赤い嫁さんと緑の旦那さん

トマトも柄

第1話 赤い嫁さんと緑の旦那さん

 旦那さんの仕事が終わり家に帰宅している。

 玄関には嫁さんが迎えてくれている。

 いつも笑顔で迎えてくれているけど、今日は少し様子が違っていた。

 流石に旦那さんがいつもと違う事に気付き、

「どうしたんだ?」

 嫁さんに聞いてみた。

「あの…その…ご飯作る時間が間に合わなくて…」

 嫁さんは申し訳ないという思いをしながら口を開く。

 旦那さんは安堵して、

「あぁ、そうだったのか。 今日は外食でもするかい? いつも頑張ってくれてるのだからそういう事もあるよ」

「ごめんなさい。 けれど、外食は大丈夫よ。 代わりの物を買ってきたの」

 そして二人は台所へ向かい、嫁さんがある物を見せた。

 そこにはカップ麺が二つあった。

 赤いきつねと緑のたぬき、それを見て旦那さんは笑みを零した、

「懐かしいなぁ。 確かガツガツ話をしたのもこれがきっかけだったな」

「そうそう。 あのときでしたよね。 物凄い口論になりましたよね。 あれがきっかけだなんて誰も思わないですもんね」


数年前


 ある職場で休日出勤の緊急で数名が呼び出されていた。

 そこには当時の旦那さんと嫁さんもいました。

「いや~ごめんね。 みんな休みの日に呼び出して。 その分手当か休日を出すから」

 社長の言葉に社員が気合を入れて働く。

 そして、仕事の終わり間際に社長の携帯が鳴り出す。

「お! みんなの昼飯がそろそろ到着するころだ! 楽しみに待ってろよー!」

 社長は笑顔を振りまきながら電話を取ると、少しして驚きを示した後、電話を切った。

「えっと……向こうさんでトラブルがあって弁当が出来なくなったって謝罪だった」

 社員達が全員驚く。

「今からだと外食でこの人数もきついからわしが今から全員分の昼飯買ってくる!」

 社長が慌てて飛び出て昼飯を買いに行った。

 社員達が社長の帰りを待ち、しばらくすると社長が慌てて戻って来た。

「みんな! 昼飯を買って来たぞ!」

 そこにはカップ麺の赤いきつねと緑のたぬきが置かれていった。

「とりあえずスーパーで買える物を買って来た!」

「おー! 赤いきつねと緑のたぬきですか。 これはお湯の用意をしないとですね」

 そこで全員がどちらの味を選ぶかの話し合いになった。

「ここは赤いきつねですね! 赤いきつねが最高ですから!」

 ある女性社員が赤いきつねこそ最高と言っていた横で、ある男性社員が異論を唱える。

「いや! 緑のたぬきだな! 緑のたぬきが最高だ!」

 女性社員と男性社員が口論になり、どちらが最高かという話になっていってしまっている。

 そこで、社長が横に入り、

「待て待て! 味はそれぞれの好みがあるんだから押しつけはいかん! 昼飯はどうする?」

「「食べます!」」

 二人はそれぞれ食事を取り、

「私が今から赤いきつねの魅力に語ってやろうじゃないか!」

「それならこっちこそ緑のたぬきの魅力を語ってやろうではないか!」

 二人の会話に大丈夫かと社長が不安になっている。

「二人共、熱くなるのは良いけどケンカはしないでくれよ」

 二人が熱くなりながらどこかへ行っていく。

 社長はそれを見届けていた。


 そこから現在……。

「あなた凄い緑のたぬきの魅力語ってましたね。 懐かしいわね」

「君も凄い赤いきつねについて語っていたじゃないか。 お互い様だよ」

「けど、あの後凄かったですもんね。 社長達に結婚するって伝えたらみんな驚いた顔をして」

 嫁さんはクスクス笑いながら話している。

「まぁ、あの後に結婚するってなったら誰だって驚くって」

 そうこう話している間に赤いきつねと緑のたぬきの待ち時間も終わり、二人は食べようとしている。

「では、私は緑のたぬきを食べましょうか」

「え!?」

「だって緑のたぬきは最高って言ってたじゃないですか」

「だったら俺は赤いきつねを食べようかな。 ほら、君の言ってた最高と言ってたのをね」

「では、お互いの言ってた最高のをお互いに食べましょうか」

「そうだな。 お互いの言っている最高のを味わうとしましょうか」

 そうして二人はお互いの最高を味わいながら食事を楽しんだ。




 


 

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赤い嫁さんと緑の旦那さん トマトも柄 @lazily

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