第51話 猫貴族、戦闘力強化を決意する


子豚君からの報告によると以上です。


「やはり何か計画していたか。しかも魔物を使ってだと良くて反乱、悪くて隣国を呼びこんでの戦争だろうな」


「でも魔力溜まりなんて物騒な物どうやって作れるようになったんだろうね?」


「それについてはもう一つご報告がございます」


「ホブゴブリンの洞穴を見張っていた我が眷属からの報告で洞穴へやってきた者の姿を確認出来ました。おそらく、こやつが魔力溜まりの作成者でしょう」


「そいつが誰だったかはもう掴んでいるのか?」


「我が同胞でございました」


「な、同胞ということは悪魔ということか…」


あまりにも想像以上の報告に父さんが思わず頭を抱える


「ただ、我が眷属に気付かないあたりせいぜい男爵級程度の悪魔ですがな。ヌフフフ」


「男爵級だとどれぐらいのレベルなの?」


「わたくしやグレン様でしたら余程のことがない限り問題ないでしょうな。ルーク様の場合は良くて互角かと」


男爵級とは言ってもやはり悪魔の方が実力は上か。


「計画が延期されたのには感謝しないとだね」


「ええ、わたくしがみっちりしごいて差し上げますよ。ヌフフフ」


「ルークはあと一年でそいつと戦えるように鍛えろ。俺の勘だが相手は二~三年の間に仕掛けてくるだろう」


相手は頼みの綱の魔力溜まりを作成できる魔道具が二つも破壊されてしまい、計画を練り直すことだろう。

となると、父さんが言うように二~三年の余裕はあるかもしれないので一年で鍛え上げる必要があるだろう。


「わかったよ。よろしくねヴィクター、それにクロエも」


「お任せ下さい。ヌフフフ」


『大船に乗ったつもりでいるにゃ』


「だが鍛えるったって具体的な方策はあるのか?」


「各地に点在するダンジョンに潜ろうかと思ってる」


「ダンジョンの魔力溜まりを吸収して手っ取り早く魔力量を増やすか。確かに良い手だな。それにダンジョンには強い魔物もいるだろうから戦闘自体の訓練にもなるだろう」


父さんからはロッソ領から長期休みの間に行けそうなダンジョンを一つ教えてもらった。

来週からの長期休みではさっそくそのダンジョンへ行って鍛えようと思う。


「そもそも悪魔って魔力溜まりを人為的に作り出せるものなの?」


これが可能なのだとしたら悪魔が現れる度に一大事になってしまう


「それはありませんな。おそらく何らかの方法で太古の時代に発生した魔力溜まりを保管し、研究していたのでしょう。ですので作成出来るのも無限にという訳にはいかぬのでしょう」


「それを聞いて少し安心したよ。そいつをなんとか倒せれば今後は魔力溜まりを警戒する必要がなくなるんだね」


話し合った内容は、即刻陛下やネーロ家にも情報を共有し、各々が悪魔と魔力溜まりへ備えることとなった。

もっとも悪魔ヴィクターの存在を報告していなかった陛下には大変驚かれたが。


学園も野営研修の混乱もあって少し早くはあるのだが、夏季休暇に入ることとなった。

夏季休暇に入ることになったので、父さんと共にロッソ領へ帰ることに。

今回は姉さんだけでなく、なんとティアも一緒だ。


ティアは悪魔と魔力溜まりの話を聞き、自身も鍛えたいと願ったため、それなら闇の神獣であるクロエといる方が闇魔法の強化につながるし、ダンジョンへ付いていくことで戦闘訓練にもなるだろうとラウルお義父さんが認めたため、共に来ることになった。


「ではお父様、行って参ります」


「気を付けていくんだよ。グレン君もフェリシアちゃんもティアのことを頼んだよ」


「え、お義父さん僕は?」


ラウルお義父さんは僕の肩を抱きかかえ、顔を寄せると


「僕はルーク君のことを信頼してるし、君にティアを任せることに何の異存もない」


「じゃ、じゃあ」


「でもね、君たちはまだ子どもだ。もしティアに手を出したらわかってるよね?」


いいんじゃないの?と答えようとしたところ、これまで常にニコニコしていたラウルお義父さんが見せたことのないような険しい顔で囁いてきた


「も、も、もちろんですとも。だってまだ8歳の子どもだよ?あは、あはは」


「ならよろしい。ティアのことを頼んだよ」


満足気に頷き、ようやく僕を解放してくれた


「お父様から何言われてたの?」


「ん?ティアをくれぐれも頼んだと念を押されていたんだよ。あはは」


「そっか、ならいいの。これから短い間だけど不束者ですがよろしくね?」


ティアが嫁入りのようなセリフを笑顔で言うものだからたまらずにやけてしまった


「ん!んん!わかってるよね?ルーク君?」


「も、もちろん。では行ってきます」


こうして僕たち一行はロッソ領へ出発した


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