第31話

 凛の頬に手を添えるともうすでに火照っていた。


「ちょっと……これでキスされるのやばい……」


 彼女が足や手に力を入れるたびにリボンが擦れる音が響く。


「あんまり動くと跡できるよ?」


「でも……恥ずかしいから……」


 下着姿でこんな体勢になっていたら間違いなく恥ずかしい。

 でも、それを考えると俺の中の加虐心がくすぶられた。

 もっと見たい。

 もっと恥ずかしがってほしい。

 俺しか見られない姿をもっと多く目に焼き付けていたい。


「んっ!? ……っ!?」


 気づけば俺は彼女の唇をもう一度奪っていた。


「ちゅぅ……じゅっ……! にゅる……んむ……」


 凛と何度目かわからないキスをして、舌を絡めて、唾液を吸う。

 

「んっ……ちょっ……待って……」


 彼女が顔をそらせてキスを中断する。


「ごめん、嫌だった?」


「いやってわけじゃないけど……」


 凛は横を向いたまま、呼吸を整える。


「今の、この状況じゃ不公平というか……」


「なんで?」


「だって……海斗ばっかり主導権握って……私、抵抗できないのに……」


 顔をこれでもかと赤くしながら彼女が言った。

 でも、その表情すら狂おしいほど愛おしくてめちゃくちゃにしてしまいたくなった。


「凛がやりたいって言ったんだよ?」


「そうだけど……でも……」


「後悔しないでよって言ったよね?」


「だけどぉ……」


 もう凛は涙目になっている。

 主導権を握れず、好き勝手されるのが悔しいのか、感じていて快楽に怯えているのかはわからない。

 でも、声からしてきっと後者だ。


「凛が誘ったから、凛の責任だよね?」


 彼女の顎を掴んで俺の方に顔を向けさせる。

 凛はせめてもの抵抗と、目を合わせてはくれなかった。


「そんなの……知らない……」


「録音しとけばよかったなぁ……」


 俺は意地悪を彼女に言う。

 凛は俺に言葉で攻められている間、涙目になりながら首を振ろうとしていた。


「抵抗してるけどやっぱりこう言うの好きなの?」


 俺は彼女の下半身をゆっくり、焦らすように撫でる。

 凛の吐息はもう荒く、熱くなっていて感じているのを我慢しているのは目に見えて明らかだった。

 俺は彼女の肌とパンツの境目をなぞってやる。


「もう濡れてるんじゃないの……?」


「そんなっ……わけっ……」


 強がっている凛にダメ押しをするようにパンツの上から割れ目をなぞる。


「ほら、もう濡れてるじゃん……黒だからわかりにくいだけで……シミまである」


 彼女の羞恥心を煽るように語りかける。

 凛の目はもう潤みきっていて、頬には汗だか涙かわからないものの跡ができていた。


「ね、ねぇ海斗……」


「なに?」


「キスしたい……」


 彼女はもうとろけきった顔でそう懇願した。

 もちろん断る理由なんてない。


「はむっ……ぴちゃぴちゃ……じゅる……ちゅ……ちゅぅ……」


 舌を絡ませると水気を含んだ音が鳴る。

 それに熱い吐息がお互いの顔にかかり、二人の興奮を分かち合う。


「もっろ……かいろぉ……」


 離れることもせず、彼女は貪欲に俺を求める。

 舌を絡めているから呂律はまわりにくくなっていて、その声がもう扇情的だった。


「海斗……もっと……触って……」


 さっきまでの抵抗とは打って変わったその姿。

 凛の中で何かが吹っ切れたようだった。


「どこ触ってほしい……?」


「海斗の……好きにしていいよ……?」


 彼女はそう言うと、さっきまで閉じようと必死だった脚の力を抜く。


「凛が言ってくれたら触ってあげる」


 精一杯凛をいじめたい。

 もっと誰も見たことがない姿を。

 凛は恥ずかしさからか少しためらったものの、自ら脚を開いた。


「胸とか……こことか触れれてほしい……」


 彼女の恥じらう姿がたまらない。

 慣れてきているのか、それとも俺も貪欲になっているのか。

 どちらにしても行為はエスカレートしている。

 俺は彼女の望むところに伸ばしかけた手を止めた。


「ここってどこ?」


「言わせないでよ……わかってるくせに……」


「ダメ、言ってくれないと触ってあげない」


 すぐに触ってもらえると思っていたのか、彼女は不満そうな顔をした。


「もう、疼いてしかたないの……自分じゃ触れないから……」


「じゃあ言ってよ」


 彼女の体の疼きが激しくなっているようだ。

 赤く上気した肌がそれを物語っていた。

 凛は俺を少し恨めしそうな目で見ると、視線を逸らし呟いた。


「お股……触ってください……」


 彼女の精一杯の言葉だったのだろう。

 まだ恥じらいが残っているところに謎の興奮を覚える。


「しょうがないな……今回はそれでいいよ」


 凛は触ってもらえると思ったのか、力抜いて俺の手を受け入れる準備をする。

 でも、こんな簡単に叶えてあげるほど今日の俺は優しくない。


「ちょっと倒すよ?」


「えっ……?」


 彼女に俺へ背を向けさせると、ベッドに伏せるように凛の体を倒した。


「やだ……見えない……かいとぉ……」


「ちょっと今日は意地悪だから……さ……」


 凛の尻を軽く撫でる。

 彼女はなんとか身をよじって何をされるか見ようとするものの、手と脚をうまく動かせないせいで顔を動かせないでいた。


「じゃあ触るよ?」


 俺は凛に宣言をすると、彼女の下着の中に手を入れた。

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