第14話 未知なるもの・前編

 主人公、中島義行一行いっこうは、無事に引っ越しを終える事が出来た。


 飯田が手伝ってくれた事もあり、引っ越し作業は大分はかどった。作業の合間にマリに対してアプローチを試みていたが……。うん。結果については言わなくてもいいかな。


 前に住んでいたアパートから現在の住居までは、高速道路を使って移動をしてきたが、村瀬さんの異物回収活動に関して“距離的影響は特にない”と言っていたので、現在の一軒家に引っ越しが決まったのである。


 付近の住民に新しい住人である事を周知してもらうため、粗品のお渡しや、軽い挨拶をしていく。

 その時、ご近所さんから少し気になる話を聞いた。どうやら、この付近では変な動物が時々現れるらしい。

 どんな動物なんですか?と、話題がてら話を振ってみると


「ああ、ほれ。あれじゃ。丁度そこに」


 ご近所さんが指をさすその先に目線をやると、村瀬さんがハッとした顔で小声で私に


「中島さん。あれは……。魔物モンスターです」


 と、教えてくれた。私は表情を崩さずに、直接的な害はないのかとご近所さんに聞いてみたところ。

 今のところ人的被害はないとのことだが、嚙まれたりしたら怖いと言っていた。引っ越したばかりではあるが、新たな問題に直面することになってしまった。しかし、困っている人がいるならば、助けてあげるのが人情というもの。


 色々と調査をしてみる必要がありそうだ。だが、その前に街中に出没した魔物について、村瀬さんに聞いてみる必要がある。ご近所さんと別れた後、私たちは家の中に入り、リビングで村瀬さんに質問をしてみた。


「村瀬さん。先ほど言っていた魔物というのは、どんな生物なのでしょうか」


 村瀬さんは説明口調で話し始めた。


「そうですね。魔物というのは本来、私たちの世界にいる動物の種類の総称で、大まかに言うと人間に対して害のある生物がほとんどです」


「と、いうと……先ほど見た魔物も……」


「あの魔物はまだ大人しい種類ですが、詳しい事は調べてみないと分からないですね」


 先ほどみた魔物は一般的な成人男性の半分くらいの身長しかなく、4本脚の、犬に近い外見をしていた。私たちの方を見た後、どこかへ消えてしまった。

 

 私と、村瀬さんと、マリの3人で、その魔物を探してみる事にした。

 

 とりあえず街中を散歩がてら探索してみる。付近の地理を覚えるのにも役に立つので一石二鳥だ。

 しばらく歩いていると、マリが見つけてくれた。


《いました。あそこです》


 その方に目をやると、確かにさっき見たのと同じ動物――いや、魔物か。よく観察すると見た目は普通の犬に見えなくもない。こちらを気にする様子がないので、私たちは跡をつけてみる事にした。


 魔物が進む方向に対して後ろを歩いていると、前方から人影が走ってこちらに近づいてきた。


???「あー! いたいた! お前、こんなとこにいたのか」


 付近に住んでいる住民だろうか、男の人が魔物に近づいて、頭をナデナデしている。

 私はその人に質問をしてみた。


「あのー。すみません。そちらのまも――、動物は、貴方が飼っているんですか?」


 男はこちらに気づき、質問に応答してくれた。


「あー。そう――ですね。飼っているというか、なんというか」


 歯切れの悪い返答だった。村瀬さんが続けて問いを投げかける。


「付近の住民が不安がっているわよ。“噛まれるんじゃないか”って」


 男は申し訳なさそうな顔をして対話を続ける。


「あぁ……。やっぱりそんなことになってましたか……。申し訳ない。こいつ、頭が良いみたいで、紐で繋いでも勝手に抜け出しちゃうんです。立ち話もなんなので、ウチに来ませんか? ここでは話しづらいことも」


 私たちは男の申し出を受ける事にした。

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