第11話 奇妙な共同生活の準備的なあれこれ

 私たち3人は自宅のアパートに戻って来ていた。テーブルの上に異物が2個置いてあり。私たちは周りを囲むように椅子に座っている。(ちなみに、椅子は私と村瀬さん用に2つしかなかったので、帰り際に簡易的な椅子を買ってきた)

 村瀬さんは、持って帰ってきた異物に対して短距離探知魔法を使用してみたが、予想通り。探知に引っかからないタイプの異物だと言っていた。そして、魔法によりコーティングされている可能性があるから、詳しくは、異世界に送り返して仲間に調べてもらうという事になった。

 異物は、私たちの目の前で、村瀬さんの転移魔法で異世界に送られていった。後で異世界の本部に報告するそうだ。

 これで一つ問題は解決した。が、次の問題である。私こと中島義行は手を挙げて発言する。


「あの、ゴーレムさんって、お名前は?」


《まだこの世界に来たばかりで、現在の呼び名は決まっておりません。私は、村瀬様のサポートとしてこちらの世界に使わされております。村瀬様に決めて頂く事を所望致します》


 その事を聞いて、村瀬さんは頭を悩ませ始めた。


「う~ん。名前。名前かぁ。どんな名前がいいかしら?」


《どんな名前でもそれに従います。強いて言うならば、呼びやすい名前が良いかと思われます》


「呼びやすい名前…。ゴーレム…。サポート…。支える…。真理しんり…。ささえ…まり」


 村瀬さんは紙にペンで書き始めた。


「こんな名前はどうかしら? 笹江ささえ マリ」


《笹江マリ。承りました。今日から私は笹江マリです》


「じゃ、これからは、呼びやすいようにマリと呼ぶことにするわ」


 私もウンウンと頷き、会話に混ざる。


「マリさん。よろしくお願いします」


《中島さん。気軽に、マリとお呼びください》


「りょ、了解です。マリさ…。ゴホン。マリ」


 初めての相手に対していきなり呼び捨てにするのも、なんだが照れくさいものがある。おまけに、ゴーレムとは言え、美人さんである…。その見た目は普通の人間にしか見えないのだ。しかし、これで二つ目の問題もクリアした。そして三つ目の問題は…。


「あの、一つ。提案がありまして。これからも3人で活動するならば、もう少し広い部屋に引っ越しをしたいと考えているんですが。いかがでしょ?」


 村瀬さんは私の提案に同調するように談話をする。


「いい考えだと思うわ。引っ越し。そうね、これは中島さんだけの問題ではないので、私も引っ越し費用は負担するわ。私の所属する組織からも、こちらの世界で使える金銭はある程度持たされているから」


《私もお二人の意見に賛同致します》


 何気ない会話の中で、村瀬さんは一つ思い当たる事があったので、マリに進言をした。


「ねぇ。マリ。私たちしかいないときはその丁寧口調でもいいんだけど、その喋り方だと、外に出かけた時、他の人たちから見たら変に思われるわ。何というか、フランクな喋り方も身に着けたほうがいいと思うの」


《なるほど…。わかった。今度からそうするね。と、こんな感じでよろしいですか》


「フフッ。ま、それでいいわ。徐々に使い分けていきましょ」


 三つ目の問題も進行する方向で考えが纏まった。引っ越し。最初はネットで検索するとして、不動産屋にもお願いすることになるか。


 と、その時、玄関からピンポーンと音がなる。誰かが来たようなので、私は返事をしながら玄関に近づく。


「お、いたいた。俺だ。飯田だよ~。開けてもらえるかな?」


 友人の飯田が来客してきた。玄関を開けて私は迎える。


「お邪魔しま――――。 1,2,3人………?」


 飯田の顔の表情が固まった。と思ったら私は急に肩を組まれ、


「あー。村瀬さんすいませ~ん。ちょっっと、コイツと外で話したい事ありますぅんで借りますねぇ~♪ ハハハッ」


 私は外に連れてかれた。飯田は笑った般若のような顔をしている。


「おぃぃぃうぃぃぃ!? ダーレーダー? アーノー美人サーンーハー?」


 私は両肩を掴まれて思いっきり揺さぶられている。あわわ。


「そ、れ、は、カクカクシカジカ。で、ま、まて。揺さぶるな! 話しづらい!」


「中島くん……。ぐすっ。君は僕と同じ。こっち側(モテない側)の人間だと思っていたのに。君は親友を裏切るのかい?ウウッ……」


 ウソ泣きの表情でウォンウォン泣く飯田。成人しただい大人おとなが人目のつく所でみっともなく騒がれると、ご近所の目が痛い。私は飯田を説得するようになだめるしかなかった。


「飯田。わかった。俺が悪かった。だからとりあえず中に入ろう。な?」


 私は飯田を説得しながら中に入ろうとする。


「中島クン……。いや、もう茶番はいいか。それはそれとして後で詳しく聞かせて貰うけどな?」


 ゴゴゴゴゴっと後ろから効果音が聞こえてきそうな雰囲気が漂っていた。


「分かったよ。後でちゃんと言うよ」


 私はやれやれ、と思いながら飯田をアパートの部屋の中に連れていく。


「で、飯田よ。今日はどうしたんだ?」


「ああ、それがな。お前さん。自営業で生活してるだろ? んでな、親父の知人が不動産やってて。自営業向けの家屋物件が余っててな。誰か住んで欲しいんだってさ。ま、この状況を察するに、渡りに船ってヤツか?」


 私は納得するように答える。


「それは、渡りに船ってヤツだ飯田君!」


 私は飯田の肩を両手で叩いた。よし。引っ越し。するか!

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