第32話 猫貴族、昇格する


怪我をしていた二人も無事に動けるようになったので、皆で冒険者ギルドへ帰ることになった。

帰りながら話を聞いていると四人は不死鳥の風というパーティを組んでいる同郷の幼馴染らしく、剣士の男の子がネビルでシーフの女の子がラベンダーという名前らしい。

ハリーにネビル…どこのポッターかと思ったが、どうも無関係のようだ。

四人でフォレストウルフの討伐依頼を受けていたそうだが、いつもいる場所で見当たらず、探しているうちにオーガに遭遇してしまったらしい。


「この度は本当にありがとうございました。ギルドに帰ったら改めてお礼をさせて下さい」


「同じ冒険者だしそんなにかしこまらないでくださいよ。お礼もオーガを倒したことを証言してもらえればいいですから」


「おそらく我々だけで言っても信じてもらえんでしょうからな」


「もちろん証言します。命の恩人ですから」






やがて冒険者ギルドが見えてきたが、依頼を受けた時と違いもう夕暮れ時となっているため、報告に来た冒険者たちで溢れていた。


「おう。帰ってきたか!なんだ?ネビルたちと一緒か?」


「いや、エドモンドのおっちゃん。この人たちは俺たちがオーガに襲われているところを助けてくれたんだ」


「オーガだと!?どこで現れた?急いで討伐のために召集をかけないと」


エドモンドさんの緊迫した声に周りの冒険者たちも顔色を変え、こちらの様子を伺っている。


「森の浅いところで襲われたんだけど、もうルークが討伐したから召集はいらないよ」


「!?なんだと!!ルークが倒したのか?ヴィクターじゃなくて?」


「そうだよ。エドモンドさん。なんなら死体を持って帰ってきてるからここで出してもいい?」


「あ、ああ。じゃあ隣のカウンターに出してくれるか?」


「よっこいせっと」


マジックポーチからオーガの死体を取り出すと周囲がおーっと騒めいた。


「こりゃ確かにオーガだ。でも本当にルーク一人で倒したのか?」


「それは俺たち不死鳥の風が証言するぜ」


「いくらなんでもあんな子どもがオーガを倒すなんて信じられねえぜ」

「あの冒険者たちもEランクだろ?グルになってんじゃねえのか」


好き放題言われているが聞き流し、他の魔物の素材を放出する


「エドモンドさん。オーガに出会うまでに結構な魔物を倒したからここに一緒にだしちゃうね?」


ドスンとフォレストウルフの山とホーンラビットと出していき、ゴブリンの耳がぎっしり詰まった袋を最後に提出した。


「おいおい。なんだよあの数。もしかしてほんとなんじゃねえのか」

「あれだけ狩れるならオーガを倒してても納得出来るな」


「今日だけでこれだけ狩ったのか?」


「ええ、どうやらオーガに追われた魔物たちが森の浅いところにたくさんいたようでオーガと遭遇する前に討伐しました」


「フォレストウルフが8頭にホーンラビットが5羽、ゴブリンが32体…それにオーガか。こりゃ大物ルーキー登場だな。オーガ以外は依頼が出てたはずだから全部達成扱いにしておく。ルークはこれでEランクだな」


Dランクにはある程度の回数をこなさないと流石に昇格出来ないらしい。


「Eランクで十分ですよ。あとこれ全部買い取ってもらえます?」


「わかった。オーガ以外で銀貨9枚だな。オーガは銀貨30枚はいくと思うが少し精査に時間をくれ」


「いいですよ。じゃあ次回来た時に『おいおい!何信じてんだよ!こんなガキがオーガを狩った?どっかで買ってきたの間違いだろ?どうせ他のゴブリンとかも他の冒険者にでも売ってもらったんだろ』


受け取りますねと答えようとした時、ゴツく目つきの悪いチンピラのような男が大声を張り上げてイチャモンをつけてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る