第4話 半年後

「そうだ!」

 いきなり悪魔が叫んだ。なんだ? 何か悪いことでも思いついたのだろうか?


「キサマがやっているように、初回は無料サービスということにしてやろう!」

 なにやら普通のことを思いついたようだ。


「……それはいい考えですね」

 とりあえず、大人の対応をすることにした小鶴井こづるい


「なにせ、元手はテナント料しかかかってないからな。フハハハハ! なにやらボロ儲けの予感がするではないか! これからも宜しく頼むぞ、我が眷族よ!」


「…………眷族にはなりませんからね? タダ働きなんて御免ですよ?」


 こうして、小鶴井こづるいは正式にコンサルタント契約を締結することに成功したのであった。



 流石は敏腕経営コンサルタント小鶴井こづるい

 たとえ顧客が悪魔であろうと、彼の手にかかればより良き経営の道へと導いてしまうのだ。


「フッ、どうやらまた業績を伸ばしてしまったようだ」

 満足げに一人つぶやく小鶴井こづるいであった。



♢♢♢♢♢♢



 ——半年後


 敏腕経営コンサルタント小鶴井こづるいは久し振りに、『新感覚リラクゼーションルーム “天国へといたる扉”』を訪れた。

 この会社、今では自社ビルを所有するまでになったとか。



「おお! よく来たな、我が眷族よ!」

「だから、あなたの眷族になった覚えはありませんから。仕事の方は順調なようですね?」

 相変わらず眷属にしたい悪魔と絶対にお断りしたい小鶴井こづるい


「ああ。キサマのプランに従って事業展開したところ大儲けでな。今は都内に9カ所目となるリラクゼーションルーム開設に向けて、大忙しといったところだ」


「それは良かったです。それでは契約通り、約束の期日までに、お金を私の口座に振り込んでおいて下さいね」

 小鶴井こづるいは今日、振り込みの催促に来たのだ。



「なあ、キサマ、やはり吾輩の眷族に——」

「なりません! 仮に眷族になったとしても、報酬はちゃんといただきますからね?」


「なんだ。じゃあ、眷族にならなくてもいいや」

 やはりこの悪魔、契約とか関係なくただのケチだったようだ。



「まったく…… それからあなたが雇用している眷族の方々にも、ちゃんとお給料を払って下さいよ? また労基局とモメても知りませんからね」


 こうして、今回もまた多額のコンサルタント料を手にした小鶴井こづるいであった。

「自分の才能が怖いな」

 自信満々につぶやく小鶴井こづるい


 彼はこれからも、どんどん大きな仕事をこなしていくのだろう。

 顧客が人であろうとなかろうと、彼の道を阻むことは誰にもできないのだ!

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