第4話 王都とロキ・ディヴァント。

ミチト達がダンジョンの外に出るとスードが「終わったなミチト」と言って近づいてくる。

ミチトは「はい。ありがとうございました」と言ってスードと握手をする。


スードは横に居るイブを見て「イブも連れてきて、ここそんなに大変だったのか?」と不思議そうな顔をする。イブとミチトが出てくると言うのはスードからしたら非常事態に近い。


ミチトがバツが悪そうに「いえ…」と言ったところでイブが「イブが自分からついて来ました!昨日セルースさんの所にライブがついて行ったから順番です!」と言う。

スードは納得の行った表情で「成る程…、リナもミチト1人に行かせたくないから助かってるんだな」と言って笑う。


ミチトがバツの悪い表情のまま「俺、そんなに信用無いですかね?」と漏らすとスードはあきれ顔で「ラージポットで何やらかしたか思い出してから言えって」と言って笑った。


ラージポットのオーバーフロー。

ミチトは無限術人間真式として力の限りを奮った。

単騎で8000もの魔物を相手にし、人的被害を出さずにステイブルを成し遂げ、更にラージポットの管理を任されていたディヴァント家に害なす連中を相手にした。

2日かけてそれを成したミチトはその後別の事情があったとは言え10日以上昏睡をした。


「ええぇぇぇ…、アレはオーバーフロー自体はやり切ったのに…。それにあの時よりも術量増えたから平気なんだけどなぁ」

「んなもんはリナに言えって。そんでそっちの三つ首の蛇…ヒュドラがボスモンスターか?」


「はい」と言ったミチトはヒュドラを見て「ヒュドラ、人の身に戻らないの?」と聞くとヒュドラは困ったような声で「…戻ると裸なので…」と言う。


「成る程。収納術に服をしまうとかは?」

「私、術は変化術とヒールしか…」


このやり取りで人の身に戻れない理由がわかったミチトは「スードさん」と言うとスードも「おう、予備の服でいいよな?」と言って馬車に戻る。


スードが服を渡すと30過ぎの男の姿に戻るヒュドラは「ありがとうございます」と礼を言う。


「いいよ。んでステイブルは幾つにしていてボーナスアイテムは何だったんだ?」

「ステイブルは2000です。ボーナスアイテムはこれです」

ヒュドラはそういうと水晶玉を見せてくる。


スードは「やっぱりその魔水晶か…」と言ってヒュドラが出したモノと同じ2つの水晶玉を出す。


「でもこれ、ニュースターの魔術師達が術を込められないってボヤいていたんだよ」

スードが不良品を疑うように話すと見ていたミチトが「ん?スードさん、これ魔水晶じゃないですよ。術の気が中に入ってます」と言う。それを聞いていたヒュドラは「流石は真式様」と嬉しそうに言う。


「そうです、これは念話水晶です。念じると遠く離れた相手とも会話が可能になります。ただ対にして初めて一つなので1つでは効果を示しません」

ミチトは初見の術の名前に反応して「念話…、そういう術があるの?」と聞くとヒュドラは頷いて「はい。口から言葉を発せずに話せます」と言う。


「あ…金色が前に使ったやつかな?」

「はい。彼女は優れた術使いでしたから」


ミチトがわざと金竜を金色と呼んで名前を話さない事を察したヒュドラも彼女と言う呼び方をした。


「あ、ありがとう。皆千年前に名前を置いて来たと言っているんだ。だからあなたもヒュドラで呼びますね」

この言葉にヒュドラは頭を下げて「御意」と言う。


この場でミチトがやる事はなくなったので「スードさん、後は皆とトウテまで頼みますね」と言うとスードも「おう。のんびり帰るわ」と言って笑う。


ミチトが「イブ、帰るよ」と呼ぶといつの間にかスードの馬車に言って馬と触れあっていたイブは「了解です!オンマ!またトウテで会いましょう!」とスード隊の馬に声をかけると皆に手を振ってミチトの元に戻る。


「ヒュドラ、ついて来て」

「御意」


ミチトはヒュドラとイブを連れて王都に転移する。

急に平原から街に移動したヒュドラが「ここは?」と聞く。


ミチトが「今の王都。それでここがダンジョン管理を任された俺の仲間の住む家。ひとまずファーストテイクがステイブルした事を報告するんだよ」と言いながら目の前の邸宅に入っていく。中に入ると使用人たちが「お帰りなさいませミチト様、イブ様」と挨拶をしてくる。


別にミチトの家ではないのでミチトは「お帰りなさいって…」と呆れるように言い、イブは「はい!ただいま戻りました!」と元気よく挨拶をする。


執事の1人が「ミチト様、そちらの方が?」と確認をしてくる。

ミチトは「はい。ロキさん呼んでください。後は服をお願いします」と言うと別の使用人に連れられてヒュドラは別室に行き、ミチトは応接室で待つと執事が呼んだロキ・ディヴァントがすぐに来る。


ロキは笑顔で現れて「昨日ぶりですねミチト君。お疲れ様でした」と言うと横のイブに「今日はイブさんがミチト君を助けてくれたのですね」と聞く。

イブは手をあげて「はい!」と元気よく答える。


バツが悪い表情のミチトは「スードさんに言わせると俺は信用無いんですって」と言うと全てを察したロキは「リナは心配しているんですよ」と言って微笑む。


「聞くまでも無いのですが首尾は?」

「ファーストテイクは無事にステイブル。ヒュドラさんは服の持ち合わせが無い人なので使用人さんと着替えに行きました」


「了解です。ボーナスアイテムは?」

「これです」


ミチトが取り出した念話水晶を見てロキは「魔水晶?」と聞く。

ミチトは首を横に振って「念話水晶と言うそうです。口を使わずに話すアイテムで前にラージポットのオーバーフロー中に金色が使っていた奴ですね。1つでは効果を示さないそうです」と説明をするとロキは「…成る程、それでファーストテイクは見放されていたのですね」と今日までファーストテイクが半ば放置されていた事を理解した。



ミチトが周囲を見回して「ロキさん、金色と四つ腕さんは?」と聞く。

金色はラージポットのボスモンスターの金竜で四つ腕は昨日ステイブルしたリブートストーリーの四つ腕魔神の事を指している。


「モバテ殿の所でお茶会です」

「あはは…後でモバテさんに後で何か言われそう」

ロキが「ですね」と返した所でヒュドラが着替えを済ませて応接室に入ってくる。


「ヒュドラ、紹介するから覚えて。こちらは王都でダンジョン管理を任されたロキ・ディヴァントさん。俺の仲間で家族。金色や四つ腕さん達を面倒見てくれてる人でヒュドラもロキさんと仲良くするんだ」

この説明にヒュドラは「御意」と返事をするとロキを見て「ロキ殿、私はヒュドラ。名は皆と同じく千年前に置いてきました」と自己紹介をした。


「ヒュドラ様、はじめましてロキ・ディヴァントです。ファーストテイクを御守りくださりありがとうございました。早速で申し訳ありませんがダンジョンの話をさせてください」

ここでロキとヒュドラは形式的にファーストテイクの管理をヒュドラに任せてモンスターがダンジョン外に溢れそうな時は一声かける事を頼み、問題が無ければ王都やミチトの住むディヴァント領での生活を提供する話をした。

ヒュドラは手厚い話に感謝を告げる。

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