第11話 天から来た蒼き髪の乙女。
ロキがいい加減何の事なのかを知りたい気持ちから「ミチト君?」と聞く。
ミチトは「ラージポットは「迷宮に囚われた黒き乙女」、スカイタワーは「天から来た蒼き髪の乙女」なんですよ」と言った。
「迷宮に囚われた黒き乙女」も「天から来た蒼き髪の乙女」も古代の物語で伝記だった事はついこの前ミチトが知った事だった。
「美味しい果実を求めて天から降り立った蒼き髪の乙女に恋をした農家の男は天に帰った乙女に会う為にそびえ立つ塔を登って天の島にたどり着く。一度天に来たら帰れなくなると知っても天に来た男の愛を知った乙女は男と結ばれて幸せに暮らす話です」
ミチトの答えにようやく合点の言ったロキは「…ではスカイタワーは塔型のダンジョンではなく?」と聞くとミチトは「ええ、ダンジョン本体は天空島です。行ってみるまでどうなってるかわからないんですよね」と言った。
ここまで話を聞いていたリナが「ミチト!」と名を呼びながらミチトに駆け寄る。
ミチトは驚いた様子で「リナさん?どうしたの?」と言ってリナの肩を掴む。
リナは心配そうな顔で「だって天空島って所は行ったら帰れないって…」と言うとミチトは「天から来た蒼き髪の乙女」の本を呼び出して「俺には転移術あるし、それにこの本はキチンと天空島を見てきた男がマチダブに向けて手紙を届けているから帰れると思ってますよ」と説明をして安心させる。
そこで納得をしかけるリナだったが横で見ていたアクィが腕を組みながら「物語のラストだけその友達が作ったって考えにはならないわけ?」と言ってミチトを見る。
ミチトが少し困った顔で「アクィ…」と言った瞬間、ミチトの心情を察したリナが「あ、その顔。自分でもそんな気してたのに行く為に黙っていたでしょ?」と言う。
ミチトは困り笑顔で「…凄いやリナさん。バレました」と言って微笑む。
リナは微笑んで誤魔化されないぞと言う気持ちで「バレましたじゃない!」と珍しく怒る。
このやり取りにロキが「困りましたね」と言ってザップとミチトを見ながら言うと「まあそうなると仕方ない」と言ってミチトは金色を呼んで天空島について質問をする。
そもそもミチトはルールを設けていて、金色達に下手な質問はしない事にしていた。
ボーナスアイテムの内容やダンジョンの規模なんかも基本的に聞かないようにしていて、全て平等に救うと言う意志を持って質問を控えていた。
そのミチトが「ごめん金色、ダンジョンについて聞きたい」と呼べばすぐに現れて「真式様?」と聞いてくる。
ミチトが申し訳なさそうに「スカイタワー…天空島について聞きたいんだ」と言うと金色は嬉しそうに「おお、行かれますか!あの島からの景色は見事でございます。是非ともご堪能ください」と言う。
その事には返事をせずに「金色がラージポットのステイブル後に行ったのは天空島?でも北西の空に飛んだんだよね?」と聞くと金色が「あの島は周回しております。正午に塔の上に来ますがそれ以外は世界中を飛んでいます」と説明をする。
「あ、わかった。術で見えないのか」
「超上空という事もありますが認識としてはそうなります」
ここでリナが「金色!ミチトが天空島に行こうとしてるんだよ!でも行ったら帰ってこれないって!」と言うとこの状況に合点が行ったように「おお、妻殿はそれが心配なのだな?安心せよ。真式様ならば行ける」と言った。
この発言が気になったライブが「マスターなら?」と聞く。
金色は「うむ」と頷くと「行くだけなら緑の模式、お前にも可能だが戦闘となると桃の模式で時間制限有りならばだが可能だな」とライブとイブを見て言う。
ライブは不服そうで不思議そうに「え?私は無理でイブなら戦えるの?」と聞くと金色はライブの質問を嫌がることなく答えていく。
「うむ。上空は術の気が薄い。かつての真式様が島を空へ逃した時にそれが問題で多くの島民が術切れで苦しんだ。その結果天空島の民は変化術で適した身体に作り替えて貰ったが今度は地上では術の気が濃すぎて溺れるというか悪酔いをするようになる」
この話に合点の言ったアクィが「だから一度行くと帰れないって…」と確信を得たように言い、ライブが「それならなんでその乙女は降りてこれたの?」と聞く。
金色が「彼奴は元々術使い。どうしても家族に宝玉の名を冠した葡萄を食べさせてやりたくて変化術を使いながら降り立ったのだ」という説明にリナが「術使いなら何とかなるって話なのね」と言う。
「うむ。だが模式共に変化術はなぜか効かぬ。かつての真式様は魔水晶が体内にあるからだと申していた。まあどうしても行くとなればステイブルの後であれば高度も下がるしダンジョンとして島全体を覆う術が晴れて術の気もそれなりに濃くなる」
言われると納得はするがライブからすれば今行きたい訳で「…今行かないとダメなんだって」と言って困った顔をする。
今度は大人しく聞いていたメロが金色の手を取って「金色さん!メロは?メロはパパを助けたいよ!」と言うが金色は申し訳なさそうに「御息女殿はまだ若い。身体が出来上がる前に行かれるのはお勧めできませぬ」と言って説得するように説明をする。
「そんなぁ…」と言って悲しむメロをそのままにロキが「金色様、話をまとめるとミチト君ならば人の身で行けて戻ってこられるんですね?」と聞く。
この質問に金色は「うむ」と答える。
「それ以外ならば行けてイブさんとライブさん。ただ戦闘になるとライブさんは戦えないと」
「そうなるな」
金色の話が伝わってようやく皆が状況を判断した所でイブが手をあげながら前に出て「ならイブが行きます!イブが居ればリナさん達は安心ですよね?」と言うとリナは「…そうだね」と言いアクィも「確かに、ミチト1人で行かせるよりは安心だわ」と言った訳だがここでミチトが「危ないよイブ!何かあるかわからないんだよ?」と言ってイブを止めようとした。
この顔と言い方にピンときた女性陣達。
リナが「ミチト?」と言うと続けるようにライブが「マスター?」と聞き、メロまでもが「パパ?」と言う。
そしてアクィが「あなた危険性は理解していたのね?」と言って呆れる。
そうして4人からジト目で見られたミチトは脂汗を浮かべて「…あ…え…」と言ってキョロキョロと目を泳がせる。
リナ達はミチトの回答を待つことなくイブを見ると、リナが「イブ、お願いできる?」と言い、ライブが「マスターと少しならイチャイチャしていいからよろしく」と言う。
そしてイブの手を取ってメロが「イブお姉ちゃん!パパをお願い!」と言って締めるようにアクィが「そうね。イブ、頼んだわ」と言う。
これにイブはニコニコと嬉しそうに胸を張って「はい!イブに任せちゃってください!」と言うと横でミチトが「ええぇぇぇ…」と言って困った顔をする。
その横でロキが「ミチト君、そこは受け入れましょう」と言って金色は「真式様、その間この地の事は妾にお任せください」とミチトに何も言わせなかった。
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