第44話 猫貴族、クロエと夜番をする
新たに見つけた場所でテントを張った後は、僕とアダンの二人で狩りに向かった。
運よく鹿と猪が取れたので、血抜きを済ませた後アダンに調理してもらった。
とは言ってもアダン本人が言ってたように胡椒などの調味料をかけて味付けして焼いた肉と、スープといったごく簡単な料理だった。
「うまいっす。野営の食事だとは思えないっす」
「おいしい。このスープなんて下手したらウチの宿で出してる料理より美味しいかも」
「嬉しいけど流石にそれはないよ」
確かにレーナは褒め過ぎだとは思うが、かなり美味しいと僕も思う。
「夜の見張りを決めないといけないわね」
「5人だから2・2・1になるね」
「じゃあ1はルークで決まりっすね」
「それでいいよ。僕が一番寝辛い真ん中を担当するよ」
「助かりますわ。でははじめと最後ですが、私とアダン、レーナとカイトで別れましょう。カイトはもし貴族に絡まれた場合対応をお願いしますね」
なるほど。アダンとレーナが組んでしまうと、もし貴族のトラブルに巻き込まれた場合対応出来ない場合があるからアンナとカイトを分けるのか。
昼間にブランデンの件があったしそれが妥当だろうな。
「任せて欲しいっす。じゃあ先に俺とレーナで担当するっすね」
夕食も終わり、いよいよ寝る時間となったので隣同士に設営した小さな二つのテントに男女に分かれて潜り込む。
「…っす」
「ん…?」
「起きるっすよ!ルーク」
「んぁ、もう順番?」
「そうっすよ!水はテントの前に用意しておくっすから顔洗ったら出てきて欲しいっす」
「わかったよ」
カイトが水魔法で用意してくれた水で顔を洗うと、緊急時に備え、死神シリーズを身に着けカイトとレーナがいるところへ向かう。
「それがルークの装備?髪とマッチしててカッコいい!」
「それはちょっと反則っす」
レーナが思いの外似合ってると褒めてくれたが、そんなレーナの様子を見てカイトが少しむくれている。
おっもしかしてカイトはレーナのことが…?
まぁこれ以上は野暮だしやめとくか。
「ありがとう。僕のお気に入りの装備なんだ。それより見張り中に問題はなかった?」
「なかったすね。ただ上流の方でバカ騒ぎしてるグループがあったみたいで少し騒がしい時があったっす」
「そっか。なら安心だね。二人ももう寝てくれていいよ。あとは僕が担当しとくから」
「じゃあおねが~い」
二人も眠たかったのだろう。
欠伸をしながらそれぞれのテントに入っていった。
「おいで。クロエ」
『どうしたにゃ?』
「いや、一人で野営の見張りを担当することになってね。寂しいからクロエと話でもしとこうかなって」
『しょうがない主にゃ』
そう言いながらもクロエは僕の膝の上で丸まって自由に撫でさせてくれた。
「そう言えばハクってすごい変わってたけど他の神獣もあんな感じなの?」
『あいつは確かに変わってる方にゃ。でも他のも変わってる奴が多いにゃ。一番ましなのはこの前行ってた地の神獣にゃ』
「やっぱりそうなんだ。地の神獣ってたしかドライアドだっけ?」
『そうにゃ。あいつは穏やかで話の分かるやつにゃ。だからエルフの国で共存出来てるんだと思うにゃ。でも火と雷は戦闘狂だから気を付けるにゃ』
「それはおそろしいね。もうちょっと強くなるまで火と雷には会わないことを祈ってるよ」
クロエと二人で会話を楽しんでいると、川の上流の方から何か流れてきた。
『血の匂いにゃ』
「これは猪…なのか?」
上流から流れてきたのは切断された豚のような顔。
猪の様に見えるがまさかオーク…?
上流の方が騒がしくなる。盛り上がっているというよりも悲鳴のようだ。
「これは何かあったかもしれないね。みんなを起こすからクロエは一旦影に入っててくれるかい?」
『嫌な臭いがするにゃ。主も気を付けるにゃよ』
急いでカイトたち四人を起こして上流へ向かうとするか
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