スカイタワー。

第8話 不機嫌と念話水晶。

ミチトがファーストテイクをステイブルして5日目になる。

その間に王都から戻った金色から四つ腕達はひとまず王都に馴染んでみようと言う話になって立派な邸宅を貰った事を教えられる。


ミチトからすれば今回の不満の原因は全てそこで、1000年振りに現世にようやく戻れたのに、魔物が溢れない様にするダンジョンの管理だけでも申し訳ない気持ちになるのに、何故謁見が必要なのか、何故王都に住まわされるのか。

更に王都に置かれると言うのは抱え込みになるし、逆にこのトウテのあるディヴァント領に住めない事が憎らしくて堪らない。ディヴァント領なら手厚く衣食住を約束できる。


金色に関しては最初にミチトが何も知らないまま確証のない話として救い出したから好き勝手出来た話だが、ダンジョン管理や生還後の生活に関しての話が決まってから先のボスモンスター達はそうはいかなかった。

王の人となりは知らないが王都が変化術を持つ1000年前の人達を抱え込んで戦力にするつもりではないかと邪推してしまう。


金色の次に救い出したプラチナサラマンダーの時には謁見が半義務化したことに怒るミチトをリナが「平気だよ。ロキ様達のことをもう少し信じようよ」と宥めて何とかなっていた。


5日目の昼頃、王都の伝令兵が早馬で駆けてきてディヴァント邸に1つの荷物と書状を置いていく。


書状は当主ロウアン・ディヴァントに宛てたもので荷物はミチト宛。

ロウアン達がその荷物を持ってトウテまでくると「ミチト君、王都から荷物だよ」と言った。


ミチトはリナ特製のスープパスタを食べて居てリナ達はミチト特製のミートソースのパスタに舌鼓を打っていた。


ミチトはロウアンが相手でも「食べ終わるまで待てますか?」と言って一度は顔を見たがすぐにパスタに視線を戻す。この行動に同伴のヨシが呆れ口調で「ミチト君、君はまだ機嫌が斜めなんですか?」とミチトに聞く。


アクィが保護者顔で「ずっとなんですよヨシ様」と言うとヨシは「はぁ…」とため息をつくと「連続二ヶ所のオーバーフローは君と兄上で決めた事ではないですか?何が不満なんですか?」と聞く。


「四つ腕達の処遇ですよ。何で王都に住まわすんですか?」

ミチトの不満が聞けたヨシは「それでしたか…」と言う。


「1000年前の人達が現代に蘇ったと聞けば諸外国から接触を試みられます」

ミチトは「それは俺が寄り付く虫を殺せば良くないですか?」と即答をする。


ヨシは普段のミチトが言わない言葉に不満の程を理解したうえで「…無差別に手当たり次第殺せば外交問題になります。ミチト君1人で戦争をしますか?しませんよね?1人で万の軍勢と戦いますか?」と言った後で青い顔で「…出来そうですけど…」と言う。


「なので王都で身柄を保護しています」と言ったヨシにロウアンが「それに金色様も言っていたよ?ミチト君が保護した術人間の子供達も非常に懐いていて、騎士団や治癒院での仕事についていく自信のない子達を四つ腕様達の所でマナー講習から読み書きや計算の勉強なんかをさせていると」と言う。


ミチトは愕然とした顔で「…知らなかった」と言ってヨシとロウアンを見るとヨシはツンとした顔で「聞かなかったの間違いでしょう。金色様は取り付く島もなくて話せなかったと言っていましたよ」と返す。


この会話で幾分か冷静になったミチトがフォークを置いて「…それで?」と聞く。


「詳しくは書かれていなかったが緊急性の高い話で荷物を早急にミチト君に渡して欲しいとロキから書状を渡されたんだ」


冷静にはなれても地下喫茶の件でロキの名を聞くと憎々しさの蘇るミチトはぶつくさ言いながら荷物を開けると中身は先日の念話水晶だった。


「念話水晶だ…」と言うと話だけ聞いていていたヨシが「これが金色様の言っていた」と言って念話水晶を眺める。


「何がしたいんだろう?」と言いながらミチトが念話水晶を手に取ると「ヴン」という音と共に念話水晶が薄紫色の光を放つ。


ミチトが「動いた?」と驚くと「ミチト君!ミチト君!」と言うロキの声が聞こえてくる。


ミチトは努めて塩対応で「ああ、ロキさんですか。何ですか?」と言うと「…色々と謝りますので今すぐ王都まで来てください」とロキが言う。

王都に行きたくないミチトは「まずここで何があったかを説明してください」と言うと「…スカイタワーの盃が手に入りました!ほぼ満水です!」と言われた。


「はぁ?スカイタワーに集中する為にバースから時間が過ぎていてオーバーフローの近かったリブートストーリーとファーストテイクを同時攻略して皆でスカイタワーに専念する話だったのに?」


今回、リブートストーリーとファーストテイクを同時攻略したのは生まれて10年に近づいていたリブートストーリーとファーストテイクを自身のタイミングでオーバーフローさせてしまってスードとセルース達でスカイタワー周辺を囲って魔物の流出を防ごうというものだった。

それなのに二箇所同時ではなく三箇所同時だったことに驚くミチトに「ですから一度来てください!」とロキが言った。


最悪今すぐにオーバーフローが始まっても何とかできる自信のあったミチトは「…わかりましたよ。リナさんのご飯食べたら行きます」と言った。


ミチトが念話水晶から手を離してロウアンとヨシに「俺特製ミートソース食べます?ヨシさんは王都まで来てください」と言う。


2人ともいただくよと言って着席するとミチトがパスタが出す。

食べたパスタはとても美味しく喜びが顔に出たのだろう。ミチトはその表情を見逃さずにニコニコと「ディヴァントのトマトはミートソース向きの甘みがちょうど良い品種ですよね」と言った。

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