第43話 猫貴族、野営研修に参加する
グループ分けから更に一か月が過ぎ、野営研修の日がやってきた。
休みの日にはアダンの店に行ってみんなでご飯を食べたり、学園の訓練所でもし戦闘になった場合に備えて陣形を確かめたりと、グループのメンバーで交流を深めた。
今は野営予定の森に到着し、先生からテントや魔道具を渡されている。
魔道具の中には火起こし用のものもあり安心した。
なぜかって、グループ分けの時に気付いたんだけど、ウチのクラスって火属性の子がいないんだよね。
今まで父さんや兄さん、姉さんが近くにいたから火属性の人がいて当たり前みたいな感覚だったんだけど、グループ分けの時に火属性がいなくて愕然としたんだよね。
「じゃあここからは自由行動だ。それぞれのグループで野営に適していると思う所を探して野営するように。ただしあんまり奥へは行き過ぎるなよ」
「では、参りましょうか」
アンナの掛け声とともに、僕たちのグループは移動を開始する
「どこへ向かうの?」
「そうですわね。やはり川など水辺に近い所がいいのではありません?」
「そうっすね!俺の魔力もいつ切れるかわかんないんで念のため水辺がいいかもっすね」
「ではまずは川を探してみましょうか」
その後僕たちは、アダンとカイトが先頭、アンナとレーナが真ん中、僕が後ろという陣形で野営地探しを始めた。
アダンは食事処の息子というだけあってナイフをはじめとした剣の扱いが非常に上手く近接戦闘の担当、水魔法で水を探すという道案内の役目を兼ねたカイトと二人で前衛。
魔法使い型の女子二人は中衛、そしてオールラウンダーの僕が後衛でグループ全体を俯瞰して統率し、不慮の事態に備えるのがそれぞれの役割だ。
「でも食事が不安ね」
「そうですわね。狩り出来なければ配られた保存食しかありませんものね」
レーナが食料の確保が心配だと言い出せば、アンナがそれに同意する。
「でもいいじゃないっすか。ウチはアダンがいるから獲物さえ取れればきっと美味しい野営食作ってくれるっすよ」
「そんなにハードルあげないでよ。道具もあんまりないし、大したものは作れないよ」
「それでもだいぶましっすよ。まぁいざとなればCランク冒険者のルークがいるから食料は問題ないでしょ」
「「「それもそうだね」」」
なぜか戦闘面で全幅の信頼を置かれてるが、みんなでやらないと意味ないのでは…?
まぁあえて否定して空気を悪くすることもないので何も言わないが。
「そろそろ水辺が近くなってきてるっす」
「本当?良さげなところだといいな」
そのままカイトの誘導に従い歩いていくと2mぐらいの幅がある川へ出た。
そして川辺ではもう既に他のグループが野営の準備を始めていた。
「おい!ここは俺たちのグループが先に見つけた場所だ。さっさと他所へ行け」
「げっ!ブランデン・マクベス」
こちらを見るなりいきなり絡んできたのは緑色の髪に吊り上がった特徴的な目をした、刺客を送り込んだり、お披露目会で子豚君をけしかけてきたりと碌なことをしない北の公爵家の子息ブランデン・マクベスだった。
Aクラスのグループでここで野営をするつもりだったらしく、他のメンバーも貴族子弟ばかりだ。
よく見ると子豚君もグループに混じっている。
しかし【幻想ファントム操り人形マリオネット】の魔法が効いているので、以前みたいにこちらにキャンキャン吠えてきたりはしない。
「貴様、このマクベス公爵家の俺に向かって失礼だぞ。これだから田舎者は。なんだ?平民も混じってるじゃないか。汚らわしい。はやく視界から消えろ」
こうやって会う度に絡んでくる上に、平民を蔑視しているところがあるのでいつもは会わないように心掛けているのだが、研修で水辺を探すという目的が重なってしまい、不運にも顔を合わせてしまったようだ。
マクベスが平民を差別するのでアダンとレーナが俯いてしまった。
これがケイトならば貴族との付き合いもある上に持ち前の話術でやり過ごすのだが、この二人には侯爵家という存在はやはり重いのだろう。
「あなたこそ失礼ですわよ。学園ではそもそも身分は関係ありませんわ。Sクラスに入れなかったからって平民に絡むなんて見苦しいですわよ」
「くっ殿下の婚約者だからと言って調子に乗るなよ」
「あら、その言葉そのままお返ししますわ。公爵家の威を借りてしか話が出来ないあなたに」
「こんなの相手にするだけ時間が無駄だよ。他の場所へ移ろう」
貴様などは相手にしていないなどとキャンキャン吠えていたが、丸っと無視してみんなを連れて川沿いを下流へ向かって歩きはじめた。
「無視して本当にいいの?」
レーナはブランデンを無視したことを気にかけているようだが、アンナと共にあんなのは相手にしなくてもいいし、何かイチャモンを付けられたらすぐに言うように言い含めてブランデンの話は打ち切った。
そして10分程歩いたところで野営出来そうなスペースを見つけたのでテントを張ることにした
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