ヒーロー

 ――住宅街でクマに襲われ4人が怪我 猟友会が駆除

 ――【出没】監視カメラに熊 いったい何が…

 

 今日のニュースには、動物特集が組まれていた。

 青年が最も嫌うソレだった。

 動物をペットとして扱い、さも人類が上の立場であるように妄信している。

 権力者がいるからこうなるんだよ?そうだよね?

 元々は彼らが住んでいた場所。元々は彼らが生きていた場所。

 それを奪い去ったのは皆目我々であって、「共存」を謳っていたのに今や、動物は敵とさえ言われる有様。飽く迄この世界の中心は“ヒト”であることを譲ろうとしない。


 ――市内でキツネの目撃情報相次ぐ 住宅の庭でも目撃


 驚いた、――まさか此処に狐がいるなんて。

 笑わせる、――“きつね”なんて毎日見ているじゃないか。コンビニやらスーパーやらで。……、“赤いきつね”とか言って。

 奮わせる、――無機質な画面に映し出されているのは、紛れもなく私の良く知る景色だ。


 例えば、「ヒト」が存在しなければ。

 例えば、「ヒト」が支配者でなければ。

 例えば、「ヒト」が“動物”であったなら。

 例えば、誰かが助けようとしたならば。


 考えたところで、それは実現しやしない。今思考する全ては悉に無駄な行為だ。

 なぜなら……、       

            「此処にいるのは俺。」

 

 この状況に於いて、須臾にしてソレを助けられるのは、俺だけだ。そして、この街に於いて、ソレを助けようとしているのも俺だけだ。


“ヒーロー”になれるのは。



 動物の生きていた世界、もとい動物が守ってきた地球という世界は、我々“ヒト”の手によって、破壊され、汚染されてきたはずだ。だのに、“ヒト”はなんだ。やれ絶滅危惧種の保護だの、やれ再生可能エネルギーだの宣って、さも自分たちは“正義”を遂行しているみたいなプロパガンダを流し続けて疑いもしない。


 ――可笑しいだろ、そんなの。


それが俺の生き様だった。俺なりの“正義”だった。


   


 

 

 




                   



 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る