第48話
凛に与える罰。
正直最初はこういう状況なので、エッチなものにしようと思っていた。
だが、もうすでに何処かで満足してしまった自分がいる。
俺の脳内会議では釈放が優勢だった。
「ん〜……」
彼女はあれからずっと正座をして待っている。
下着姿のままなのに、俺が落ち着いてしまったせいで今はあまり興奮しなくなった。
もう、罰とかどうでも良くて凛と一緒に居られればどうでも良くなっていた。
「そうだ……!」
あるアイデアが浮かんだ。
多分これは彼女にとっても嬉しい罰。
この状況であれば凛は絶対断らないだろう。
この状況でなくても断らないだろうけど、行く理由にはなる。
そんな罰を彼女に与える。
「決まったよ、凛」
「何すれば……いい……?」
少し緊張しつつも若干頬を高揚させ凛が訪ねる。
でもこれから与える罰は凛の想像、その斜め上だろう。
「あのさ……」
罰を与えるだけでこれは恥ずかしがるものではない。
もっと淡々と言えるはずだ。
彼女がこっちをじっと見ているのが俺に余計な恥ずかしさを覚えさせる。
「俺と……花火大会行ってほしい……」
実質デートのお誘い。
今まで受け身だった気がするが、こうでもしないと言えない気がした。
凛にとっては予想外のことだったのだろう。
驚いた表情のまま固まっている。
「え……いい……の? そんなので……」
「ああ……」
彼女はまだ信じられないといった表情でこちらを見ている。
だんだん状況を理解し始めると、何かを口ごもりだした。
「ちょっ……!? 大丈夫……!?」
気づくと凛の目には涙が浮かんでいた。
何かまずいことを言っただろうか、そんあ覚えはない。
でも、彼女が泣いているということは俺が何かをやらかした可能性もある。
そんあ俺の不安を取り除いたのは凛の表情だった。
「ありがとう……海斗……」
凛は指で涙を払いながらそう言った。
泣いているのに笑っている。
彼女は正座をしていたが、再び姿勢を正すと、深く頭を下げる。
「私も……海斗と花火……行きたい。だからこちらこそ……宜しくお願いします」
たかがデート一つのお誘い。
されど、デート一つのお誘いだ。
最初から凛の返答は大体わかっていたというものの、安堵からか体の力が抜けていくのを感じた。
「良かった……」
気の抜けたような声が出てしまう。
でも、それくらいの達成感があった。
彼女は膝で立ち上がると、俺に近づきゆっくり抱擁する。
俺も反射的に彼女を抱き締めていた。
「海斗……私になんでも言うこと聞かせられたのに……こんなの……行く以外の選択肢ないじゃん……」
「こうでもしないと俺が誘えないからさ……」
彼女と抱き合いながら喜びを分け合う。
それにくるであろうイベントに胸を膨らませる。
ひとしきり抱き締め合うと、二人でリビングへと向かった。
ようやく朝ごはんの時間だ。
「朝ご飯作るからちょっと待っててね」
凛はベッドで寝ていた時の姿のままエプロンをつけるとテキパキと朝食を作り始めた。
エプロンは薄いピンクのような色をしているのに、下着やソックスは艶美な黒。
その不釣り合いさのどこかがエロく感じる。
「あ、海斗〜先、シャワー浴びとく?」
彼女がキッチンからそう叫んだ。
たしかに俺の汗もそうだが、凛の唾液やなんやらでものすごくベドベトする。
俺は彼女が料理をしている間に体を洗うことにした。
「ふぅ……」
熱いお湯が伝っていく感覚がこの上なく心地よい。
泡立てた泡を体に伸ばしていると、ふと寝起きのことが頭に浮かんだ。
「凛……俺でオナって……」
あんなに俺が使われていたとは意外だった。
何でやっているか興味はあまりなかったが、あそこまで暴露されると逆に意識せざるを得ない。
それに寝ている間に半分襲われているような状況。
夜這いならぬ朝這いがなぜ起きたのかが気になった。
「もしかして俺……匂うのかな……」
俺だって仮にも男子高校生。
自分の体臭が気になる時だってある。
でも、自分の匂いってのは己自身ではわからないものだし、他人だから興奮できものだろう。
「まぁ……汗だくで寝たから……しょうがないよな……」
体に纏った泡を一気に流すと、気持ち悪い感触は消えて気分までさっぱりする。
少しシャワーを浴びて温まったら出ようと思っていると、すりガラスの向こうに誰かの気配を感じた。
もちろん凛しかいないだろう。
シャワーの音で足音も聞こえず、すりガラスでシルエットくらいしか分からないが、何かを探っているような様子だった。
「何をしているんだ……?」
俺は気づかないフリをしてシャワーを浴び続ける、
外にいる人物は何か獲物を見つけたのか、しゃがみ込んだまま動かない。
「そろそろ……いいかな……」
俺は意を決してシャワーを止め、急いで浴室から飛び出す。
そして、そこにいた人物はだらしない顔をした凛だった。
俺のさっきまで履いていた下着を手に取り匂いを嗅いでる。
「凛……?」
あの時期待していたのだろうか、お仕置きをまるで求めているかのような上目遣いで、彼女は俺を見上げているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます