第10話 事件は起こる・前編
村瀬めぐみは某所にて、異世界との連絡の為、魔法による連絡通信を
「――ということでして」
「はい。それで……。――という状況なので増援をお願いしたいのですが」
「人手不足で増援となる人員は送れない? しかしですね」
「その代わりとなるものがある? 取りに行けばいいんですか?」
「え、受け取るわけではない。□□駅に行けば分かるようにしておくって……」
「はい……。分かりました。失礼します」
「ふうっ。まったく、本部の連中も大雑把なんだから……」
「後で中島さんに連絡しとかないと」
―― 一方、その頃 ――
中島義行は自宅のアパートでテレビを見ていた。
『次のニュースです。〇〇県〇〇市の街中で、車〇台による玉突き事故が――』
『〇〇市の△△デパートで、何者かにより、商品を盗む事件が――』
『〇〇市の□□駅周辺で、刃物を持った人物が――』
「随分物騒な世の中になってきたもんだなぁ……。ん? 今日のニュース。住んでる所から割と近いものばかり。偶然か?」
その時、スマホの着信音が鳴った。村瀬さんからの電話だ。テレビを消そう。
「もしもし。中島さん? 今、用事を済ませたら帰ろうと思うんですが、もう少し時間がかかりそうです」
「なんと、今どちらです?」
「□□駅に向かっている途中です」
「□□駅ですか? さっきテレビで事件があったって言ってました。大丈夫ですかね?」
「そうなんですか。とりあえず、こちらは大丈夫です」
「なんか心配になってきた」
「フフッ。心配ありがとうございます。大丈夫ですよ。こう見えても、私。結構強いので」
「それは、そうかもしれませんが。いや、迎え、行きますよ」
「ん~。まぁ、来てくれた方が説明の手間も省けるか……。電話越しだと話しにくいのですが、実は、とある物資のようなもの? を受け取る事になってまして。どうしても□□駅に行かないといけないのですよねぇ」
中島義行は、察した。
「もしかして異世界関連ってことですかね?」
「そうです」
「分かりました。だったら
――ピッ。
私は通話を終了した。 ……が、胸騒ぎがする。何もなければ良いが。
―― その後 ――
村瀬めぐみは□□駅周辺に来ていた。事件が発生したばかりか、周囲に警察官がいる。駅の中には近づけそうにもない。
「弱ったなぁ。□□駅に行けって言われても、これじゃあ中に入れもしない。中島さんも来るって言ってたし、待つしかないか」
その時、村瀬めぐみは、周囲の異変を感じ取った。辺りを見渡すと、刃物を持った人間が複数人歩いている。目はうつろで、正気では無いようだ。そのうちの一人が警察官のほうへ歩いて行き、突然暴れだした。驚いた警察官たちは、男を取り押さえようとしている。他の刃物を持った人間のうちの一人が村瀬めぐみのほうにも近づき、刃物を振り回し始めた。
しかし、村瀬めぐみはその攻撃をものともせず、最小限の動きで躱す。
(狂人の類? いや、能力者に操られていると考えるのが妥当…)
それに気づいた警察官が、村瀬めぐみを守るように間に割って入ってきて、ここから離れるように叫んでいた。
(警察官からしたら、私は一般人。ここは、一般人のフリをしてこの場を離れるべきか…しかし、人を操っている能力者はどこに…?)
刃物を持った人間が危ない。そう、その場にいた者ならば誰しもがそう思うであろう。
その先入観に捕らわれてしまった村瀬めぐみは、油断した。
村瀬めぐみは後方から忍び寄る影に気づかず。
刃物を持っていない人間に捕らえられてしまった。
その人間も、目が正気ではなかった。もはや操られているのは明白である。
「ッ!?」
(しまった。刃物を持っていない人間も操られていたのか!)
前方から刃物を持った人間が村瀬めぐみのほうに近づいてくる。
(くっ、振りほどけない! 肉体も強化されている!?)
警官たちは、他の刃物を持った人間の対処で、こちらに気づいていない。
今や刺されるか。 その寸での所――。
(防御魔法の展開がまにあわっ――)
刃物が村瀬めぐみに触れるよりも早く――何者かが目の前に現れ、素手で刃物を掴み、狂人となったその人間を片手でなぎ倒す。
この瞬間、村瀬めぐみを拘束していた狂人の手が緩み、そのチャンスを逃さなかった村瀬めぐみは、拘束の手から瞬時に抜け出すと同時に回し蹴りを繰り出し、その足先は見事に狂人の頭部を捕らえていた。狂人は糸が切れたかのようにその場に伏せて倒れ。村瀬めぐみは周囲の安全を確保するように構えを取る。
村瀬めぐみを助けた人物は、当人を守るように構えながら涼しい顔で話し始めた。
《駅にいないと思ったら、ここにいましたか。お久しぶりです》
「お久しぶりって……。私、貴女のような豪胆な女性は知らないんだけど。とりあえず助けてくれた事には感謝するわ」
村瀬めぐみは、自分を助けてくれた相手を確認しようと観察したが、とりあえず中島義行では無いことは一目でわかる。その人物はどうみても女性であり、背丈は村瀬当人と同じくらいであった。
そのような状況の中で現れたもう一人の人物がいた。我らの主人公、中島義行である。
「村瀬さん! 大丈夫ですか!」
「ええ、大丈夫よ。フフッ。寸での所だったけどね。こちらの女性に助けられたの」
《中島さんも、お久しぶりです》
「お久しぶり……? はて」
村瀬めぐみは、何かを察するように閃き、言葉を発した。
「あなた……、もしかして、あの時のゴーレム?」
《ようやく気付きましたか》
中島義行こと私に関しては、状況を理解するのに精いっぱいだった。
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