第9話 猫貴族、祖父に会う

無事、ネルトニアに着いた僕たちは、すぐに祖父の屋敷へ向かった。


大きな屋敷に辿り着き、門番の男から


「ロッソ辺境伯様ですね。旦那様からお話は伺っておりますので、どうぞお通り下さい」


と声をかけられ、屋敷の正面で馬車から降りる


「よく来てくれたね、婿殿、アリア、フェリシア。そしてはじめましてだねルーク。私が君の祖父で現ネーロ家当主ヨハン・ネーロだ」


40代半ばぐらいの白髪で柔和に微笑んでいるが、どこか目に力強さがある男性が声僕たちを待っていた。


(優しいだけじゃなさそうだな。さすがは公爵家の当主)


「ご無沙汰しております、お義父さん。わざわざお出迎え頂き恐縮です」


「孫に会えると思うと楽しみでね。領都に入ると連絡が来るように手配しておいたんだ。今回はなにやらルークのことで大事な話があるとか…うーん。これは想像以上の案件みたいだね。客間で話そうか。」


こちらを観察したかと思えば、気になる言葉を残して祖父は屋敷へ入っていく


「ラウルも同席させるようにするよ。フェリシアともゆっくり話たいんだが今は他の孫と一緒に遊んで待っててくれるかい?」


「お兄様も屋敷にいらっしゃるんですね。フェリシア、母さんたちは少し話があるから他の部屋で待っててね。マーサ、久しぶりでいきなり悪いんだけど、この子の案内お願いね。」


案内してくれている中でも最も貫禄のあるメイドに母さんが声をかける


「かしこまりました。お嬢様。さぁフェリシア様、こちらへどうぞ」


「わかりましたわ、おじい様、お母様。ルークもまたね」


そう言って姉さんは別の部屋へ案内されていった。


「まぁかけて待っていてくれるかい?すぐにラウルも来るだろうから話はそれからはじめよう。改めましてはじめましてだねルーク」


「お爺様、はじめましてルーク・ロッソです。」


「お爺様なんて呼ばず、お爺ちゃんと呼んでくれて構わないよ」


などとお爺ちゃんと改めて挨拶をしていると



コンコンコン


「父上、ラウルです」


お爺ちゃんが入っていいと告げると、黒髪で眼鏡をかけ、病的かと思うほど白い肌の男性が入ってきた


「やぁ久しぶりだね、グレン、アリア。そっちはルークかな?はじめましてアリアの兄のラウルだよ」


「はじめまして、ラウル叔父上」


「ちょうど挨拶していたところだよ。じゃあ婿殿、今回の要件を話してくるかい?」


「事の発端は先日の神授の儀式の後のことでした…」


神授の儀式で女神像が強く光ったこと、その後魔法を見せるとすぐに詠唱破棄で再現してみせたこと、そしてその時に使った魔法が伝説の漆黒魔法ではないかと疑ったことを父さんがお爺ちゃんと叔父上に説明していく


はじめはニコニコと話を聞いていた二人だが、魔法をぶつけた的が消滅したという話になった途端、表情が変わった


「驚いたね。一目見て子どもにはありえない程の魔力量だと思っていたが漆黒魔法かもしれないとは…」


「魔法は実際見てみないとなんとも言えないけど、他でもないアリアが言うんだから間違いないんだろうね」


「アリアから聞いたと思うが、ネーロ家には漆黒魔法の存在が伝わっている。伝承によると、300年程前に祖先の一人がその魔法を扱ったとされている」


(えええええ、初耳ですけど?ちょっとクロエ、聞いてないんだけど?)


僕は声をあげそうになるのを必死で抑えつつ、肩に乗るクロエに目を向ける


(言うの忘れてたにゃ。許してほしいにゃ。てへ)


(あとでゆっくり話してもらうからな。それに約束のデザートはなしだ)


(にゃにーー。そんにゃ殺生にゃ。関係ないと思って話してなかっただけにゃ)


クロエに事情聴取することは確定とし、再度耳をお爺ちゃんたちの話に傾ける


「その祖先の名はユリシーズ、通称死神。初代ネーロ家の当主で闇の神獣にまたがり、その莫大な魔力と強烈な魔法で、辺り一面を漆黒に変えたと言われている。そのことから初代様の魔法は漆黒魔法と呼ばれている」


お爺ちゃんがそう言った時、父さんと母さんがギギギと音がしそうなほどぎこちなく首を回して僕を見た。

いや、正確には僕の肩で愛想良く前足を上げるクロエを


「にゃん」

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