第??話 莠コ縺ョ蟷ク繧サ

 孤児院で晩ごはんを食べ終わって自分の部屋で勉強をしている。私は現在10歳。小学校五年生。小学生だから宿題がある。「いい子」になるために宿題はちゃんとやらないと。「神様」である三珠様もそれを望んでいるよね。与えられた使命は真っ当しなさい。これ、教祖様に教えてもらったこと。これを果たせばちゃんと私は「いい子」になれると言われたからちゃんと頑張るの。

 「…。うん、宿題終わった!」

 ちゃんと丸付けもしたし、これで学校の先生にも褒められるよね、三者面談で。先生…あ、孤児院の先生ね、その先生に聞いたんだけど…。私の両親は6歳の頃に火事で死んでしまったと聞いている。私はとある女性によって助け出されたみたい。…実はその時の記憶ははっきりとしていない。先生曰く、思い出したくない光景だから心を守るために脳が記憶を封印していると…。人間は誰しも思い出したくない光景を持っているという。それを思い出すことで心が壊れてしまうかもしれないから脳が守るために気づかれずに封印したんだって。…私の脳みそに感謝しなきゃね。

 「お風呂に入ろっと」

 お風呂で汗を流したい…今日、休みなのに全速力で走ったから…汗かいているんだよね。汗かいている時はお風呂や温泉で体を清めるとか教祖様言っていたような気がする。…気がするじゃだめ!ちゃんと人の話を聞いておかないと!教祖様のありがたい教えも全部覚えなきゃ…人生で役に立つかもしれないんだから。

 

 「ふぃ〜…」

 孤児院は部屋ごとにお風呂があるから誰にも自分の体を見られずに済むということ。…同居人とはいえど知らない誰かではあるから自分の体を見られるというのは恥ずかしいんだよね。私まだまだ子供な体つきだし…。先生みたいに美人になりたい!「いい子」になれば先生みたいに美人さんになれるかなぁ?きっと「神様」がそうしてくれる!もっともっと「いい子」にしていれば!

 「…お風呂入ったけど…次はどうしよう」

 遊ぼうかなぁ…掃除はもうしたから…宿題も終わらせた。皿洗いも食事も…あぁ、洗濯も…先生が終わらせてくれた。だからもう遊んでもいいかな?誰か困っている人がいれば手伝ってあげないと。というか助けてあげないと。人助けは人を救うんだって教祖様が教えてくれたから。…あの「ヒト」のことも救えるのかな。なんだか悲しい目をしていたし…。…誰も助けてくれないという諦めの感情が…見えたような気がするから。

 「蛍ちゃん。入ってもいいかな?」

 あれ?この声…メイさん?何か話でもあるのかな?…私に対して?それなら前にあった時に言えばよかったのに…。なんで今なんだろ?そんな事…気にしなくてもいいか。細かいこと気にしていたら前に進めないときもあるから。

 「ごめんね。急に」

 「どうしたんですか?いきなり入ってきて…」

 「ちょっと蛍ちゃんに聞きたい事が出来てね。それで会いに来たということ」

 メイさんが子供の私に聞きたいこと?…なんだろう?大人が子供に聞くなんて…珍しい状況もあるんだなぁ…。

 「…君にとっての幸せって何?」

 「…幸せ?」

 なんだか変な質問。幸せのことなら大人であるメイさんのほうが詳しく知っていそうなのに…なんで子供の私に?「子供」だから聞くってわけじゃないかも。「私」だから聞くのかも。

 「…私じゃないとだめなんですか?」

 「そうだよ」

 子供だから聞くってわけじゃない。私だから聞く…それなら答えてないといけない。…怪しくない質問にはできるだけ答えてと教祖様から言われているから。

 「…ただみんなが平等に愛されるのを見ているだけで私は幸せです」

 「君自身が不幸になっても?」

 「…。…そういうわけではないです。私も幸せ、みんなも幸せ…そういうのが私の幸せです。みんなだけが幸せだと私…嫉妬してしまいそうですから」

 幸せに嫉妬してはいけない。だけど幸せに嫉妬する「ヒト」は少なからずいるという。その「ヒト」は愛に飢えていると教祖様から聞いたことがある。愛されていないから幸せな「人」に対して嫉妬してしまう。羨ましいから、自分もああなりたいって思っているから。…だからみんな平等に愛されていれば私は幸せなんです。

 「…そうだね。君は根っこからの善良な人形だね」

 「人形?」

 「そのままの意味だよ。やっぱり「彼」と似ているんだね。そこはさすが血縁関係者と言いたいところだよ」

 血縁関係者…?私に血の繋がっている家族なんていないはずだけど…。

 「それじゃあ僕の聞きたいことはここまでだよ。最後までありがとうね」

 「え?…あ、はい…」


 血縁関係者…もし私と本当に血が繋がっている誰かがこの世界にいるなら…一緒にいたい。私、もう家族がいないから…その「ヒト」が唯一の…家族になるよね。



 「…お叱り?」

 「干渉しすぎだって。だから…」

 「少々罰が必要だってことだ」

 「あ…」

 「不干渉でいてくれと言ったのに…君たちは少しでも干渉したよな?そのせいで記録に少々の不具合が起きているのだが」

 「ごめんなさい…次は干渉しません…」

 「あの二人には極力関わるな。次不具合が起きたら文字化けを全て解読して制作しないといけないから、妻が死ぬ」

 「流石にそれだとだめね。記録係の役目を持っているのだから。まぁ、私達だけではないのだけど」

 「ところで不具合率は?」

 「タイトルに少々文字化けがあるくらいだな。物語の運命に変わりはなかったからこれぐらいで済んだみたいだ。むしろこれの方が面白みがあるかもな?」

 「それなら」

 「干渉していいという理由にはならないからな」

 「すびばぜん…」

 「とりあえずこれから記録係の仕事は続けてよし。処罰は記録が終わり次第だ」

 「うん」

 「それじゃあ僕は創作場に戻るから」

 「お疲れ様〜」


 「…この世界の奴らから見たら僕達は「神様」なのかもな。ま、実際「神様」に近い存在なわけだけど…」

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