第10話 スカイタワーの存在理由。
ミチトが天高く聳え立つ塔に到着をするとすぐに「マスター!」と呼ぶ声が聞こえる。
それは保護した術人間の1人シヤ。
シヤは生み出された貴族の下から脱走をして王都を目指した術人間。
その時の経験によって通常の術人間達にはない発想力や理解力、勘のよさなんかがある。
ミチトはシヤを見て「お、シヤ!凄いねすぐ気付いたね」と言って笑顔になる。
シヤも嬉しそうに「うん!訓練してるからかも」と言ってミチトに飛びつくと「ウシローノ達も褒めてくれるんだ!」と言う。
ミチトは「凄い。頑張ってるね」と言ってシヤを褒めて周りに集まった術人間達に声をかけながら「イイヒートさんは…いたいた」と言ってイイヒート・ドデモを見つけるとミチトが声をかけるより先に「ご無沙汰しておりますスティエットさん!」と言って敬礼をするイイヒート。
いきなり「どうも。とりあえず俺達との連絡窓口してね」と言われて困惑の中「は?はい!」と言うイイヒート。
イイヒートの返事に気をよくしたミチトは「じゃあこれ持って」と言って念話水晶を持たせる。
何だかわからないイイヒートは「これなんです?」とミチトに聞く。ミチトは「念話水晶ってアイテムです。試しにそれを持って王都のロキさんを呼ぶイメージしてください」と言うと聞きながら試していたイイヒートは「こうですか?」と言った後で「…わっ!?」と驚く。
この事で王都のロキと繋がった事を理解したミチトは「あ、繋がりましたね…ロキさんにこうやって連絡取ってください」と説明をした。
ロキに接続テストだったと説明をしたイイヒートは念話を終わらせるとミチトに「はい!」と返事をした。
ミチトは目の前のスカイタワーを見上げながらイイヒートに「さてと…これがスカイタワーか…。何階の塔なんですか?」と聞く。
イイヒートは聞かれることを考えていて「50階です」と即答をする。
「魔物は上層に行くごとに強化されていてラージポットと似た内容です」
聞きたい事を聞く前に説明するイイヒートに気をよくしたミチトはそのまま「ボーナスアイテムは?」と聞く。
イイヒートは困った顔で「…それが変なんです」と言う。思いがけない返事にミチトは「変?」と聞くとイイヒートが「15階のアイアンサラマンダー6匹が石の札を出すんですがなんの効果があるのかがわからないんです」と言って塔の15階付近を指さして言う。
ミチトも15階付近を見ているとイイヒートが「それと…」と言葉をつづけた。
「それと?」
「正午に消えてまたアイアンサラマンダーが出てくるんです」
ミチトなりに解釈をして「リセットされるアイテム…6匹の石の札…」と呟いているとイイヒートが困り顔で「その謎を解きたい連中が狩り続けて…」と言う。ミチトは納得したように頷きながら「それで盃が…。アイアンサラマンダーはある程度の冒険者達なら勝てるから…か…」と言ったところで塔を見てふと思い出した。
思い出した瞬間に「あ…」と言ったミチトを見てイイヒートが「スティエットさん?」と声をかける。ミチトは「あー…、俺この塔知ってるかも」と言うと「念話水晶使ってみるか…」と言って自分の念話水晶を握ってロキを呼び出す。
先程イイヒートが使った時もすぐにロキは反応をした。今回も同じ速度で王都に繋がったのがわかったミチトは「あー…、ロキさん?多分ですけどこれ知ってます。ザップさんの意見を聞きたいんですけど巻き込んで良いですか?」と聞く。
ザップはミチトの古代語と古代神聖語の兄弟子。そのザップを巻き込むと言う事にロキは「は?ザップ氏にお話を聞くのは構いませんが知ってるとは?」と聞く。
ミチトはロキの質問に答えずに「とりあえず一度そっちに行きますからロキさんがダカンまで付いてきてザップさんを借り受けてください」と言うとロキは「わかりました」と言った。
ミチトはロキとの話を終わらせるとイイヒートを見る。
「ひとまずスカイタワーは封鎖して冒険者の侵入は防いでください。ここがオーバーフローすると多分とんでもない騒ぎになります。盃が光る前に頂上目指さないとダメなはずなんです」
ミチトの言葉にイイヒートは敬礼をして「はい!お任せください!」と返事をした。
ミチトは横に居るシヤとシーシーを見て「シヤ、シーシーと2人で率先してイイヒートさんを助けて上げて」と指示を出す。2人は「うん」「わかりました」と気持ちのいい返事をするとミチトは「じゃあまた後で!」と言ってロキの元に転移し、ロキと共にダカンのザップを迎えに行く。
ザップ・ナーヨは今日もニコニコとトウテに連れてこられると「いつもいきなりだねスティエットは」と言って嬉しそうに笑う。
ロキはザップを見た後でミチトを見て「ミチト君?何故王都ではなくトウテに?」と聞く。ミチトは「王都で話したくないからですよ。ザップさん、先に言うと四つ腕魔神さんとヒュドラさんが新規で加わりました。でも今はロキさん達のせいで王都に住んでます」と言う。
言葉のとげを普段のザップならわかって察してくれるのだが古代語と古代神聖語を使える古代の人間が増えた事でザップは興奮状態になっていて「ウヒョーッ!ペンフレンドにはなってくれるかな?」と言ってミチトに詰め寄る。ミチトはそんなザップのブレない部分にホッとした気持ちになりながら「俺からも頼んでおきますよ」と言う。
ザップが勝手に盛り上がっている間にライブが近づいてきて「マスター?スカイタワーに行ったんだよね?どうだったの?」と聞き、横のイブも「大変なんですか?」と聞く。
ミチトは人差し指を天に向けながらクルクルと回して「まあ難物だよね」と言う。
「大変の度合いがラージポットとはまた別だけどラージポットクラスに厄介だと思うんだ」
この言葉にライブが「ステイブルまでの数字が大きいの?」と疑問を口にするとミチトは「それは行かないとわからないけど」と言いながら国営図書館から無断で予言の書を取り出す。
予言の書を開きながらロキに「ロキさん、予言の書にスカイタワーの記述が無いんです。ボーナスアイテムの記述もない」と言うとロキは頷いて「…はい。それは去年、ダンジョン管理の任に就いた時にザップ氏に訳本を作って貰い読みました」と返す。
ミチトは頷くと「代わりにこれ、このダンジョンはどうするつもりでした?」と聞くと珍しくイラスト付きのページで、ロキはこの絵に見覚えがあったので「これは天空島ですか?」と聞く。
ミチトは「ええ」と返した後でザップを見て「先にザップさんと話そう。ザップさん、スカイタワーは地上50階の塔型ダンジョンでした」と言うとザップは「50階?かなりの高さだよね?ここから距離はあるのかい?方角は?」と聞く。
ミチトは南を指さして「南ですが見えませんよ。多分20階から先くらいには何らかの術がかかっていて近付かないと見えないんです」と説明をする。
そのまま不思議そうな顔をするザップに向かって「ボーナスアイテムは正直不明。15階のアイアンサラマンダーが6枚の石札を落とします。イイヒートさんの話だと正午には消え去って代わりにアイアンサラマンダーが復活します」と言う。
ザップは「…石の札?塔?近付かないと見えない?」と聞き返す。
ミチトは「はい」と言って頷いた後ザップを見て「そこに塔なんてあったのか?彼女を追った私は目の前にそびえ立つ塔の高さに言葉を失った」と突然言う。
ザップも聞き返すことなく「中には巨大な鉄の蛇が塔を守っていた。1人では勝ち目がなく腕自慢で親友のマチダブが私を助けてくれた」と言う。
「マスター?」
「ザップ?」
イブとライブが不思議そうにミチトとザップを見るが2人はイブとライブには反応せずに会話を続ける。
「マチダブが力を奮ってくれて鉄の蛇から石の通行証を手に入れた私はようやく塔の最上階、祭壇にたどり着く」
「祭壇で何をして良いのか悩んでいる私の耳に彼女の言葉が聞こえた気がした。「祭壇に石の札を捧げて!正午で石の札は効力を失う…」と、私は慌てて祭壇に石の札を捧げた」
お互いスラスラと言葉が出てくる。
それをロキ達は不思議そうに見る事しか出来ない。
「そこに彼女の声がまた聞こえた。「唱えて「我が身を捧げる。天の島へ誘え」と…」。私は言葉通りに唱えた。すると身体は光に包まれて天高く舞い上がる」
「この塔の最上階は高い壁に囲われていても天井のない理由が今わかった。ここは天への入口。天の島へ最も近い場所なんだ」
いい加減心配になったリナが「ミチト?」と聞き、その横のアクィが「何の話?」と言うとアクィに抱かされていたメロが「パパとザップお兄さん、お勉強の先生みたい」と言った。
ミチトはリナ達の問いかけにも答えずにザップを見て「…やっぱりアレですよね?」と聞く。ザップは紅潮した顔で「だろうねスティエット!羨ましい!僕も行けるかな?」と聞く。
ミチトの「ステイブルした後で安全な所ならですよ」と言うとザップは今すぐに何とかするんだと言う意味を込めて「スティエット!」とミチトを呼ぶ。
ミチトが嬉しそうに「わかりました。頑張ります」と言って会話が終わる。
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