第42話 猫貴族、野営研修に備える


光の神獣であるハクと思いがけない出会いを果たしてから一か月が経った。

洞穴にいた黒ローブのことは相変わらず謎のままだが、冒険者ギルドではヴィクターと共に無事Cランクへと昇格した。

元々目標にしていた国家間移動が容易になるBランクまであと一つだ。

メイソン陛下が協力してくれるってことだから国家間移動は簡単に出来るかもしれないけど、やっぱり冒険者ランクは高い方がいいしね。


そして何度かエル婆にエルフのことを聞きに行こうと店を訪れたのだが、店は開いておらずまだ話を聞くことは出来ていない。


今日は学園の授業で、一年生の最大のイベントである野営研修についてクルト先生から説明を受けている。

野営研修とは夏季休暇の前に行われるイベントで、4・5人で一グループとして王都近郊の森で実際に野営を体験するというものだ。

王都近郊の森と言っても、いつも狩りに行っている北側の森とは違って、東側の森なので魔物もほとんど現れず安心に野営が体験出来るとのことだ。


「この研修はお前たちが日頃訓練しているものが実際にどう活きるかを確認するために行うもんだ。道具は貴族と平民で差が出るのは良くないからこちらで用意したものを使うように。あとは適当に二つのグループに分けといてくれ~」


クルト先生はそれだけ言うとそのまま教卓で寝始めた。

これは勝手に二つにグループを分けて話し合いをしておけってことだろう。


「じゃあ悪いけどいつも通りルドルフが仕切ってくれるかい?」


クリスの一言でルドルフがおもむろに立ち上がる。

ウチのクラスは王孫のクリスや成績一位の僕ではなく、きっちりなんでも卒なくこなすルドルフがリーダーとなることが多い。

ルドルフとしてはクリスと僕だと何かやらかさないかと心配になるので、自身で仕切る方が安心出来るとのことだが…解せん。


「まずは実力的にもクリスとルークには分かれてもらうよ。そして僕は王孫であるクリスの方に付いていることにする。万が一何かあったら困るからね」


皆が納得して頷いている。


「そしてティアとアンナだけど、悪いんだけどそれぞれ婚約者とは異なるグループに入ってもらう。これは属性的な問題だね。これで光と闇がそれぞれ一人ずつになるからバランスが良くなると思う」


僕のグループには光魔法の使い手で侯爵家のアンナが来るようだ。

ティアと同じグループになれないのは残念だけど、ルドルフの言う通りだと思うから仕方ないかな。

アンナがいるともしグループの誰かが怪我しても治療してもらえるしね。


「次は野営に必要不可欠な水魔法の使い手をそれぞれにわけよう。幸い二人いるしね。カイトとケイトの二人だけど、今はこちらのグループの方が男が多いからケイトがこちらでカイトはルークのグループとしよう」


「了解やで~」

「承知ッス」


そしてグリフォン商会の看板娘ことケイトがクリスのグループへ、男爵家のカイトがこちらのグループとなることが決まった。

また、ルドルフと同じく地属性の宿屋の娘レーナはこちらのグループに決まった。

これで残すは風属性の寝坊助ジョセフと食堂の息子アダンとなった。


「え~アダンと同じグループになれないの~。じゃあどっちでもいいよ~」


ジョセフは初日の挨拶以来仲の良いアダンと離れることに難色を示したが、ルドルフのグループ分けの仕方自体には文句が無かったらしく、クリスのグループに入ることを受け入れた。


決まったグループ分けはこんな感じだ。


①クリス(光)、ルドルフ(地)、ティア(闇)、ケイト(水)、ジョセフ(風)


②ルーク(闇)、アンナ(光)、カイト(水)、レーナ(地)、アダン(風)


流石はルドルフ。属性的にもかなりバランスが取れたグループになったと思う。

あとは今後はこのグループでより交流を深めることを決めて終了となった。


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