第2話 チーム桂木の新しいメンバー
翔と極み殿、逃げたレディー・ナイラ達を探しに、一緒にうろつく事となった。
「極み殿はレディー・ナイラの元カレだったそうですね。それで彼女を守っていたんでしょ。御神刀が無くて残念でしたよね。地獄の奴ら、諦めたかと思っていたら、SUBBに行ってこの世を地獄並みにする事にしたんですね。日の国には御神刀がありますからね。みんなちょっと油断しちまっていたな。ロンにだって鬼の欠片が入っていたのにね」
等と一人しゃべりながら、皆が逃げた方向に何となくうろついていると、前方に三人と一龍が揃っているのを発見した。
「あ、あそこだ」
と行こうとすると、
「お元気そうじゃな。わしは此処で失礼しよう」
と、極み殿は言い出した。
「どうして、せっかくここまで来ておいて」
「わしはもう他の龍神に会わす顔は無いのじゃ。主もわしが怨霊龍と知って居ろう」
「でも、レディー・ナイラを守ろうとしていたんだし、御神刀が無かったんだから仕方なかったでしょ。誰だって死骸食われたら怒りたくなるよ。これは絶対。俺が保証するよ」
翔に保証された所で面目なさは変わらないが、レディー・ナイラに気付かれてしまった。
「北の極み殿ではありませんか、おいたわしや。御心配をおかけしてしまいました。私は助かりましたよ。本当に、あなた様にはご苦労をおかけしてしまいました。ですが、もう大丈夫ですの。ですから心置きなく黄泉へお戻りください」
良いように誤解されているのか、判っているけど気を使っているのか、微妙な話しぶりである。
「そうでしたか、では、さようなら。どうぞお元気で」
極み殿も、そう言って立ち去るしかないだろう。
「皆さんもありがとう。紅の新しきせせらぎの尊様はどちらに?ああ、来られましたね。まあ、母上様によく似て随分とお美しい事、この度はありがとうございました。御両親によろしく、もう此処まででよろしゅうございますわ。住処はこの下あたりですの。さようなら。北の極み殿、早うお戻りください」
そういわれて、皆で早々に引き上げることにした。翔は、レディー・ナイラは判っているけど、きっと気を使って知らないふりをしたなと思った。
気を使わないリラは
「伯父さん龍、死んだんじゃあ無かったの。でも黄泉に行ったら出てこられない筈だし、あ、判った」
と言って黙った。強烈は始めから黙っていた。と言うのも、さっきの翔たちの押し問答は聞こえていた。
シンと極み殿も押し黙ったままだ。翔は何だか気まずくて、
「何だかなあ、せっかく上手く行ったってのにお通夜みたいな雰囲気、そういえば俺ら葬式だったよな。あ、飛行機着いた頃かな」
その問いにシンが答えた。
「まだ。飛んでおるな。しかし戻った方が良いかもしれぬな。主らに見物人が出ておるのう。新婚さんと噂されておるぞ」
「キャーやだ。どうする翔」
「俺はこのまま到着までおきない」
「見物人が出てるのよ。おきて止めさせなきゃ」
「リラがおきて見物人を追い散らしな。その後、俺がおきる」
「誰が見物していたか、把握しといた方が良いんじゃあないの」
「リラに任す。存分に張り倒しておいてくれ。俺は遠慮しとくよ。問題を起こして首にはなりたくない」
「どうせ、あたしはもう首になっているからね。何したって平気さ。こんな事とか」
と、翔を殴ろうとしたら、移動しながらは無理だったようで、ふらついて下界に落ちそうになってしまった。
「これこれ」
と怨霊龍にしては親切にも、助け起こしてくれる極み殿である。そんな時、聞きにくい事とかを、あえて言いだす強は、
「北の極みの尊様は、これからどうなさるおつもりなのですか」
翔はため息をつきたくなるのを、我慢した。内心『言っちまったか強、相手は怨霊なのに』
すると極み殿、いささか凄味のある声で、
「そうよのう、鬼でものこのこ出て来おったら、取り付いてみようかの」
ときた。するとリラが、
「え、そんなことできるんだ。でも手っ取り早くやっつけちゃったら。毒飲まされて死にかけてても、魔王をもう少しで踏み殺せてたんでしょ」
「ええっ」
他の皆は一斉に驚いた。シンも知らない事だったらしい。
「紅ママが言っているよ。それから酒には気を付けろって」
極み殿は、少し睨んで、
「リラは持ち上げたかと思えば、こき下ろすのう。今からは酒の話はなしじゃ」
「あら、毒は酒に入っていたんだね。きっとあたし達にも気を付けろって言っているのよ」
するとシンは言った。
「母上がそう言われたのなら、今から酒の話題も飲酒も無しにしようぞ。決めた。チームの掟じゃ」
「えー、黙っていればよかった」
「ふふん」
リラの後悔を鼻で笑う翔だった。
シンは思い切って言う事にしたようだ。
「伯父上、地上に居られる事になったのでしたら、私たちに力を貸して下さいませ。地獄の輩は、この世を地獄並みにする事を、あきらめてはいないようですから」
「そうじゃの、地獄の輩を全て片付ければ、わしも気が済むような気がして来たぞ」
と言う事でチーム桂木に、強い味方が出来たのだった。ちょっと気を使うけど。
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