第14話 未知なるもの・中編

 私たちは、男が住んでいる家に招かれた。先ほどの魔物も一緒だ。

 客間に案内され、落ち着いた所で、男は静かに話し始めた。


「先ずは改めまして、私の名前は大谷おおたにと申します。そしてコイツ(魔物)の名前は、タローって言います」


 私たちは大谷さんの話に耳を傾ける。タローは大谷さんの横で座っている。


「こんなこと言っても、信じてもらえないでしょうけど……。家の近くを散歩していたら、変なものを拾いまして……、コレです」


 大谷さんは客間のテーブルの上に、それをコトッと置いた。

 私は気づいてしまった。そして村瀬さんの目線を横目でチラッと確認しても、私と同じ表情をしている。

 テーブルの上に置かれたは、異物で間違いなさそうだ。私たちは大谷さんの話を続けて傾聴する。


「コレは何だろうなと思って眺めていたら、目の前にタローがいたんです」


「いきなり現れたのでビックリはしましたが、最初は変な犬だなぁ程度にしか思っていなかったんですが、私が家まで帰ろうとすると、コイツ。家までついてきまして。何度追い払っても、戻って来てしまうんです。元々、動物は嫌いではないので仕方がなく飼う事にしました」


「それから、名前が無いと不便だろうと思い、タローという名前を」


 村瀬さんは大谷さんに話しかける。


「大谷さん。それ、ちょっと触らせて頂いても?」


「ええ。構いませんよ。どうぞ」


 村瀬さんは、それを手に取ると。小声で呟いている。恐らく探知魔法を詠唱していると思われる。


「なるほど…。やはり」


 村瀬さんは確信したようだ。


「私はと同じようなものを今まで色々見てきました。大谷さん。これは、危険なものかもしれません」


 不可思議な顔をしながら大谷さんは返答をする。私もどう危険なのかは分かっていない。


「危険とは?」


「大谷さんは、これを手にしてからタローと出会ったんですよね。これは、変な動物を引き寄せてしまう効果があるように思えます」


 大谷さんは得心が行かない表情をしている。私も(略)


「ふむ。そうなんですか…」


「もし、宜しければなんですが、私たちにこれの処分を任せて頂けませんか?」


「ん~。それは、まぁ。大事なものではないので、構いませんが」


 村瀬さんは、大谷さんの許可を得て、異物を譲り受けた。玄関で挨拶をして別れようとした時であった。


 異物から妙な雰囲気を感じ取る。村瀬さんが「まさか……」と言い出し、大谷さんに話しかける。


「大谷さん。この辺で広い場所はありませんか!?」


「え? あるにはありますが、うちの庭からなら目の前がひらけた空き地になってますんで」


 村瀬さんは異物を手にしたまま、大谷さんの庭のほうへ走り出し、目の前に広がる空き地へ異物を投げ捨てた。


 すると、蜃気楼のように空間が歪んだように見えたかと思うと、異物のすぐそばに見た事も無い生物が現れたのである。


 その体躯は、人よりも数倍大きく、端的に言うと――熊に近い。

 直感が言っている。これは危険な魔物だと。

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