第3話 禁忌の詠唱

 その後も、彼女は様々な強敵を退しりぞけ続けた。


 いよいよこのダンジョンの最奥地、『相談の間』が見えてくる。

『相談の間』の入口には、一人の少女が待ち構えていた。


 いや、少女ではない。あれはウサギの容姿をもつカワイイ獣人、兎耳族だ。

 兎耳族は、歳をとっても少女の容姿のままなのだ。


「クッ、コイツだけは絶対に許さない……」


 彼女が若さを保つため、いったいどれほどのお金を美容に費やしていることか。


 兎耳族の女が口を開く。

「ここまでよく来たネ。でもアタシを倒すことは出来ないヨ」

「なに!?」


「アタシは『禁呪』を唱えることが出来るんダ!」

「なんだと!?」


「さあ、アンタはここで心の平安を失い、スゴスゴと引き返すのヨ。じゃあ、いくヨ!」


 兎耳族の女はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、禁忌の呪文を口にした。



「……………………ねえ『おばさん』、どこから来たの?」


 何という神をも恐れぬ暴言であろうか!

 自称うら若き乙女になんということを……

 それは…… それだけは言ってはならないのに!



 しかし! 女魔導士は平然と禁忌の呪文を聞き流した。

「フン。私はもう何年も前から近所の子どもたちに、『おばさん』って言われているのよ」


「…………この女魔導士に幸福あれ!」


 兎耳族の女は応援の言葉を残し退散した。

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