第8話 猫貴族、祖父の家へ向けて出発する

母さんと魔力循環の訓練を始めて、あっという間に10日が経った。


その様子を見て、たまに屋敷にいる父さんやフェリシア姉さんが顔を出してアドバイスをくれるようになった。


ちなみにオーガスト兄さんは2年前から王都の学園に通っていて、長期休み以外は屋敷にいない。

貴族は王都の学園に8~12歳の5年間通うことが義務付けられていて、卒業後は15歳の成人までの間、魔術学院などの高等学園に通うか、それぞれの領地で親に領地運営について学ぶこととなる。

10歳の兄さんは現在3年生で卒業後はロッソ家の後継者として父さんの横で領地運営を学ぶ予定となっている。


そして今日は、いよいよ母さんの実家で祖父がいるネーロ家へと出発する。

今回は兄さんを除く家族4人やメイドに加え、護衛として辺境伯家の騎士団から副団長以下20人の精鋭がついてきてくれることとなった。


「屋敷内で顔を合わせたこともあるかも分からんが、紹介しておく。我が騎士団の副団長スペンサーだ。」


30代前半ぐらいで細身の男がこちらに向かって頭を下げる。


(騎士の割に細いな。純粋な魔法使いタイプかな?)


「ルーク様、お初にお目にかかります。副団長のスペンサーでございます。風の魔法を得意としております。」


「はじめまして、ルークです。今回はネーロ家までの道中よろしくお願いします。風の魔法は見たことないので見せてもらえると嬉しいです!」


「道中3日程ございますので、どこかでお見せ出来る機会があるかもしれませんね。」


「話はそれぐらいでそろそろ出発するぞ」


馬車の中では父さんと僕、母さんと姉さんが向かい合って座ることになった。


その理由は…


「きゃー本当可愛いわねクロエ。ずっと私の膝にいていいのよ」


「ずるいわよフェリシア。これまでずっとルークの肩にいてなかなかチャンスがなかったんだから私にも抱かせてちょうだい」


クロエが二人の餌食となっていた。


『クロエすまん!今はおとなしくモフられてくれ』


『にゃにー。ひどいにゃ。あ、そこはダメにゃ。やめるにゃーーー』


僕はそっとクロエに手を合わせた。


「そういえばルークにはアリアの実家のことは詳しく話してなかったな。アリアの実家のネーロ家は王国で4つしかない公爵家の一つでな、我がロッソ家を含む南部地域の長を務めている大貴族だ」


「母さんもそうだけど、ネーロ家は代々闇魔法の使い手が多く生まれていてね。闇魔法の専門家が揃ってるの」


「えっ母さんって公爵令嬢だったの!?」


「そうよ~。昔はネーロ家の黒いバラなんて呼ばれていたものよ~うふふ」


(それってつまり美しそうに見えて棘があるってこと?やっぱり母さんは怒らせないようにしよう。女神様といいなんだか怖そうな人ばかりに囲まれてるなあ)


「ちなみに母さんには兄が一人と姉が二人いるわ。お姉さま方はもう嫁いだからいないけど、お兄様は後継者として領内にいるはずよ」


母さんは四人兄妹の末っ子で、長女・兄・次女・母さんという構成だそうだ。


「ところで前から気になってたんだけど、父さんと母さんってなんで結婚したの?やっぱり政略結婚なわけ?」


「フェリシアもそうゆうことが気になるお年頃になってきたのね~。母さんたちの場合は母さんが父さんに一目惚れして、押して押して押しまくったのよ」


「もともと南部地域の貴族同士、顔はよく合わせていてはいたんだが、魔物退治でネーロ家に協力した時に色々あってな」


「父さんが戦ってる姿を見てキュンときちゃってね~。本当に素敵だったわ」


「まぁ俺たちが政略結婚をしてないのもあって、特にお前たちに政略結婚を強いるつもりはない。学園に行った時にでも探せばいい。特にフェリシアは来年から学園だしな」


その後はいくつかの街や村を超え、3日後の暗くなる前にはネーロ家が治める領都ネルトニアの街を囲う壁が見えてきたのだった

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