第33話 猫貴族、二つ名を得る
「ボンズまたお前か。いい加減に人に絡むのをやめろと言ってるだろ」
「いーや、こいつは間違いなく嘘言ってやがる。オーガなんてCランクの俺でもソロで倒せねえのにこいつに倒せるはずねえ!!」
「おじさんが倒せるかなんてどうでもいいからもう僕は帰ってもいいかな?」
「ほら見てみやがれ!そうやって都合が悪くなるとすぐ逃げようとすんだろ?本当だっていうんだったら俺と戦いやがれ」
「いやいや戦わないよ。なんで何のメリットもないのに僕がおじさんの相手しないといけないのさ」
「正直にビビッて帰りたいって言えばどうだ?それとも金か?俺に勝てりゃ有り金くれてやるよ」
「僕こう見えても貴族なんだよね。生憎野良試合してお金稼ぐ程困ってないんだよ。そろそろ鬱陶しいから帰ってもいいかな?」
「不躾ながら、ルーク様が勝てばDランクに昇格というのでどうでしょう?先ほどDランクにはある程度の依頼数をこなさないといけないとのことでしたが、ここでCランクを倒せばDランクになるには十分でしょう?」
これまで黙っていたヴィクターが横から新たな提案をしてきた。
確かにDランクに昇格出来るならここで戦っておくのも悪くはない。
「ん~。そうだな。俺もルークに強さをこの目で確かめておきたいし、特別にその条件を認めよう。ただしボンズは負けたら冒険者の資格をはく奪する。それでいいな?」
「ああもちろんいいぜ。こいつに負ける訳ねえからな」
「ヌフフフ。だそうですよ?ルーク様」
「本当仕事の出来る執事だね。なら戦ってもいいかな?」
「じゃあ地下の訓練場に場所を移すぞ。着いてこい」
「じゃあなんでもありの一本勝負だ。互いに準備はいいか?」
地下の訓練場には僕とボンズ、審判のエドモンドさんの三人しかいない。
ビクターや他の冒険者は少し上の観覧席から様子を見ている。
「さすがにボンズもCランクなんだ。Eランクになりたての子どもには負けねえだろう」
「いやいや、あの子どもはオーガを狩ったっていうし、貴族なら強力な魔法も使えるだろうし」
特に冒険者たちは他人事なんで賭けの対象にしたりとお祭り騒ぎだ。
「いつでも大丈夫ですよ」
「こっちも大丈夫だ」
「では、開始!」
『ダーク』
開始の宣言と同時に訓練場を覆うようにダークの魔法をかけ、僕以外(多分ヴィクターとクロエは見えてるだろうけど)の視界を一気に奪う。
こんな大勢の前でわざわざ手の内を明かすようなことする必要ないよね?
「な、なんだ真っ暗だぞ!何も見え…ッヒ」
「もう僕の勝ちでいいよね?」
ボンズが暗くなったことに驚いているうちに素早く後ろに回り込み、首に刃を突き付けながら暗闇の魔法を解除する。
「こ、こんなの無効だ!明るいままなら後ろに回り込まれるなんてなかった!」
絶対的な負けを突き付けたにも関わらず相変わらず訳の分からない理論を繰り出すボンズ
「もういい加減鬱陶しいな。せいぜいいい夢を見るがいい」
そう言いながら『スリープ』と『ナイトメア』の魔法をかけた。
特に『ナイトメア』の方は二度と僕に関わりたいと思わせないように念入りにかけておいた。
「勝者ルーク!これにてルークはDランクへ昇格、ボンズは度重なる問題行動により冒険者証をはく奪とする!」
うぉー!という歓声や、何があったかまったくわからなかったぜ!といった声が一斉に観客席から聞こえる。
「真っ暗だと思ったら一瞬だったな」
「ああ、なにも見えなかったぜ!暗すぎてまるで漆黒だな!」
「おっ!いいじゃねえかそれ!あの坊主はこれから漆黒の坊主だ」
どうやら視界が黒に覆いつくされたことで、僕の二つ名は漆黒に決まったらしい。
漆黒魔法ともお揃いだし、二つ名があれば今後絡まれることも減るだろうからちょうどいいかもしれない。
これが、その後【漆黒の猫貴族】と呼ばれる僕の第一歩となった。
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