第12話 第二章 決闘
あれから、一週間が経った。
ミアがいてくれたおかげで、早くクラスに馴染むことができた。
この調子で
「見つけた! お前、一週間前は良くもやってくれたな! 俺様に恥をかかせやがって」
「恥をかかせたって……元々あなたが悪いんでしょ」
「うるさいうるさい! 決闘だ、決闘しろ! いいか、学校が終わったあと直ぐだからな」
そう言って少年は帰っていった。嵐のような少年だった。
「ところで決闘ってなんだ?」
「アル、多分決闘って模擬戦のことだと思うよ……っていうかアレク・スタンビートとなんていつ知り合ったの?」
「アレク・スタンビートってあいつのこと?」
「え! 知らなかったの。古くから存在する名門貴族の長男で、
超強力なユニークスキルを持っているらしくて、5歳でAランク冒険者を倒したっていうあのアレク・スタンビートだよ!」
「え……あいつそんなに凄いやつだったの……」
Aランク冒険者の凄さは、俺でも知っている。
上位竜と互角に戦うと言われているAランク冒険者に勝てるなんて……
ちなみに、俺が倒した魔物、正式名称 魔狼
はFランクとされている。
「まあ、頑張ってみるよ。
流石に模擬戦で殺したりはしないだろうし」
そうして、あっという間に時間が過ぎ、決闘の時間になった。
「ふん、怖気づいて逃げるかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ」
「お手柔らかにお願いします」
訓練場に来たら、審判役の先生と、かなりの数の観客がいた。
「あいつが、あのアレクに挑むやつか」
「おいおい、まだ5歳位だぞ」
「ユニークスキルによってはもしかするかも……」
「それでは、試合開始」
「くらえ、[火炎剣]!」
始まった瞬間、炎をまとった剣で切りかかってくる。
単純に見えるが、[水壁]で守っても剣で切り裂かれ、剣でガードしても、炎で焼かれる。
非常に良く出来ている。
正直、最初の印象で油断していた……!
「これ、防御に失敗したら、絶対に俺死ぬだろ。模擬戦は何処行った……っ!
[土壁]」
覚えている魔法の中で唯一、物理的な防御ができる魔法を使う。
スパンッ
そして、当たり前のように切り裂かれた。
「へえ、なかなかやるな。じゃあこれならどうだ! 剣!」
そう言うと、審判が剣を放り投げた。
アレクは、二刀流になって十字形に構えている。
そんなのありかよ……!
「くらえ! スタンビート流魔剣術
[
アレクの剣から、十字型の炎が放たれた。
「[水壁]!!」
ジュワァァァァァァ
水が蒸発する音が聞こえる。貫かれないように、もっと魔力を込める。
ジュワァ……
MPを大量に削ってようやく[
「おお、これも耐えるか、けど、もう魔力は限界何じゃないか」
MP 54/600
まじかよ……たった2発で……
これは、もう負けたか……
「やっぱりアレクには勝てないか」
「まあ、5歳児にしては頑張ったんじゃないか」
「しょうがない、しょうがない」
外野も俺の負けを確信している。……一人を除いて。
「アル! 頑張って!」
ミアだ。ミアだけが、まだ俺を応援してくれている。
俺ですら、勝利を諦めているのに。
アレクは、ミアを見ると、こう言った。
「あいつ、かわいいな」
は?
「よし、あいつを側室にしよう」
お前、何を言って
「あいつも名門貴族の側室になれるのだから光栄だろう」
名前も知らないやつを側室にするって……
「もし断られても、スタンビートの力を使えば逆らえないだろ。
まあ断るなんてあり得ないだろうけどな」
ブチッ
何かがちぎれる音がした。
「ふざけるなよ」
本来なら、そのまま負ければいいと思っていた。
「ふざけるなよ……」
だけど、ミアに手を出すなら……
「ふざけるなよ……!」
「ああ、あいつお前の知り合いなのか、
なら伝えておいてくれ、俺が側室に迎えてやると」
本当は、こんなことはしないつもりだった。
何故なら、これを使うのは、流石に可哀想だと思ったからだ。
これを使うと、恐らく一切の苦戦をせずに勝利してしまうだろう。
それに、流石に10歳ぐらいの少年にこれをするのは、酷だと思ったし大人げないと思った。
だが、そんな優しさなんて、吹き飛んだ。
こいつは、悪だ。
人を苦しめ、不幸にする害にしかならない存在だ。
俺は、もう手加減しない。
「[スキル合成]……!!」
俺は、切り札を使った。
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