第45話 猫貴族、騒動の中心へ向かう


「じゃあ僕は様子を見に行ってくるから皆は準備が出来次第他の生徒の誘導をお願いね」


起きてきたグループのメンバーにそれだけ言い残し、慌てて上流へ向かうと目に入ってきたのはパニック状態で下流へ向けて走ってきている他のクラスの生徒の姿だった。


「一体何があったんだい?」


「あっ君は一位の!魔物だ!いきなり魔物が襲ってきたんだ」


その中の灰色の髪の男子生徒を捕まえて事情を聞くと、向こうは僕のことを知ってたみたいだ。

僕の顔を見て少し安心したのか、落ち着いて事情を話してくれた。


「魔物だって?一体どこから?」


「わかんないけど、Aクラスのテントの方が騒がしいと思ったらいきなり魔物が襲ってきたから慌てて逃げてるんだ」


「わかった。ならこのまま下流に向かえば僕のグループが待機してるはずだからに他の奴らを連れてそこへ逃げてくれ」


「ありがとう。みんな!このまま向かえばSクラスの子たちがいるらしいからそこへ合流しよう!」


そう言って彼が他の生徒を案内しながらSクラスのみんながいる方へ向かっていった。


しかしAクラスの方から魔物か…。

ブランデンの奴のところか?

だとしたらちょっと厄介だけど向かうしかないな。


そのまま上流へ向かうと、100匹以上の大量のオークと戦う5人の姿が目に入ってきた。

いや戦ってるのは子豚君一人か。

そうか、【ファントムマリオネット】が効いてるお陰で、パニックにならずに落ち着いて対応出来てるのか。

これは予想外の効果だな。

しかし、目の前では呑気に分析出来るような余裕がありそうではなく


「ノーナイに任せてばかりではなくお前たちも戦え!」


ブランデンが必死に他の腰巾着たちに指示を出していた


「し、しかしブランデン様!これだけの量だと無理です」


「つべこべ言わず戦え!」


『ダークインパクト』


「だ、誰だ!」


「「「ルーク・ロッソ!」」」


「ここは僕に任せてくれるかな?」


「くっ貴様なんかの助けなど『ここはあいつに任せて逃げましょう』」


ブランデンは僕に頼りたくないようだが、他の腰巾着たちは怯えてしまって早く逃げ出したそうにしている


「ほら他の奴らはそう言ってるぞ。だが逃げる前に一つだけ教えて欲しい。どこからこれだけのオークが現れた?」


「それはブランデン様が『わからん!急に現れただけだ!とにかく貴様はその豚どもの相手をしてればいい』」


腰巾着たちが何か言おうとしたがブランデンが慌てて彼らの言葉を強引に遮り話を誤魔化し、そのままオークのいない方へ逃げていった。

これはキナ臭いな。ブランデンが何かやった結果このオークたちが現れたと考えた方が良さそうだな。








もう15体以上は倒したはずだけどキリがないな。

子豚君も5体ぐらい倒してくれたみたいだし、あとは80体ぐらいか。

オーク自体はEランクの魔物だからそんなに脅威はないんだけど、相手はこれだけの量で周囲には学園の生徒たちがいる。

他の生徒に危害が及ぶ前になんとかしないとな。

でもちびちびと一体ずつ倒していて間に合うのか?

もうここは漆黒魔法を使うしかないか…


『ダークボール』

『ライトニングアロー』


「ルーク君!大丈夫?」


「ルーク、無事か?私とティア嬢も援護に入ろう」


「ティア!クリス!」


そこへやってきたのは、ティアとクリスの二人だった。

二人とも話しながらも魔法を周囲のオークに放ち、その数を削っていってくれている


「二人ともなんでこんな危ないところに来たんだ!アンナたちのところまで逃げろ!」


「私はルーク君の隣に立ちたくてずっと魔法を頑張ってきたの!だからそれは聞けない!」


「そういうことさ。私たちも一度はアンナたちと合流したんだが、そこでルークが騒動の原因へ向かったと聞いたティア嬢が私も行くと言って聞かなくてね。確かにルーク一人に任せるのもなんだし、私がついてきたって訳さ。向こうにはルドルフがいるから問題ないしね」


ティアがそこまでの想いでこれまで頑張って来てくれてるなんて全然気付かなかった。


「ティア…。ありがとう。これからはティアにもっと頼るようにするよ」


「うん!左右の敵は私とクリス君で受け持つからルーク君は中央の集団をお願い」


「わかったよ!じゃあこっちは任せたよ!」


『ダークミスト』

『シャドーエッジ』


ティアはダークミストで周囲にいたオークを魔法で眠らせシャドーエッジで影から伸びる刃でオークの首を切り裂いていく。

今は夜の森とあって相性も良く、かなり強力となっている。


「広範囲魔法の連発か。ルークだけじゃなくてティア嬢も化け物だったんだね。こんなカップルを御せる人間なんているのか。」


そんな様子を見たクリスはブツブツと何か言っているようだが、こっちも目の前のオークを相手にしないといけないため耳を傾けてはいられない。


「こうしちゃいられないね。私も王家の人間として他の生徒たちを守る義務がある」


『ヘブンズレイ』


クリスもいつの間にか出来るようになった詠唱破棄で指から強力な光線を放出する魔法を使って周囲のオークたちを駆逐していく。


『エンチャントダーク』


中央で固まっていたオークたちを切ってはちぎりをしていくと、ようやくあと10匹といったところまできた。

なんだか奥から変な魔力を感じるな。

そう言えばここへ向かう時もクロエが嫌な臭いがするって言ってたな。

それにこの感じまさか…?


そして最後の一匹となったオークが味方の死体の影から襲い掛かってくるが、それを躱して袈裟切りに斬りつける。


「どうしてここにこんな物があるんだ」


オークを倒しきった先にあったのは、つい数か月か前に見たあの魔力溜まりだった。

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