道花
江坂 望秋
道端に立つ電柱の根元に咲く一輪の美しい黄色い花を指差し、これはなんだいと隣の清美に尋ねてみた。さぁ、知らないと返事が来るのは少し分かっていたが、そう言われると何だか相手にされていない気分になって悲しい。
そう思ってもいない顔して立ち去ると、いつの間にか花のことなど忘れているのだった。
またある日、あの黄色い花を見掛けた。これの名前はなんだいとまた清美に尋ねてみたが、だから知らないと一蹴されてしまった。前と同じ気持ちになったが、その事を顔に出さず、また立ち去って忘れる。
少し経って、黄色い花が咲いていた電柱を見掛けた。あの花はどこに行ったんだいと清美に聞いたが答えてくれなかった。私は少し陰鬱としたが顔には出さずその場から立ち去った。
家に帰ると小さな花瓶に黄色い花が生けてあった。この花はと清美に聞くとあの花よと教えてくれた。名前はなんだいとまた聞くとあなたが付けたらと言われた。
だから私はこの花を『清美』と名付け、寝床の横の陽の差す場所に飾ることにした。
道花 江坂 望秋 @higefusao_230
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ノー・モア・ナガサキ/江坂 望秋
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます