第8話 人工肛門になったお話 2

 この人工肛門ですが、腸が一つしか出ていない場合は一生治せないもので障害者となり公的な支援を受けることが出来ます。


 ところが二つ腸を出している場合にはつなぐのが前提なので全て自腹で装着の袋や付属品を買わねばなりません。

 一つの人は大腸癌の場合が多く、腸を途中で切って下側の腸を取って上側からの腸をお腹に出して肛門にします。そこに袋を貼りつけて便を溜めます。


 二つの人は腸を二つに切って上からと下からを両方とも雪だるまみたいにくっ付けてお腹に出して上からだけ便がでます。


 後からこの二つをつなぐのです。


 下の腸からは腸液が少しだけ出てきます。

 そして本当の肛門からも腸液が出てくるので便意が時々ありました。食べ物は下の大腸を通らないのに動いているのです。


 CT撮影と血液検査で決めた緊急手術なので手術のための準備はコロナ検査だけでした。


 あっという間に手術室に連れて行かれ気が付いたら終わっていました。


 看護師に痛いと伝えると

「それじゃ麻薬入れまね。」

 と言われ点滴に繋いであるボタンを押してもらい5分でふわふわと天国へ行ったような気分になりました。


 ものすごく気持ち良くて驚きましたよ。


「痛くなったら麻薬のボタンを押しますから言ってくださいね。」と言われました。


  ICUではスマホでゲームをして飽きたら眠り目覚めたらスマホで漫画を読み痛くなったら麻薬を入れてもらいの繰り返しでもうこのままここで暮らしたいと思いましたよ。

 お腹も空かないし喉も渇かないしベットを斜めに起こしてあるのでスマホを持っていてもちっとも手が疲れないし。


 病棟のベッドがなかなか空かなくてICUに3日もお世話になりました。

 ICUの看護師さんはとても忙しそうでしたが時々世間話をしてくれて、それも楽しくて。


 そうは言っても2日もすれば

「歩きましょう。」と言われ

「立てたら尿管のカテーテルを取りますからね。」

 と言われ身体を起こそうとしたら痛くて

「イタタタ!」と言ってしまいました。


 ICUの看護師さんは仕事が早いですから、

「痛いですか?麻薬入れますね。」と言ってボタンを押してしまいました。


 え?今から立つのに?

 もちろんフラフラで立てませんでした。


 「麻薬が抜けてから痛いまま立たせてください。」

 とお願いしましたよ。


 病棟へ移動してからは人工肛門(ストーマ)に袋を付ける練習をして

「こんなに袋を付けるのが上手い人見たことない。」と言われ褒められました。


 私の手術をした青年医師は3ヶ月後に手術したいけれど

「僕、転勤になりました。無理矢理2ヶ月半でストーマ閉鎖手術しちゃいます?」

 とか相談されて

 私はピアノ教室の発表会を4月に予定していて出演する子どもたちのレッスンが出来なくなるのは困るので、

「もう5月にします。」


 と5ヶ月もストーマで過ごしました。

 貴重な体験でした。

 もう2度と経験したくないです。


              つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る