第29話
「ん、これ操作がさっきのとあんま変わらない……?」
凛がパソコンのキーを操作しながらそんな事を呟いた。
「ああ、それらは確か同じソフトで作られているから。操作一緒の方がわかりやすいだろうし」
「そんなソフトあるんだ……へぇ……」
凛はよっぽどゲームが楽しいのか、パソコンをずっと覗き込んでいる。
どうやらやりながら慣れるタイプらしく、俺に聞くことも少なかった。
一方俺はベッドの上で漫画を読みつつも、チラチラと彼女の様子を眺めていた。
「手書きの絵とか、なんか変わった絵とか色々あるね」
「まぁ作家の癖的なものだろ?」
時折凛が呟く言葉に俺が返す。
そんな時間がゆっくり流れている。
「あれ……ここをこうして……あれっ?」
凛が首を傾げながらキーボードとマウスを動かしている。
多分何かダンジョン系のをやっていてルートに苦戦しているのかもしれない。
ただ、これもゲームの楽しみの一つだから、口を挟むのはやめておいた。
「これかな……」
凛はマウスをカチカチ連打している。
俺が集めているゲームはマウスでも動かすことのできるものも多いので多分それだろう。
「んっ……これ……」
凛が何かを見つけたような声を上げた。
クリアしたのか気になって、俺はベッドから立ち上がる。
「どう?なんかクリアした?」
俺が近づこうとすると、凛は俺に画面が見えないようにした。
「ん?どうしたの……?」
「それは……この……」
凛は何かまずいものを見たような顔をしているので、急に俺の方まで不安になってきた。
「え、なんか見たらまずい?」
「私はまずくないんだけど……」
「え?」
彼女の言い方だとまるで俺が見られたらまずいものを見られたような感じだった。
「待って、もしかしてゲームSSってフォルダー開いた?」
凛は無言で頷く。
やってしまった。
エロゲーのスクリーンショット置き場を彼女に見つかったようで、凛も顔を真っ赤にしている。
恥ずかしさと気まずさでしばらくの間沈黙が場を制する。
次に口を開いたのは彼女の方だった。
「あ、で、でも海斗の好みがわかったし! 私は落胆とかしないから!」
「そういう問題じゃない……んだよ……」
恋人にエロゲーを見つかることのダメージは本人にはわからない。
そう被害者にしかわからないのだ。
「もしかして……中身見た?」
「う、うん……少し……」
彼女は俺にパソコンの席を譲ると、スクリーンショットを何枚か指差した。
「これとか……あとこれ……」
さらに運がなかった。
凛が見たのは非常にセンシティブでハードなシーンばかりだった。
「ごめん……俺は……もっと隠すべきでした……」
「い、いいの! 海斗もそういうの……興味……あるんだなぁってなっただけだから……」
「つらい……」
彼女のフォローはフォローに聞こえない上に今の俺には届かない。
「あの……海斗……」
「なに……」
「その……こういうことしたいの?」
多分フォローの一環だろう。
でも、もうすでに俺のメンタルはやられている。
もう恥ずかしくて恥ずかしくて、部屋を飛び出したかった。
「いや、まぁリアルと二次元は……違うから……っ!?」
妄想と現実の境を話そうとした時、凛が服を脱ぎ始めいている姿が目に入った。
「ちょっ!? 何してるの!?」
思わず席から立ち上がる。
「海斗に……悪いことしちゃった……だから……お詫び……」
「いや、そういうのは……」
彼女は俺を席にもう一度座らせると、ゆっくりパジャマを脱いだ。
パサっと乾いた布が落ちる音がして、凛の上半身は下着姿になる。
「私にしても良いよ……?」
もう、夜に何回もしたというのに彼女は俺を興奮させてくる。
もしかしたら彼女はそういう天才なのかもしれない。
「海斗はそういうの興味ないの……?」
凛の真っ直ぐな視線が痛い。
また手を出したら流石にやりすぎだとは思いつつも彼女の誘惑には勝てる自信はなかった。
「私にやっても……良いんだよ……?」
「でも、二次元と三次元は違うから……」
この言い訳で我慢するしかない。
でも、凛はその解答には納得できていないようだった。
「でも、興味はあるんでしょ?」
「あったところで凛が嫌だろ?」
「私は興味あるけど?」
彼女は俺を見つめたままそう言った。
「え……でも痛いのとかあるから……凛は嫌じゃないの?」
こういうのは痛みが伴うものも多い。
そんなの輪にはしたくなかった。
でも、彼女は俺の意に反して首を振った。
「ううん、確かに他の人なら嫌だけど、海斗なら良い……寧ろもっといろんなことしたい……」
「で、でも!」
その時、俺の言葉を制するように彼女の細い人差し指が俺の唇に触れた。
「じゃあ、私がお願いしたらやってくれる?」
彼女はこういう時少し強引でずるい。
可愛いのを自覚してるからか、その顔にものを言わせてお願いを通そうとしてくる。
でも、俺にとってはあまりに効きすぎる手だった。
「やるも何も……そういう知識とか道具とかないし……」
「じゃあ家にあるもので代用すれば良いじゃない?」
何を言っても無駄な気がしてきた。
もう経験でわかってくる。
何を言ってもその壁を彼女は全部取り除いていくのだ。
「はぁ……わかったよ……考えておくから……また今度な……」
俺はそう言って話を打ち切ろうとする。
しかし彼女は許してくれない。
「今から……やらない……?」
彼女は相変わらずずるい顔をしていた。
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