第12話 出発前の話。

朝一番、ミチトはライブを見て「行きだけライブにも助けて貰おうかな」と言う。

正直ミチト1人でスカイタワーの制圧くらいはできる。

だが昨日金色、金竜からイブなら時間制限はあるが天空島で戦えてライブは戦えないという言葉が気になっていて機嫌が良くない。

ミチトがライブの機嫌を察して言うと「え?私にも仕事あるの!」と笑顔になる。


「うん。塔の制圧とヒュドラから念話水晶貰ってきたからこれはライブの分ね。万一スカイタワーがオーバーフローしたら俺達が戻るまでシヤ達第三騎士団を守ってくれるかな? 」

「うん!やるよ!頑張るね!」


昨日ミチトはザップを送りながらロキを王都に送るついでにヒュドラから念話水晶を落とす魔物の再生産を頼んでいた。

それにより出てきた四つ腕魔人から念話水晶を取ってきて、1つをライブに持たせる事にした。



再生産を頼んだ時、ボスモンスターのヒュドラは「真式様、我らもスカイタワーに赴きますが?」と言うとミチトはやや困った笑顔で「ううん。ありがとう。ヒュドラ達は少しでものんびり過ごしてよ」と返す。


「それでは念話水晶が必要ならばいくらでも言ってください。我らで調達してまいります」

「それもありがとう。俺も使ってしまうけどやはりこの力は世に出すべき力ではないね」

ミチトは先に貰った念話水晶を手にとって誰を見るでもなく言う。


この言葉にヒュドラが「は?」と聞き返す。


「昔の真式がどう思ったかはわからない。でもどのアイテムも世に出して良いものではないと思ったよ。争いの種になるし、念話水晶だと一斉蜂起に使えそうだからね」

「…真式様、かつての真式様も同じ事を言っていました。なので私が念話水晶を責任持って預かりました」


「ありがとうヒュドラ。なおのことゆっくりしてね」

そう言ってミチトはダンジョンに向けて移動をした。


そんな事があった事はライブには教えない。

ライブと言えば「昨日はアクィとの日でしょ?イチャイチャした?」と聞いてくる。


ミチトは肩を落として呆れ顔で「しないよ」と返すと「嘘だと怖いからね。アクィは私が聞くと教えてくれるんだよ?」と言ってミチトの顔を覗き込む。

ライブの目を見返しながらミチトは昨晩のやり取りを思い出す。

アクィは「私も行きたい」「死なないでよね」と一晩中言いながら抱きついてきてキスをせがんできた。

そして「メロには弟か妹が必要なんだから怪我なんかしないで帰ってきなさいよ。あとはどんどんメロとの歳の差が広がるから早く心を決めなさい」と言われたくらいだった。


この子供と言うのもミチトからすればいい迷惑で、リナとの子作りがうまく行かない以上、アクィとなんてもってのほかでそもそもアクィを妻にしようと思った事もない。

周りが勝手にミチトにアクィもくっつけようとしている。


ミチトは昨晩を思い浮かべながら「聞いても平気だよ」と言うとライブは色々と察して「むぅ、本当に何もしてないんだ。アクィ可哀想」と言う。


「可哀想ってまったく…」

ミチトは女性の考えはわからないと思いながら言葉を返した。



食後、出かける用意を済ませたミチトはリナの前に立つ。リナは少し悲しげな目をしながら優しい顔と声で「ミチト、気をつけてね」と言うとミチトは優しく嬉しさの滲む顔で微笑み返して「うん。リナさんも何かあったらすぐに教えてね」と言った。


「すぐにってスカイタワーと天空島はどうするの?」

「ほらそこは俺、器用貧乏だから何とかするからさ」


ミチトは照れくさそうに人差し指を天に向けてクルクルと回しながら笑う。


「まったく、ミチトってば昨日のうちに孤児院の子達に何日か留守にするから私をよろしくって言ったでしょ?今朝から皆が頑張るって言ってくれたわよ?」

「はい。どうしても心配です。王都の術人間達も呼び戻そうかな?」


そう言ってアレコレ考えるミチトを見てライブがうげーと言う顔で「…うわ、久々のバカマスだ」と言ってイブが頷きながら「本当、バカマスターですね」と言う。


呆れながら嬉しそうなリナは「ほら、気にせず行ってらっしゃい。私はミチトが無事ならそれで十分よ」と言って眩しい笑顔で微笑み抱えると「イブ、ミチトをよろしくね。ライブも仕事があるみたいだからがんばってね」と言ってライブ達をみてニコニコ顔でお願いをする。


「はい!マスターはお任せください!」

「うん!しっかりやってくるよ」

リナに任された事も嬉しいイブとライブはガッツポーズになる。



「じゃあ、行ってきます」

「行ってきます!」

「行ってくるね」


リナは頷いて手を振ってアクィは「ミチト、イブ、ライブ、気をつけてね」と言い、メロは「ママとお母さんはメロに任せてね!」と言う。

ミチトは見送られながらスカイタワーに転移をした。



ミチトが到着をするとスカイタワー前ではシヤとシーシーとイイヒートが何故か指揮者の感じで待ち構えていた。


その姿が気になったライブが「シヤ、出世?」と聞く。

シヤは困り顔で「ライブさん、違いますよ。昨日マスターと話したから皆が前にいろって言ったんです」と説明をする横ではイブがシーシーに「シーシーちゃん、シヤ君をありがとうございます」と話しかける。シーシーは少し照れ臭そうに「ううん。これしか出来ないから」と返事をする。

イブは正直な所、トウテでシヤを待つアメジストよりシヤに付き添って第三騎士団で頑張るシーシーの方を応援している。


ミチトは自分の術人間達のコミュニケーションを優しい眼差しで見た後で目の前で直立不動でミチトを待つイイヒート・ドデモに「イイヒートさん、動きは?」と確認をする。

イイヒートは真面目な顔で「スティエットさん。今の所はありません」と報告をする。


「じゃあ現状を説明するからここで1番偉いのは?」

「グローキさんです。呼びます」


イイヒートが第三騎士団のグローキを呼ぶと、ミチトは挨拶の後でスカイタワーはただの塔で本命は天に浮かぶ天空島だと説明をする。


グローキは真面目な顔で「では今から?」と聞く。


「はい。盃を見た感じまだ猶予があるからイブとライブ、後はシヤとシーシーとイイヒートさんで上を目指して根こそぎ魔物を倒したら俺とイブは天空島を目指します。その後は塔の外で待っててください。根こそぎ倒すのは出来るならオーバーフローまでの魔物の量を管理したいからです」


この説明に生唾を飲み込んだグローキが「はい。わかりました」と言って頷く。


「ライブは魔物の死骸を収納術でしまって終わったら王都に行って売ってきてよ」

「了解だよ。マスター沢山売れたら今度デートしようよ!」

ここでミチトは水を差さずに「わかったよ」と返事をする。


ライブの横でそれを聞いていたイブが「シーシーちゃんはシヤ君とデートしますか?」と聞く。シーシーは慌てて「え?イブさん!?」と言う。


それを見たミチトが「あ、シヤとシーシーで出かけたい?いいよ今度お金出すから行ってきなよ」と簡単に話してしまう。


「マスター!?」と言って驚くシーシーと「いいの?」と聞くシヤ。


遠慮ではなくキチンと要望を言えるシヤを可愛がっているミチトは嬉しそうに「うん。シヤはどこか行きたい所あるの?」と聞く。シヤは頷くと「ご飯」と言う。


「この前ウシローノにご馳走になったステーキサンドが美味しかったから一日中シーシーに食べさせたいんだ」


そう言ったシヤはシーシーを見ながら「シーシー相変わらず軽いんだよマスター」と告げ口をする。


その話を聞いて困ったシーシーが「シヤ、私もうガリガリじゃないよ?」と言って訂正しようとするのだがシヤは「でもまだシーシー軽いから」と言って引かない。


この話を聞いたミチトは深く頷いて「それは大事だねシヤ!」と言うとシヤもマスターが肯定してくれた喜びで「うん!」と言う。


シーシーだけは「ええぇぇぇ?」と言って困った顔をする。シーシーも推定だが12歳くらいなのでそろそろスタイルとかが気になるのでシヤに談判するのだがシヤは一歩も引かずにシーシーの腕を見て「ダメだ。細い…」と言っている。



その姿を見て微笑ましい気持ちになっているミチトにイイヒートが「なんか凄く余裕ですね?」と聞く。ミチトは笑顔で「まあこのくらいでしたら」と答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る