第10話 狙われた舞羅

 先ほどの土砂降りの雨はやみ、救急車が来ると明は速やかに乗ることが出来た。真奈が同乗すると、

「舞羅も行く」

 と言い出し二人して出かける事となった。真奈は翔に、

「留守番お願い」

 と言い残して行ったので、翔は家に帰れなくなった。明の様態がどうなのか気になる所なので、それはそれで良いのだが、後の二龍はいなくてよいとの指示だった。

「そういう事で、今日の所は、解散な」

 翔が言うと、シンが、

「魔王がどう出るか分らんぞ、気を付けねば。我は残らぬで良いかのう」

「真奈が帰れと言っていたぞ。聞いていたろ、極み爺さんは俺の見た所、舞羅の目には入っていない様だったな。真奈は見えていたようだけどな。どうする」

 するとシンは

「我も消えて残ろう。何やら嫌な予感がするぞ」

「消えるなら、どっちか病院に行っていた方が良くないかな」

「シンが行け。わしは病院はあまり行きとうない」

「舞羅は我の視線を感じるとゆうておったぞ」

「行くのは止めたいのか」

 一応、翔は訊いてみた。

「いや、行く」

 シンはとにかく舞羅に感付かれると言いたかったようだが、病院へ行った。行ってしまった所で、翔は極み爺に、

「最近シンは今風の奴らの影響で、自由恋愛に走っているな。前から時世の影響を受けるタイプと思っていたけど、この分じゃあ、レディー・ナイラみたいに人間と正式に結婚しそうな勢いだぞ。舞羅と相思相愛みたいだな。おら知らねえってとこだ。でも俺の親や真奈がどう思うかな。とにかく俺の責任じゃあないよな。爺さんもシンの親じゃあないんだから、責任は無いよな」

「とは言え、伯父で親類代表じゃな」

「爺さん。言っておくけど、爺さんはここに留まっているだけで、一応死んでいるから、人間の目にはかからないぞ。式には呼ばれないからな」

「死に損ないの明には見えておったぞ。それにしても、式にまでたどりつくかのう。わしは破局の可能性の方が高いと見た」

「どうして」

「ここは日の国ぞ。USBBに比べれば、まだまだ進み具合は遅い。この婚姻は御法度の部類じゃし」

「でも、子供は作っていたじゃないか」

「そうよな、そして舞羅はシンの子孫でもある」

「子孫と結婚するのもまずいとか?」

「わしらの考え方では、子孫とやる方が御法度なんじゃ」

「なるほど、じゃやっぱり破局だな。その辺の所、シンに言っておいた方が良くは無いかな。一応な。言う事、聞かないかもしれないけど」

「主もよう判っておるのう」



 一方病院では、シンが姿を隠して様子を見に行ってみると、明は脳の検査中で、真奈と舞羅は検査室前で待っていた。

 見ていると、やはり舞羅にはシンが判り、シンのいる辺りをじっと見ている。

「そこの壁が、そんなに珍しいの。変な子ね」

 真奈も気が付いた。

「シンの視線を感じるの」

「やだ、姿でも隠す術かしら。そっち見ちゃだめよ。誤解されるわ」

「誤解じゃあないわ。あたし、大人になったらシンと結婚するから」

「あんた言っておくけど、シンは龍神だからね。結婚とかできないのよ。種類が違うの。人間に化けているだけで、本当は人間じゃないのよ。デカいのよ、物凄く。童話とかの絵にあるでしょ。見た事ないの」

「見たことある。でも絵を描いた人は、実物見た事ないと思うけど」

「翔叔父さんは見たことあるって言ったそうよ。リラちゃんが言っていた。デカくてすごくきれいだったそうよ。空に昇って行くとこ見て、死んだと思っていたら。元気に戻って来たって。本物はそんな感じで、とても人間となんかと、どうとかできる代物じゃないわね。本龍がその辺に居るのなら、本龍の前で言うのもなんだけど。舞羅、本当にその辺にいそうなの」

「いるわ、あの壁の所に。でもあたし達はシンの子孫って言う話、誰かがしていなかったっけ。と言う事は昔も人間と結婚したことあるんじゃない」

「それは言い伝えよ。出来るわけないって。きっとこの辺にあたしらの先祖が居て、仲良く暮らしていたかなんかで、そんな言い伝えが出来たのよ。それにしても、もしあたしらが子孫だったとしたらよ、例えばの話だけど、子孫とまた結婚するわけ?それって変じゃない。そりゃあ、だいぶ、血は薄まっているかもしれないけど、でも、なんか変、道徳的か、生物的か、それとも法律的か分からないけど。妙な感じね」

 真奈は舞羅に諦めさせようと、必死で知恵を絞って言っていたのだが、誠に的を得た意見で、シンに刺さっていた。シンは諦めるべきかと、顔を背け、ショックで帰ろうかと思ったその時、

「ぎゃあっ」

 と言う舞羅の悲鳴と共に、舞羅の目つきが変わった。

「ひっ、舞羅、どうなったの」

 真奈が叫ぶと、舞羅とは全く違う声で、

「舞羅の魂はもらった。この能力もな。これで我らの思惑どうりよ。死にかけのあの男は邪魔だし。そこの色男も邪魔だ。母親は飯の支度に使おうか。」

「きゃあっ」

 真奈は悲鳴を上げたが、直ぐに何でもないような顔になった。操られている。

 シンは御神刀で、

「おのれ」

 と切りかかったが、相手は舞羅の体である。一瞬、躊躇してしまった。

「愚か者め」

 魔王が乗り移った舞羅に、あっという間に御神刀を奪われ、逆にあっさり急所を刺された。

 遭えなく殺されてしまったシン。

 この先この物語はどうなってしまうのか。


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