第9話 王都が怯えるミチトの話。

ミチトは器用貧乏で戦いもできるがヒッソリと暮らしたい。

この大鍋亭で家族と暮らせればそれでいい。

それを曲げてダンジョン攻略をするのは1000年前にいた無限術人間真式が生み出した念話水晶などのアイテムを後世に残してくれる為にダンジョンと一体化してその身を魔物に変えてくれた金色達の為である。


そんなミチトは自棄ぎみに「来ましたよー」と言ってロキの書斎の扉を開く。

ロキは同伴のヨシを見て「おや、ヨシも来たのですね」と言う。


ロキの書斎に入るとそこには貴族の重鎮達も居てモバテ、アプラクサス、シックが渋い表情でミチトを見る。


ミチトは未だ不機嫌アピールでツンとした表情をするとモバテとロキが「済まなかったよ」「申し訳ありません」と言って深々と頭を下げると「俺が怒ってるのは金色達の事ですからね?いちいちステイブルする度に王様にまで会う意味がわかりません。中には嫌々会う人も出てくるから嫌がったら王様が我慢してください」とミチトが怒りをあらわにしながら言う。


ここぞとミチトは「後は有事の際は戦ってくれとかもダメですからね?」と釘を刺すとモバテが「それは金色様達から…」と返すのだがミチトは「ダメです」と言い切った。


「わかったよ。そうならない様に言葉を運ぶ様にする。それにしても相当機嫌悪かったんだな。イブさんの後がリナさんでその後がサルバン嬢とメロさんを地下喫茶に連れて行くなんてな」


ここでシックとアプラクサスが「お陰で怒りの程が伺えたよ」「本当です。知らせを貰った時には青くなりました」と言ってミチトを見る。


王都では自棄になったミチトと普段しない行動をするミチトはヤバい。

これに尽きる。

約1年前に保護をした術人間達の願いでミチトはきっと神様だと信じていた子達の為に絶対に普段ならやらない行動に出て王都に全ての術人間を集めて絶大な力を持って色街の暗部に切り込んでしまった。

あれは民の為になったから不問どころか王自ら謝辞と爵位を授けたいと言っていたが暴力に出られてはどうすることも出来ない。



ヨシが呆れ笑いで「まあミチト君の機嫌は大半直ってますよ」と言う。


ロキが「ヨシ?」と聞くとヨシは渋い表情で「リブートストーリーとファーストテイクの魔物の素材を売ってきました」と言う。


ミチトはスッキリとした顔になって「いやあ、横に倉庫を作ってくれたじゃないですか?あれがパンパンになりました!」と言って笑う。


「…もしかして合わせて約4000体の魔物の死骸を?」

「はい!スッキリしましたよ」


シックとアプラクサスが「…出せた事がかい?」「素材屋の青くなる顔がですか?」と聞くのだがミチトは笑顔で「スッキリしましたよ!」としか言わない。

横で見ているヨシは「はぁ…まったく」と言って呆れるばかりだった。


「それでは説明させてください」と言って始まったロキの説明は、本来ならセルース隊とスード隊が戻り、通常通りの10日の休みを経てからラージポットから南西に位置するスカイタワーに赴く事だったのだが、念の為にとスード隊が着くまでの間に向かわせておいた第三騎士団から、スカイタワーの生まれた地を治めていた貴族ジェリー・ジャンに緊急の伝令を王都に向けて出させた事。

その伝令の内容が盃の水位が9割まで溜まっていた事が書かれていた。


「スカイタワーは元々リミール派のジャン領にあった事で約9年放置されています。冒険者も多数入っていた様ですがボーナスアイテムの話も出てきません」


ここまでの説明に「何でもっと早く言ってくれないんですか?」と言うミチトに「…怒って引きこもっていたのは誰だって話だよなミチト君?」とモバテが言う。


「あー……」としか言えないミチトに「まあそれはお互い様です」とロキが言い「ミチト君、スカイタワーに行っていただけますね?」と続けた。


「ええ、とりあえずオーバーフローが始まればステイブルします。そうでなければまずは状況を確認します」


「よろしくお願いします。この念話水晶が思いの外有益なアイテムなのでこちらから連絡します」


「あ、これどうやって使うんですか?」

「話す相手を意識して念話水晶を握り相手も念話水晶を持っていると光ります。そうしたら話しかけてください」


ミチトが試すとロキの持つ念話水晶が光る。

使い方と有用性がわかったミチトは「予備ってありますか?有れば窓口は誰がいいだろう?イイヒートさんに任せても良いですか?」と聞くとシックはロキやアプラクサスが答える前に「構わんよ」と言う。

ミチトは「よし…、方角は?」と聞くとロキが「南西です」と言った。


「遠視術!……見えた…あ、シヤが居るのか。おーい、シヤー!シヤは相変わらず凄いね。キチンと俺に気付いたね。今行くからイイヒートさんを見つけておいてくれる?よろしく」


この会話にモバテが「見えたのかい?」と聞くとミチトが「はい。あ、ヨシさんのお迎えはイブに頼んで…と、じゃあ行ってきます!転移術!」と言ってロキの書斎を後にした。

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