第9話 現在の状況確認

 主人公、中島義行は自宅のアパートで正座していた。現在、村瀬さんの説教中である。


「マッコト申し訳ございませんでした」


「ふう…まぁいいでしょう。それにしても、この地域にもついに犯罪組織…ですか。別の地域の仲間たちの所には、既にそういう犯罪組織がいると話には聞いていましたが、今現在、私たちのいる地域にも現れたとなると、何かと対抗手段を考える必要がありますね。それに……」


 村瀬さんは考える人のポーズを取った。


「それに…?」


「私は異物探索の為に、時々、探知魔法を使用しているんですが、それに全く引っかからないというのが変なんですよね」


「そ、そうなんですか。つまり…。どういう事でしょう?」


 私は村瀬さんの話を傾注して聞く姿勢をとった。


「私が使用している探知魔法は、異世界の物質であるという条件を元に探知をしています。探知の元となる物体と同じ性質を探し出すという事です。よいしょっと」


 そう言うと村瀬さんは、胸元からネックレスを取り出し見せてくれた。

 私は、ネックレスを見ている。ネックレスをね。


「私の場合は、このネックレスが異物と同じ性質を持っているので、探知魔法の元にしているわけです」


 (ちなみにきっちりげんこつ頂きました)


「質問です。それも何か異能力を発現したりする物体なんですか?」


「いいえ、この異物にはそのような性質はありません。全ての異物が能力を発現させるわけではありませんので」

 

 私は、ふむふむと頷きながら話の続きを聞く。


「私も断言できるわけではないんですが、相手が犯罪組織という事は、異物を複数所持している可能性が極めて高い。にもかかわらず、私の探知魔法に引っかからない。となると考えられる理由としては」


「仮説その1、異物そのものが、探知魔法に引っかからない特殊な物体である」


「仮説その2、そもそも異世界の異物ではなく、現実世界の異物である」


「仮説その3、異物とは関係なく、能力に目覚めた集団である」


 私も頭を悩ませながら、真剣に考えていく。


「う~ん。どの仮説だったとしても厄介ですね……」


 村瀬さんは神妙な面持ちで更に続けて話す。


「そして、仮説その4、異物が探知魔法に引っかからないようにでコーティングされている」


「魔法……ですか」


「ええ、その4だった場合、犯罪組織に魔法を使える者。つまり異世界人がいるという事になりますね。その場合ですと、かなり最悪です……」


「最悪というのは?」


「異物を回収に成功したとしても、魔法で攻撃される恐れがある。そして、異物を回収して無力化させたとしても、異世界からまた新たな異物を持ち込んで来てしまう可能性がある。という事です」


「なんという……。先ほど最初に言っていた、対抗手段というのは?」


 村瀬さんは腕を組んで続けて話す。私は真面目に話を聞いている。聞いているよ。


「相手が組織ならば、こちらも組織で対抗する。つまり、仲間を呼ぶという事です」


 (またげんこつ貰いました)


「なるほど、そうですよね。異物回収をしているのは村瀬さんだけでは無いですから…。他の地域にいる人達に応援を呼ぶという事ですね」


「それも考えています。しかし、一度私の仲間達にも相談しなければいけない案件なので、異世界からの応援も視野に入れる必要がありそうです」


 私は相槌を打ちながらも、椅子から立ち上がり、一息着くためにお茶を入れに行く。

 村瀬さんに背中を向けたまま私は会話を続ける。


「問題は山積みってことですか」


 真面目な話から一段落したのもあり、少し砕けながら村瀬さんは話し始めた。


「そうね……。そういえば、新しい能力、開花したんですって?」


 お茶をテーブルの上に差し出しながら私は答える。


「え、ええ。そうです。<<疾走のカルマ>>って名前を付けました」


「相変わらず不思議な力ねぇ。それだけに興味深いのもあるけど…。中島さんの特異な能力も加味して、こちらに有利な条件も揃えていきましょう。私はこの後、異世界の仲間達と連絡を取りに行ってきます」


「了解です。私は犯罪者たちに顔をみられているので、これからの行動には注意をします」


 敵。という存在を、これからは考えていく必要がありそうだ。

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