第12話 人工肛門になったお話 6

「なぜ、こんなことになったんですか?」

 と外科医に聞かれました。


「‥もしかしたらコンビニのアルバイトの時に立ったり座ったりした時に貼り面がずれて皮膚に傷が付いて膿んだのかもしれません。」


 最初のきっかけは多分そんなところだと思います。


 袋をこまめに替えていれば膿んだりしないということに気が付いていませんでした。


 4月の終わりにピアノの発表会を予定していた私は発表会に気を取られていたと思います。

 5月に入れば人工肛門も閉鎖手術だし、もう新しい袋を買うのはもったいないと思いました。

 袋は10個単位での注文のものが多く、一番安い一個500円のでも一回で5000円の出費です。

 5個で注文出来る袋は1000円前後だったり。


 お店に電話して、「もうすぐ人工肛門の閉鎖手術なのでバラ売りしていただけませんか?」

 聞くと

「ああ、バラ売りはできないですが。それならまた、試供品をお送りしますよ?」

 と言われ

「お願いします。」とまた2製品を二つずつただで手に入れました。


 今、思えばこのケチ根性が後々、とんでもない事態を引き起こしたのです。


 外科医は

「しっかり石鹸で洗ってくださいね。もう少しでストーマ(人工肛門)閉鎖の手術ですから頑張りましょう。」

 と言い、そのまま様子を見ることになりました。


 しかし、発表会2日前、傷口は酷くなり直径1cm深さも5㎜以上に見えます


 怖くなり、急いでストーマ外来の看護師を訪ねました。


「ゴールデンウィークに入るから心配よねぇ。写真撮って先生に送っておきます。とにかくしっかり洗って乗り切ってくださいね。」

 と言われました。


 しかし、もう袋の数があまり無いのです。

 1週間に一つの計算で用意しているのでこまめに替えたら足らなくなります。


 4月29日が発表会でした。

 前日になって

「小さいお子さんが多いからお菓子を少し準備してお土産と一緒に渡したいな。」と思い買いに行きました。


 100均で買った小袋に分けて入れ可愛いリボンを付けて用意しました。

 気分は明日に向かって盛り上がっています。

 後は、私も演奏するのでピアノの練習を2時間ほどして発表会前の最後のレッスンに来るお子さんが3人来てその日の予定は終了でした。


 さぁ、ピアノの練習しよう!と立ち上がった時に病院から電話がかかってきました。


 出てみるとストーマ外来の看護師さんでした。

「バーバラさん、やはり先生に診ていただきましょう。

 先生に相談したら今からなら時間が取れるそうなんです。万が一何かあってもゴールデンウィークに入ってしまったらもう連絡が取れなくなりますよ。」


 と言われ仕方なく練習を諦めて病院へ行きました。


 病院で先生が傷口を見てしばらく悩んでいました。

「縫いましょう!麻酔持って来て。」

 看護師さんが「はい!」と言って出て行きました。


「バーバラさん、今から縫いますね。」

「先生、私明日ピアノの発表会なんです。大丈夫ですかね?動き回る予定ですけど。」


「演奏されるんですか?それぐらいなら大丈夫ですよ。良いご趣味ですね。」

「はい、演奏もします。でも、それよりも準備や本番の舞台のセッティングで動き回ります。」

「?」

「私が開催する発表会なんです。麻酔を打って縫ったら安静ですかね?」


「え?バーバラさんピアノの先生なんですか?コンビニの店員さんじゃない?」.


「コンビニはたまにです。それより明日が心配で‥。」


「なんだったら痛み止め出しときますよ。あまり動き過ぎなければ大丈夫だと思います。」


 そして麻酔して5針ぐらいで無理矢理穴を閉じました。


「麻酔が覚めたら痛いですか?」

「年齢によりますね。年が多いと痛みに鈍い人が多いです。痛み止めいりますか?」

「え?、それは私は年が多いということですね?」

「いや‥そういうことはでは‥いりますか?」

「いりません!」


次の日、痛かったので若いのかもしれません。

発表会、大変でした‥。


            つづく

   

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