第6話 異物の回収・後編
村瀬さんはゴーレムの停止装置を押す事に成功し、私達は周囲の安全を確認した。
「どうやら…、もう大丈夫のようですね。村瀬さん」
「はい、もうこれで大丈夫かと……。それはそうと!」
「!」
少し怒るような表情を見せた彼女に、私は畏まった態度を取る。
「私、『何か別の手を』と言いましたよね!? 何故こんな危ない真似を!」
「そ、それは。攻撃されている村瀬さんを見て、居ても立っても居られなく」
「……ハァ。緊急時だったのは分かりますが。例えば、一度逃げてから手段を立て直す事だって出来たんですよ?」
「ウッ」
「次からは気を付けてくださいね。もっとも、身を犠牲にしてまで助けようとしてくれたのには感謝しています」
頬を膨らませながら話す彼女に、複雑な気持ちで私は答える。
「スミマセン。ドウイタシマシテ。そ、その。アーティファクトは。どうしますか?さっき何か喋ってましたが」
「ん-。そうですね。今は停止装置を押してあるので動くことは無いのですが。確かに、気にはなりますね…」
「戦いたくない。命令しないで。って言ってたような気がしますが」
「戦争に使われたゴーレム核でしょうか…。う~ん。悩んでいても仕方ないですね」
「えいっ」
ポチッと言う音と共にアーティファクトを起動させる村瀬さん。
「ちょっ。また襲われたりしたら!?」
私には先ほど注意したのに、彼女自身も意外と危険を顧みない所があるなと内心思ったが、その
「大丈夫です。今度は攻撃される前に停止ボタンを押しますから」
起動する音を発しながら薄っすらと輝き始め、その様子を2人で眺めていた所、アーティファクトはその第一声をはなった。
《アナタタチハ ダレ ワタシハ タタカイタクナイ》
「私たちは、この世界に散らばって存在する異物を回収する者よ。あなたのようなアーティファクトもね。それに安心して頂戴。別にあなたに戦って欲しいわけでは無いわ」
《ワタシハ タタカワナクテ イイノ》
「そうよ。あなたは・・女性かしら。貴女はこれから元の世界に戻って、とある場所に大事に保管される事になるわ」
《ソウ アリガトウ ワタシハ 生活用ゴーレムトシテ――》
その後、彼女は、自身の事について語り始めた。
元々は、一般家庭で人間のお助けをする生活用ゴーレムだったそうで、ある時に戦争が始まり、兵器として使用される事となった彼女は、核となる心臓を抜き取られ、戦闘用のゴーレムの体に移植されたそうだ。戦争をしなければならないという強制命令に逆らえず、いくつかの戦場をさ迷い、多くの仲間のゴーレムは戦いで損壊し、彼女自身も故障から動けなくなり、消滅すると思っていた所、こちらの世界に飛ばされ。あとは、いくつもの時を過ごし、現在に至る――と。
「では、貴女を元の世界に送るわね。向こうにいる私の仲間が、貴女の事を大事に扱ってくれるはずよ」
そう言うと、村瀬さんは呪文を詠唱し始めた。アーティファクトは宙に浮き、異空間のようなゲートの中に入っていった。去り際に彼女の声が一言だけ聴こえた。
《アリガトウ サヨウナラ》
冷たい風が吹き、陽も落ち始めてきている。彼女を見送った後、私達はその山を後にしたのだった。
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