっと終わった僕はプロジェクトメンバーと飲んでいた。今までの苦労やこれからやりたいことを話し、気分がよくなる。
そうだ!今から話し合おう!また、話し合ってやり直せば、また前のように、、、。
そんな淡い期待を抱きながらドアを開けた僕を待ち受けていたのは、大量のダンボールだった。
「おかえりー」
奥から彼女の声がして、慌ててそちらに向かう。何か言いたそうな僕をちらりと見て、気にしないそぶりで彼女は話を続ける。
「ごめん、散らかってるよね。びっくりしたでしょ?」
「いや、あの、」
「あのね、私ね、海外に行くことになったの」
「えっ」
「ほら前に結婚の話したでしょ?あの日にね、海外に行かないかって上司に誘われて、、、」
「えっ」
「これもいい機会だなって思って、受けることにしたの」
突然の海外というワードに頭がついていかない。つまり、それは、つまり、ということは。
呆然とする僕を見て、彼女は悲しそうに笑う。
「あのとき、はいって言ってくれたら、断ろうと思ってたの」
「あのとき?」
「そう、結婚の話したとき。ゆうちゃんなら、いやなんでもない」
「ごめん」
「別に謝ってほしいわけじゃないよ?お互いタイミングが合わなかったんだよ」
「出発は?」
「明日」
「送る「送らなくていいよ!いいから、、、」
じゃあね、おやすみとそう告げて、彼女は部屋の扉をバタンとしめた。
朝起きると、彼女はいなかった。もう出ていった後らしい。
テーブルの上には一通の手紙が置いてあった。
『私たち、いつから恋をしてなかったんだろうね』
最後の一行の、そんな一言が、僕の胸を締めつける。
いつから彼女に恋をしていないのだろう?
いつから彼女を追いかけなくなったのだろう?
いつからラジオを一緒に聞かなくなった?
あの思い出の海に行ったのはいつだった?
いつからまともに話していないのだろう?
どうして僕は彼女を支えなかったのだろう?
いつから彼女はただの同居人になってしまったのか。
考えても考えても、答えは出ないまま。
僕は誰もいない、がらんとした部屋の中で、一人泣いていた。
Curtain Call コトリノトリ @gunjyo
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