第30話 第四章 邪神戦

 ただ魔力を圧縮しただけで、属性変換も行っていない、普通なら[魔法消去マジッククリア]を使って終わりだろう。

 だが、相手は[賢者]を持っているミアの体を使って復活した邪神だ。


 下手に[魔法消去マジッククリア]を使えば、MPが半分以上削られるだろう。

 そして、それは常時MPが上下に動いているこの場では致命的だ。

 俺は、大袈裟なぐらいに横に飛んだ。


「ほいっと」


 だが、邪神は特に気にした様子もなく、次の魔法を打ってきた。


 今度は、それを一回転することで避ける。

 すると、また打ってきた。

 人間にとっては一発で致命傷のこの魔法も、邪神にとってはただの魔法なのだろう。


「ええい! 鬱陶しい![星魔雨スターレイン]」


 しばらく、打って避けてを繰り返すと

 邪神は痺れを切らして新しい魔法を打ってきた。

 赤、青、黄、茶、白、黒。

 様々な色が星の様に、天井で輝いていた。


 美しい、と思うとともに恐ろしい、と思った。


 なぜなら、全ての光に大量の魔力が内包されていたのだ。

 そして、光の数は軽く数百個を超えている。

 魔法の名前からして、恐らくあれが……


「消えよ」


 その言葉と共に、星が俺を目掛けて降ってきた。


 …………………………………………………



「ふう……」


 我は、真に復活するまでの仮の器で、ため息をついた。

 この体は、若く、様々な属性の魔力に満ち溢れている。

 我の体が復活したら、手放すつもりだったが思わず躊躇してしまう。


 そして、星が落ちているところを見る。

 無謀にも、我に挑んできた若造、この体の持ち主の知り合いなのか、やけに必死だった。

 だけど我の魔法[星魔雨スターレイン]を食らって生きているはずがない。


 この魔法は、全ての属性魔法を使っており、

 1秒に100発以上の魔法を、敵が死ぬまでを放ち続ける。

 そこら辺の魔術師なら、1秒も保てないが、我の卓越した魔法の技術と、神すらも超える膨大な魔力があれば、問題はない。


 星が振り続ける、その光景に僅かな違和感を覚えた。

 


 違和感が、一気に湧き出てくる。


 本来、この魔法は戦争や、大規模の集団戦闘で使われる魔法だ。

 1万人以上を消し飛ばす為の魔法を一人で受けて生きている筈がない。

 筈がないのに、何故かとても嫌な予感がした。

 数千年前、全能神のクソジジイ、戦神の脳筋、我がいながら知識の神を名乗る不届き者、それ等と闘い、封印されたとき以上の……


 パンッ


 ……消えた、[星魔雨スターレイン]が、一度発動すれば、術者本人ですら解くことのできない魔法が、一瞬で消えた。


 そして、星の雨が降っていた場所には、

 少年が立っていた。所々に細かい傷がついているが、致命傷は一切ない。


 少年は、立っていた。


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