第34話 猫貴族、同級生の魔法を見る


「やあ、漆黒の冒険者さん?」


「ちょ!なんでクリストファーが知ってるの?」


「なんだいなんだい?またルークがやらかしたのか?」


Dランクへ昇格した次の日に学園へ行くとニヤニヤしたクリストファーが待ち構えていた。

そしてルドルフ!僕がやらかした前提で考えるのはやめろ!


「いや、昨日登録初日にソロでオーガ討伐しただけでも驚きなのに、その後なんとCランク冒険者との決闘で全く寄せ付けずに一蹴し、一気にDランクへ昇格した有望な冒険者がいると聞いてね。しかもその冒険者は赤髪混じりの黒髪で闇魔法を使うという」


そこまで聞くと、やっぱりやらかしたんじゃないかと言いながらルドルフがジト目を向けてくる。


「オーガはともかく、決闘は本当迷惑だったよ」


なんでも王家には特殊な諜報機関があるらしく、有望な冒険者の情報や強い魔物の出現情報はその日のうちに報告される仕組みになっているらしい。


「みたいだね。王家が掴んだ情報でも彼はCランク昇格後に壁にぶち当たり、なかなか上手くいかず、成功した冒険者なんかを見るといつも絡んでいたみたいだ」


クリストファーからボンズの事情を聞き、一瞬やり過ぎたかと反省しかけたが、そんな事情があっても人に絡むボンズが悪いと思う!うん、僕は悪くない!


その後担任のクルト先生が入ってきて初めての授業が始まったが、座学は入試と被る部分も多く、特に問題なく過ごすことが出来た。


「今からはいよいよ実技だ!まずは全員がどの程度魔法が扱えるか確認することにする!ちなみにルーク、お前は最後な!」


戦闘着に着替え、訓練所にて得意魔法を披露することとなった。

なお、攻撃魔法でなくてもいいらしい。


「ではまず私からいこうかな?『清らかなる光よ!我は求める、全てを阻む光の壁を。ライトウォール』」


クリストファーが詠唱を唱えると、クリストファーを中心に光の結界が発生していた。


「さすが王子様だな!いっちょ先生らしいとこ見せてやるか!『アイスボール』」


「うぉ、詠唱破棄」

「氷属性の魔法なんて初めてみたわ」

「さすが先生!」


クルト先生は小さいアイスボールをいくつかライトウォールにぶつけるも、クリストファーはびくともしなかった。


「先生の詠唱破棄もすごいっすけど、クリスっちの魔法も半端ないっすね」


怖い物知らずのカイトがクリストファーを渾名で呼ぶが、クリストファーは気さくに振舞っているが一応王孫だぞ?いいのかおい!あっ喜んでる。いいんですねクリスっちで。

その後はカイトとケイトが水、ジョセフとアダンは風のボール系の魔法を披露した。


そして、ティアは状態異常魔法を使うというので、カイトが体験役を買って出てくれた。


「いきます!『コンフュージョン』」


「え、ティアも詠唱破棄?」

「夫婦揃っておっかないね」


みんな好き放題言ってくれるが僕もティアが詠唱破棄で魔法を使えるなんて今初めて知った。

そして、魔法を掛けられたカイトは千鳥足のように足がおぼつかず、意味のわからないことをぶつぶつ呟いている。

ティアも怒らせないようにしないと…。

やっぱり僕の周りの女性はおっかない人が多いみたいだ。


「では私が解除しますわ。『清らかなる光よ。我は求める健やかなる精神を。リフレッシュ』」


アンナがリフレッシュの魔法を唱えると、カイトを光が包み動かなくなった。


「ん…あれ?俺どうなってたっすか?」


「ティア嬢の魔法をくらってフラフラになっていたよ。でも流石アンナだね。私でもあの状態を正常に戻せるかどうかわからないよ」


「そんな…私の魔法なんてクリストファー様に及ぶはずもございませんわ」


クリストファーが手放しに誉めれば、アンナは顔を真っ赤にして照れている。


「おいおい。イチャつくのはまた別のとこでやってくれるか?じゃあルーク、最後はお前だ!実技免除の実力見せてくれや」


ハードルが上がった気がしないでもないが、僕の番が回ってきたようだ。


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