バッドエンドは要らない

 「全ての物語をハッピーエンドにしてください!」

 

 最後まで生き残った人の願いが叶うデスゲームに生き残った私はこう願った。

 

 「全ての物語をハッピーエンド……か。つまり、死んで行った彼ら彼女らの願いも叶えろ。と?」

 

 「その通りです!」

 

 元々私の願いはみんなの願いが叶うこと。そしてついでにバッドエンドで終わった漫画をハッピーエンドにしてもらうこと。

 

 「良かろう。しかしまさか、無慈悲な君がこんなことを願うとはね」

 

 「無慈悲?」

 

 私はみんなのために戦ったんだから慈悲しかないと思うんだけど。

 

 「おっと無自覚だったか。命乞いをするアニエルの首を飛ばしたり、放っておいても死ぬだろう怪我をした詩織しおりの胸を刺したり……中々の虐殺ぶりを見せていたじゃないか」

 

 「それはほら、私が願いを代わりに叶えてあげるって言っても信じなかったから……」

 

 江さんは口だけの偽善者っていうから行動で示してあげただけだし、ソンフンは私のこと殺しに来たから殺しただけだもん。

 

 「まぁ思い出を語っても仕方がない。願いを叶えてやろう」

 

 「ありがとうございます!」

 

 これで世界は平和になって、世界の半分はアリスのものになって、アニエルの妹の病気は治って、シエルは永遠の命を手に入れて、ソンフンをいじめてたヤツらは全員死んで、江さんの娘は無事見つかって、詩織の漫画は打ち切りが取り消しになり、私の好きな漫画はハッピーエンドになる!

 

 あれ? でもシエルはソンフンをいじめてたらしいし、江さんの娘さんはアニエルの妹の臓器になったらしいし、私の好きな漫画家ってもう死んでるし……どうなるの?

 

 「世界を分離する……!」

 

 「強硬手段!!」

 

 

 こうして世界はバラバラになった。

 その時世界の神が間違えたのか、私の好きな漫画は存在そのものが消えてしまっていた。

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