第31話 猫貴族、戦闘する


「~っと!!」


「お見事ですな」


周囲には首の無いゴブリンの死体が散乱している。

これで今日は22体目のゴブリンだ。


「まぁゴブリンとはロッソ領にいた時からよく殺り合ってたからね。それにしてもゴブリン多くない?ギルドで買った地図見てもまだ浅いところのはずなんだけど」


「そうですな。いつもと比べても少し多い気がしますな」


『この辺りではもう魔物の匂いはしないにゃ。もう少し奥に行ってみるかにゃ?』


「ルーク様のお力だと問題ないかと。それにもし異変があっても私とクロエ様もいますし、どうにでもなるかと」


「依頼の薬草もゴブリンも十分以上集まったし行ってみるか。でも二人は本当に危なくなるまでは手は出さないでね?」


「これだけ出るってやっぱり異常じゃない?」


その後一時間程かけて森を探索してみたが、ゴブリンだけでなくフォレストウルフやラビット系モンスター等、かなりの数の魔物と遭遇した


「普通ではないのは間違いないでしょうな。血がたぎりますなぁ。ヌフフフ」


「ちょっと悪魔さんその笑い方気味悪いんですけど」


「これはこれは失礼しました。ヌフフ」


『諦めるしかないにゃ。ヴィクターはまだ悪魔の中ではまともにゃ。他の悪魔はもっとぶっ飛んだ奴しかいないにゃ』


「ならヴィクターと会えたことに「お前たちは逃げろ!」」


「奥が騒がしいね」


「どうやら今回の原因みたいですな」


声が聞こえた方へ向かうと装備がボロボロになった4人の若い冒険者が大きな鬼と戦っていた。


前衛らしき剣を持った男の冒険者は剣をなんとか持っているだけで血まみれだし、シーフらしき女性は腕をおさえて倒れており、残りの二人の後衛の男女が怪我人二人をなんとか庇いながら逃げているという状況だった。


「もう俺たち二人は無理だ。殿になるから二人はギルドへ応援を呼びに向かってくれ」


「なに言ってんだ!ここでお前たちを見捨てても俺たちの足だとすぐに追いつかれる。ここでなんとかするしかない」


「苦戦しているようなので僕がこのオーガもらいますね」


「ダメよ!オーガはCランクの魔物よ!君がかなうような相手じゃないわ!」


「いいえ、ルーク様でしたら何の問題もございません。ですのでそこでゆっくり傷を癒すのがよろしいでしょう」


「あなたは確か最近話題の執事の冒険者…」


目の前には薄ら笑いを浮かべる2mほどの赤い鬼ことオーガがこちらを見下ろしていた


「さっきまで狩る側だったからって舐めやがって…いくぞ」


素早くオーガの懐に入り込み、手に持った死神の双剣で切りつける。


「?ッガ」


オーガは手で防御しようとしたみたいだが、死神の双剣は魔力を通すと、幻影の刃が見え本物の刃が視認出来なくなるため、距離感を測り損ねたようだ。


「もういっちょ!」


オーガが切られたことに驚いているうちにもう片方の手で切りつける


「ウガァァ」


「はやい!オーガが全く防げてない!」


「っなに!?」


しかし切りつけ方がまだ浅かったらしく、傷を庇いながらすかさずオーガも蹴りを放ってくる


「やっぱり格闘になるとオーガは手強いな。魔法も混ぜていくか」


左手の剣を鞘に直し、再び切りかかると見せかけながら、オーガの顔へ向けてダークボールを放つ。


「えっ無詠唱!?」


オーガが顔を抑えた瞬間に素早く背後に回り込み…


「これで終わりだ」


ザシュ


一刀でオーガの首を刎ね飛ばし、戦いに終止符を打った


「お疲れ様でございます。やはり理想を言うならば双剣で戦いながら魔法を使えるようになりたいですな」


「いちいち剣を鞘に直してると隙が大きいよね。でもまだ剣を媒体にした魔法は闘いながらだとコントロールが効かないんだよね」


「オーガをあっさり倒しておきながらなんて会話してるのよ…」


「おいジニー。今は助けてもらったお礼を言うのが先だろ?あの俺Eランク冒険者のハリーといいます。今回は助けて頂きありがとうございました」


「なんとか間に合ってよかったです。僕はGランクのルークです。怪我人のお二方の容姿はどうですか?」


「じ、Gランク!?あの強さでGランクってなにかの間違いじゃ…?」


「お、おい!二人はそちらの執事の方から頂いたポーションでなんとかなりそうです」


「今日登録したばかりなんです。そちらの状況ももう少しお聞きしたいですし、王都へ向かいながら話しましょうか。あっオーガの死体は貰って大丈夫ですか?」


「どうぞどうぞ。俺たちは傷もつけられませんでしたし」


許可を貰ったので、ポーチ型の魔法の鞄に収納するふりをして影収納に収納する。

影収納をそのまま使いたいところだが、そんな魔法を人前で使うと騒ぎになることが間違いないので、人前では魔法の鞄をカモフラージュに使っている。

しかし魔法の鞄は遺跡から稀にしか発見出来ないアーティファクトで、かなり高額なため、貴族や高名な冒険者しか持っていないのでそれでも目立つのは間違いないのだが…。

漆黒魔法がバレるよりはましだと、ウチに幾つかあったうちの一つを貸してもらうことにしたのだ。


「魔法の鞄まで持ってるなんて…」


「執事の人もいるしもしかして貴族様じゃ?」


助けた二人がごにょごにょ言っているがよく聞こえないので怪我人の元へ向かうことにした。

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