第29話 第四章 邪神

「ああ、ヤバい。もう終わりだ……」

「何を言っているんだ! 急いで魔力を制御しろ!」

「ヒ、ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」

「所長! また一人正気を失いました!」

「すぐに殺せ!」


 所々壊れた壁、辺り一帯に広がる紙、

 首が無くなったり、炭化している死体。

 そして、狂った様に魔法を撃ちまくる職員のような男、そしてそれを必死に排除する職員。


 俺は、C-5と書かれていた部屋に入ると、そこは阿鼻叫喚の地獄になっていた。


 職員達は、忙しすぎて俺のことにも気づいていない。


 C-5の中央では、一人の少女が水槽のようなものに入って眠っている。



 俺がいなくなった時から少し背が伸びて、全体的に成長したと思う。

 ミアが、そこにいた。


 本当なら、今すぐにでも水槽を壊して助け出したいが、ミアから放たれる三年前の像で感じた邪悪な魔力を更に濃縮したような、

 とにかくヤバい魔力が漂っており、

 ミアを開放することを、躊躇させる。


「……[神眼]」


 ……見えた。

[神眼]では、ミアから魔力の線が出ている。

 それを辿ると、魔法陣が何重にも掛けられた小部屋についた。

 恐らくだが、あそこに封印の書があり同じC-5にいたミアに憑いてしまったのだろう。

 魔法陣は、見た目だけでもう殆ど効果がない。


 パリンッ、水槽が割れた。

 それと同時に邪悪な魔力が部屋を満たした。


「あ、ああ」

「ガガ、ガガガがが」

「嫌だ、死にたくナナナナナナナ」


 職員達は、狂った職員も正常だった職員も関係なく、全員泡を吹いて倒れた。

 俺も、かなりやばい。


 MP  98/1000……806/1000


 HP  635/3000……2647/3000


 MPがすごい速度で上下しているが、それだけでは足りず、[HP変換]と[HP高速回復]でなんとか対等といった感じだ。


「ふむ、溢れるような魔力。

 我が使う体に相応しい」


 ミアは、いや、ミアの体を使った邪神は、高らかに笑っていた。


「おや、まだ生きてる人間がいたか、死ね」


 邪神は、一瞬で魔力を圧縮し、放ってきた。

 邪神との戦闘が始まった。


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