第10話 猫貴族、双剣に出会う

クロエに疑いの目が向けられ


「まさかその黒猫が…」


流石のお爺ちゃんも声が出ないようだ


今度は僕の口からクロエと出会った経緯を説明する。


もちろん転生うんぬんの話はしない。


あくまで庭で拾って世話をしていたら懐かれたとだけ説明した。


「本当にルーク君が漆黒魔法を扱えるならば、あの双剣を試してみてもいいかもしれませんね」


「そうか、あれがあったね。ラウル、急いで金庫からあの双剣をもってきてくれるかい」


慌ただしくラウル叔父上が部屋から出ていく


「実は伝承と共に初代様が愛用していたとされる双剣が残っているんだよ。ただこれが誰が抜こうとしても抜けなくてね。もしかしたらルークなら抜けるんじゃないかと思うんだ」


「あの双剣ね~。私もお父様に言われて子どもの頃に抜こうとしたけど、ビクともしなかった記憶があるわ」


「歴代ネーロ家の皆が通った道だよ」


バタバタバタ


ラウル叔父上が戻ってきたようだ。手には鞘に入った少し古びれた黒い双剣と黒い布?のようなものを持っている。


「持ってきたよ」


「すまないねラウル。では、ルークこの双剣を抜いてみてくれないかい?」


一目見ただけでわかった。この双剣には莫大な魔力が込められていると。


手にとると、初めて持ったとは思えないほど馴染むのがよくわかる。そして僕の魔力と共鳴し、黒い光が双剣を覆った。

現れたのは柄から刃まですべてが漆黒の見事な双剣だった。

長さもショートソードぐらいに変わっており、子どもの僕でも扱えそうだ。


父さんや母さん、ラウル叔父上が口を開けて呆ける中


「もう今日何度驚いたかわからないね」


お爺ちゃんは何やら悟りを開いたように微笑んでいる


「なんということだ。まさか息子が伝説の漆黒魔法の使い手とは…」


「これは簡単に公には出来ないわね」


「そうだね。ルークが自衛出来るようになるまではバレるのは避けたいね」


「本来ならネーロ家で魔法の使い方を教えてあげたいけど、公爵家で預かるとなると目立つ。ここは王都からも近いからね。王都からも距離があるロッソ辺境伯家で教え込むしかないだろうね」


「ラウルの言う通りだね。アリアならば十分指導出来るだろう。アリアも何かあったらすぐ連絡しなさい。ネーロ家は協力を惜しまないよ」


「ありがとうお父様。ちなみにお姉さま方にも言わないほうがいいわよね?」


「そうだね。あの二人もネーロ家の娘とは言え、今は他所の貴族家へ嫁いでいるから念のため言わないでおこう。どこから漏れるかわからないからね」


しかし、僕はそんな話よりラウル叔父上が双剣と一緒に持ってきていた黒い布から目が離せなかった


「ラウル叔父上、その黒い布はなんですか?」


「これはね、双剣と同じく初代様が愛用していた黒いコートとグローブでね。双剣と合わせて死神シリーズと呼ばれてるものだよ。ただもうボロボロになっているから使えないだろうなと思いつつ念のため持ってきてたんだが…」


「「さっきの様子だと使えるだろうね」」


僕には大きすぎるボロ布のようなコートに袖を通し、指だしタイプのグローブを手にはめる。


すると先程と同じく、僕の魔力に反応し黒く輝く。


光が収まると僕サイズに調整された、漆黒の輝きを放つコートとグローブに様変わりしていた。


「「やっぱり」」


(うおおおおお。全中二病が憧れるスタイルじゃないか!闇よ顕現せよ!なんっちゃて)


「ルーク、興奮するのはわかるが落ち着け」


「あれ、声に出てた?」


「いや、顔を見ればわかる。男は誰しも一度は憧れるからな」


父さんがニヤニヤとからかってくる


「とにかくそれはもうルークのものだよ。大事にね」


「ありがとうございます。お爺ちゃん、ラウル叔父上」


「はは、僕もラウル叔父さんでいいよ」


「よかったなルーク。これからは徐々に剣術も教えていくからな」


「剣術はグレン。魔法が私で分担して教えていくわね」


「では、暗くなってきたし一旦ここまでにしようか。今日の出来事はルークが力を扱えるようになるまではネーロ家とロッソ家の秘密とすること。漆黒魔法についてはまた明日にでも訓練場で確認しよう」


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