第42話
凛を追いかけ、脱衣室へと入る。
しかし、彼女はなかなか風呂場に入ろうとはしなかった。
「凛、なんで入らないの?」
よっぽど汗の香りを嗅がれたのが嫌だったのか、彼女は首を振り
「先入ってて」
と言って出ていってしまった。
「先入ったほうが汗を早く流せるのに……」
彼女の行動に違和感を覚えつつ俺は扉を開け、風呂場の中へ入る。
もうすでに中は暖かくなっており、もやがかかっている。
天井に付いている変わった機械が音をたてて動いており、そこから水蒸気のようなものが出ていた。
「なんだろう……」
はじめての環境に少し戸惑いつつも俺は体をシャワーで流す。
湯船には蓋がしてあるので今開けるのもどうかと思った。
「ええっと……これか……」
シャンプーのボトルらしいものを手に取る。
よくあるボトルよりデザインが凝っており、半透明になっているそのボトルにはこれまた透明な液体が入っていた。
ヘッドを二回押すとふわっといい香りのするものが出てきた。
その匂いはどこか嗅ぎ慣れた匂い、さっきも嗅いだ気がする。
「凛の匂い……」
どうやらこのシャンプーは彼女が使っているものらしい。
ボトルの形も女性向けとしたら辻褄が合った。
「女もののシャンプーってこんな匂いなのか……な……」
女子の匂いなんてそうそう嗅がないし、嗅げるわけがない。
俺の知っている女性の匂いなんて母か凛くらいだ。
俺はシャンプーを泡立てて頭に馴染ませる。
上の方から凛の匂いが降りてきていて、まだ興奮の冷めない体が素直に反応する。
「なんか変なことばっかり考える……」
凛との今までの行為を
思い出すだけで興奮してしまう上に次のことまで考えてしまう。
俺はシャワーを頭からかけ泡を落とす。
お湯が伝う感覚が心地よかった。
「ボディーソープどれだよ……」
何本かある容器の小さい文字で書かれた英語を必死に読む。
わかりにくいものもあって覚えないと大変だ。
ようやく見つけたボディーソープはこれまた凛から漂う香りを彷彿とさせる。
「さっきから凛ばっかり考える……」
風呂は好きな方だと思う。
物思いに耽る時間は嫌いじゃなかった。
でも、こうも彼女のことばかり考えると恥ずかしくなってきてしまう。
俺は体の泡を伸ばすと一気に流した。
「じゃあそろそろお湯に浸かるかな……」
はじめて俺は人の家の湯船を見た。
そこには大量の泡が浮かんでいる。
「えっ……」
湯船に泡というのが想像できなかった。
俗の言う泡風呂といったものだろうけど、そんなものアニメくらいでしか見たことない。
俺は恐る恐る足をつける。
しかし、そんなに恐る必要もなくほとんど普通のお湯と変わらなかった。
「ふぅ……」
一つ大きく息を吐く。
天井を見上げると例の機械がまだスプリンクラーのように蒸気を出している。
それに風呂の湯気も相まって周りの風景が朧になってきた。
「海斗……」
天井を見上げていると、扉が開く音がして俺を呼ぶ声が聞こえた。
「ん……?」
声の方向を見るとそこには女性のシルエット。
それも見慣れた形のものだった。
彼女が近づくとその姿はだんだんはっきりする。
「凛、一緒に入ろう」
凛はタオルで前を隠しているもののタオルからは胸が少しはみ出している。
それにのぼせてもいないのに頬はすでに赤かった。
「ねぇ、体流してよ」
凛は俺にそう言うと風呂に置いてあった椅子に座る。
俺に背中を向けているが、目線はこちらを向いていた。
「しょうがない……なぁ……」
俺は立ち上がり、洗面器を手に取る。
体についていたお湯が水面に落ちては跳ねる音が響いた。
「泡風呂だけどいいの?」
「体どうせ洗うし、いい」
「分かった」
凛の白い肌に泡混じりのお湯をかけてやる。
首筋にお湯をかけていくと、あちらこちらにあるキスマークに目がいった。
肌が綺麗なぶん、キスの跡が目立つのもある。
でもそれ以上に自分の物だとつけた証を無意識に探しているのかもしれない。
「肌綺麗だね」
「そう? こんなものじゃない?」
次は彼女の髪を流していく。
普段はサラサラで指がすっと通っていくような長い髪が水をかけてやるとさらに黒々としてきた。
「海斗さ……」
「何?」
「長い髪好き?」
「もちろん」
長い髪が元々凄く好きというわけではない。
むしろ凛が長い髪だったから長い髪が好きと言ったほうが正しかった。
そんなことを知らない彼女は嬉しそうに
「そっか」
と言った。
体を流して、凛の体を洗う。
流石に前は彼女自身が洗ったが、背中は俺が洗った。
「こうやって二人で湯船に浸かるのやってみたかったの」
湯船に体を滑り込ませながら凛が言った。
「俺も今回はちょっと期待してた」
向かい合うように湯船に浸かる。
泡とモヤのせいで彼女の躰はよく見えない。
でも、何度も見ているせいで頭の中では浮かんでいた。
「泡風呂の方がなんかえっちに思えない?」
凛が泡をすくって遊びながら俺に問いかける。
「そう……?」
「なんか雰囲気でる……?気がする」
凛はすくった水をまた落とす。
水が泡ごと水面を叩き気持ちの良い音が鳴った。
彼女は俺に近づく。
いつもより肌面積が多い凛に近づかれ心臓が脈打つのが強くなる。
「んっ……ちゅぅ」
気づけばキスをしていた。
でも、ねっとりとしたものではなくて、軽い口付けだった。
「海斗顔赤い……」
「凛だって」
彼女の甘い声と風呂場の熱気で俺の頭がぼーっとしてくる。
どうやらのぼせてきているようだった。
<あとがき>
お久しぶりです。
実はこの作品が急に伸びてくれたおかげで、モチベーションが爆上がりしています。
それも全て読者の皆さんが読んでくれたおかげだと思っています。
ありがとうございます。
そこで少しアンケートをとりたくて、あとがきを書かせていただきました。
是非感想欄に今までで一番良かったシーン、プレイを書いていただけると嬉しいです。
また、今後の参考にやってほしい、書いて欲しいシチュなどを書いていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。
今後もこの作品を楽しんでいただけると幸いです。
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